駒子の備忘録

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宝塚歌劇雪組『アメリカン・パイ』

2009年12月09日 | 観劇記/タイトルあ行
 日本青年館、2003年7月3日マチネ。
 アメリカの、陽光あふれる常夏の街マイアミ。ロック・ミュージシャンのグラン・パ(貴城けい)は決して売れてはいないが気のおけない仲間たちと音楽を楽しんでいた。ある日ひとりの少年(山科愛)が現れ、朝食を盗んでいく。薄汚れた謎の少年は実は女の子であり、リューとだけ名乗るが…原作/萩尾望都、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/吉田優子、甲斐正人。

 …不覚にも…泣いてしまいました。
 まさしく不覚にも、なんですよ。だってスカスカなんですね。原作漫画は大佳編ですがやはり短編ならではの良さを持ったものでもあり、2時間の二幕ものに仕立てるには無理があったと思うのです。
 1時間か1時間半の一幕ものにしてしまえばよかったのに。
 でなけりゃもっとマスター(磯野千尋)とローダ(森咲かぐや)の間に恋物語でも入れるとか、グラン・パとジャクスン(壮一帆)の思い出話でも入れるとかして、ものすごく話を膨らませるとかしないとね。
 なのに作りは原作に忠実で、でもなんだか意味のない日常会話台詞だけがだらだら水増しされている感じで、時間も空間も埋まっていない感じだったのです。特に一幕目は緊密さに欠けていたように感じられました。役者の力量の問題もあるかもしれませんが(こんなに下級生ばかりの公演は久々に観たよ…)、やはり演出的にもう一工夫必要だったろうと思います。
 でも、不覚にも、泣いてしまったのです。

 原作の美しさへの思い込みもあったでしょうが、やはりヒロインが大健闘だったのではないでしょうか。宝塚の娘役にはちょっと珍しい低い声で、「自分を失う」ことと必死で戦っている無口な少女を大好演していたと思います。
 せっかく宝塚らしくグラン・パを青年にしたのだから、もう少しだけラブい雰囲気が出てもよかったかな、と思いました。
 脚本家は原作のふたりの関係が恋愛ではなかったところがいたくツボだったようで、それは私も同感なのですが、でもどうも舞台のグラン・パはお人好しらしさや馬鹿がつくおせっかいやきな感じ、要するに情の濃さそうな感じにやや欠けて見えたので、ちょっと残念に思ったのです。それにしてもグラン・パの
「俺がもっと若くてハンサムだったら」
 という台詞には一考の余地があったでしょう。あの失笑はせつなかった。宝塚の男役がやってかっこよくない訳ないんだからさ。
 音楽が良くて、いい歌も多く、ミュージカル向きの題材であったのでしょう、いい舞台だったと思います。個人的にはやはりジャクスンにはぜひひげをつけていてほしかったところですが…(笑)
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