駒子の備忘録

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宝塚歌劇星組『ANOTHER WORLD/Killer Rouge』

2018年06月30日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2018年5月4日13時。
 東京宝塚劇場、6月28日18時半。

 大坂の両替商「誉田屋」の若旦那・康次郎(紅ゆずる)が目覚めると、そこは「あの世」と「この世」の境にある幽明境の花園。実は康次郎は高津神社で出会ったどこの誰ともわからぬ嬢さんに一目惚れし、向こうもこちらを憎からず思っていると知るも、純朴ゆえに声もかけられないまま思いを募らせて寝込んでしまい、嬢さんが菓子屋「松月堂」のお澄(綺咲愛里)とわかるも、すでに彼女は自分への恋患いの末に身罷っており、それを知って自分も悲観の果てに「あの世」に来てしまったのである。せめて「あの世」で結ばれようとお澄を探し始める康次郎だが…
 作・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。落語の「地獄八景亡者戯」「朝友」などを散りばめたRAKUGO MUSICAL。

 楽しく観ました!
 私は笑いに厳しいというか素直じゃないというか、「コメディです」とか言われると「ホントにおもしろくなければ笑ってなんかやらないんだからな!」と身構えてしまうという、可愛くない人間です。まして落語には縁がなく、話がわからなかったり早口の関西弁が聞き取れなかったらどうしよう…とまあまあ後ろ向きに出かけたのでした。
 が、最初に吹いたのはなんのときだったかなー。康次郎と喜六(七海ひろき)とのしょーもないやりとりに対して、だったか、徳三郎(礼真琴)の「本当に死んだ女はいない」に対してだったか、とにかく一度素直に笑っちゃってからは、さてこの珍道中はどんな顛末になるのないな…と楽しく観ていけたのでした。
 谷先生の自由な作劇もいいなと思いました。最近流行りの決まりきったグランド・ミュージカルふう演出とか舞台転換とかとはまた違う舞台の進み具合で、でも確かにこれもまた宝塚歌劇だしミュージカルだし、舞台って本当にいろいろできるんだなと感心させられました。渡し船も歓楽街も冥土のスターやラインダンスも美人座もおもしろかったし、来年の話をして鬼を笑わせて勝つとか、鬼すら「鬼婆」と呼んで恐れる母は強しとか、いいアイディアだなと思いましたし素直に感動しました。はるこの使われ方も素敵でしたしね!
 ま、私は東西で一度ずつしか観ていないような非組ファンなので、贔屓がいる人からしたら、康次郎ご一行以外は意外と出番が少ないとか後半からしか出てこないとかの不満はあるのかもしれません。でも、何せみんなが総じて楽しそうにやっているように見えましたし、恋患いで死んだり現世がつまらないから死んだみたいな人に言われたかない気もしますが「命あっての物種だ!」みたいな結論は気持ちがいいので、よかったんじゃないでしょうか。
 谷先生の落語ものは出来が固いですよね。というかある程度原作があるのがいいんでしょうかね。ネモはなんだったんでしょうかね…というかこれで定年退団なんじゃないのという噂も耳にしますが、どうなんでしょうか。今こそ『秋…冬への前奏曲』を少し手を入れて再演していただきたいのですが、叶わないのかしら…

 タカラヅカ・ワンダーステージは作・演出/齋藤吉正。
 『シト風』にしょんぼりしていたあとに観たときには「いいなーっ!」としか思いませんでしたが、雪の『ガトボニ』も観てきた今となっては、あちらの方が好みかな…でもまあ、このザッツ・サイトーショーは今の星組のカラーに合っていると思いますし、台湾でもウケそうなのでいいんじゃないでしょうか。
 ただ、私が齋藤先生の選曲の趣味が合わないというのもあるけれど(西城秀樹と「薔薇は美しく散る」しか知らなかったし)、外部の既存の曲って意外に一本調子に聞こえたりするし、なんせまこっちゃん以外にいい歌手がいないもんだからどの曲もメロディラインも歌詞も不明瞭でノリきれない…という問題点もあったとは思いました。
 スター起用も一本調子でしたよね。『ガトボニ』ではたとえて言うならみっきぃとオレキザキが歌ってれんれんとまいけるが踊る一場面、とかシンキワミの左右にはるこなっちゃんあんるおとねりらいーちゃんとりさんかとりーぬを並べる銀橋、とかがあったんだもん。
 逆にれなちゃんの餞は残念ながらやりすぎだったのではないでしょうか…プロローグのセリ上がりと、フィナーレの群舞前にとりさんと踊ったりベニーと絡んだりしただけで十分だったのではないでしょうか。銀橋ソロ一曲歌って渡るほどの歌唱力は残念ながらないと私は思いましたし、そんな場数を今まで踏ませてこなかったじゃん、無理だよ今になって急にこんな扱いしてもさ…とその意味で泣きそうになりましたよ私。
 新公主演もバウのダブル主演もしているけれど、これまで決して扱いは良くなかったじゃないですか。路線として扱われたことも別格スターとして遇されたこともなかった、なんとなくずっとまおくんとコンビでただ置かれていただけじゃないですか。スタイル抜群でノーブルなムードがあっていい生徒さんだったと思うんですけれど、組がスターに育てきれなかったんだろうし、本人の性格的にもガツガツ前に出るタイプじゃなかったんだろうなと思うといろいろ悔やまれます。お茶会にはずいぶん前に一度行ったきりでしたが、ホントゆるくて可愛かったなー…
 というか最近このあたりの学年の生徒が卒業するたびに「うちのときは…」と考えないではいられないわけで、そしてうちならこれくらいしてもらってもええやろとか歌もっとちゃんとしてるやろとか思うのでむしろそういう扱いが来ないことの方を恐れているのですが、ともあれバランスというものはあるワケで、今回は私にはとにかく破格すぎに思えてぽかんとしちゃいましたし、ある程度組ファンでもそう感じるのではなかろうか…と、勝手かつ余計なお世話かもしれませんが私は心配になりました。つーか餞に何か、なんてもっと上品にやるものでしょう…そんなんなら卒業されちゃう前にもっとなんとかしてやれよ、とも言いたいしさ。

 ともあれ、ベニーがキラキラしていてあーちゃんが可愛くてまこっちゃんが上手くて、かいちゃんが美形でせおっちが垢抜けてきてしどりゅーに華が出てきてぴーすけがいい滝汗でシンキワミがとにかく可愛いので満足でした。あとはるこ大活躍! もちろんくらっちもなんでも上手い、たまらん!!
 と楽しかったので、満足です。台湾も行きますよ!!!




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