駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

岡崎京子『リバーズ・エッジ』

2009年12月14日 | 愛蔵コミック・コラム/著者名あ行
 宝島社ワンダーランドコミックス

 彼ら(彼女ら)の住んでいる街には河が流れていて、それはもう河口にほど近く、広くゆったりとよどみ、臭い。河原のある地上げされたままの場所にはセイタカアワダチソウがおいしげっていて、よくネコの死体が転がっていたりする。平坦な戦場で生き延びようともがく、少年少女たちの物語。

 本当は、『ジオラマボーイ パノラマガール』とか『pink』とかの方が好きです。この物語は、あまりにもイタいから。
 でも、目をそむけてはいけないのだとも思うのです。
 そういう意味では、最後に安易に希望を呈示したり、下手なハッピーエンドにしたりする凡百の物語と違って、せつないまま、つらいまま終わるこの作品は、やはり名作と呼ばれるにふさわしいものなのかもしれません。
 嵐の中にいる者には嵐は見えない。だから出方もわからない。嵐が過ぎ去って始めて、あれが嵐だったかと知るのでしょう。
「あの人は何でも関係ないんだもん」
 と言われたハルナも、胸が苦しくて涙を流す。そのエネルギーがあれば、大丈夫だとも思うのです。嵐が過ぎ去るその日まで、生き延びることが出きるはずです。いつか彼ら(彼女ら)に、
「ある朝目を覚ますと窓が開いていて自分が長いあいだ待ち望んだものの中にいることに気付くんです」(獣木野生『パーム』より)
 という日が来たらんことを、祈るより他ありません。
 忘れてしまっただけなのか、恵まれていたのか、自分にだってそういうときがあったはずなのですから。嵐は思春期に限らずに、人が生きていく以上、いつでも訪れるものなのかもしれないのですから。(2001.5.22)
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