駒子の備忘録

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『おかしな二人』

2020年10月18日 | 観劇記/タイトルあ行
 シアタークリエ、2020年10月17日12時。

 ときは1970年代のニューヨーク。マンハッタンにあるオリーブ・マディソン(大地真央)のアパートは古新聞や雑誌が散らかり、夏だというのに冷蔵庫は2週間壊れたまま。離婚後、その不精な性格から部屋は荒れ放題だが、女友達が毎日のように集まってはゲームやおしゃべりで盛り上がっていた。みんなの話題は、最近夫から離婚を切り出されたフローレンス・アンガー(花總まり)のこと。傷心の彼女が自殺でもしかねないと好き勝手に話していると、玄関ベルが鳴り…
 作/ニール・サイモン、潤色・演出/原田諒、翻訳/伊藤美代子。男性版は1965年初演、女性版は1985年初演。全2幕。

 女性版は日本では小泉今日子と小林聡美、浅丘ルリ子と渡辺えり子などでも上演されているそうですね。私が宝塚歌劇で男性版を観たときの感想はこちら
 プログラム含め宣伝ビジュアルがファンキーでキュートで、魔王様とマリー陛下との共演というのも話題の作品でしたが、戯曲としては…コレ、おもしろいのかなあ?と素直に思ってしまいました。コレ、元のまんまなの? ならアメリカン・ジョークが訳しきれていないとか今にハマっていないとかなの? 未だに人気があるようですが、何故まだ再演され続けているのか私にはよくわからない…ぶっちゃけおもしろくなくて退屈しました。赤裸々かつ軽妙洒脱な会話劇、のつもりなのかもしれませんが、全然そんなふうには見えなくて、1幕は40分くらいなんですけどそれでも長く感じました。なのに2幕は3場もあってフィナーレまであって、結局30分の休憩込み3時間弱って…長いよ! 重いよ! サービスだと思ってるなら要らないよ、セットチェンジの必要があるのはわかるけど1幕2時間ものにしてほしいよ!と思ってしまいました。
 共演者が豪華なのでこのメンツで歌わないのはもったいないなと思っていたら、2幕になって突然歌があり、ミュージカルだったのか!?となったのはちょっとおもしろかったけれど…フィナーレも、今のこのご時世に劇場に来てくれる観客への感謝も込めてのものだったようだけれど…うーんやはりそうしたサービスはともかく芝居の本質的なところがアレじゃねー、となりました。魔王様もハナちゃんもやっぱり別に歌が上手いわけでもないし、今さらバリバリ踊るわけでもないしね…
 魔王様の、まるで四季が出身でしたっけ?ってな感じのやたら明晰な台詞回しは聞きやすいっちゃ聞きやすくていいんだけれど、なおさらナチュラルでなんてことない日常会話の洒落っ気みたいなものからは遠ざかるし、ハナちゃんはそつなく上手いけどだから何?って気がしました。でも役者は膨大な台詞とよく格闘して上手くこなしていたと思います。だから問題は要するに脚本ですよ、この本で何をやりたかったのかっていうプロデュースの問題ですよ。いっそ、ズボラと几帳面で友達だけど喧嘩ばっかり、って枠だけ生かしてもっと今っぽい全然違う会話劇にしない限り、もう意味なくない? 別に舞台がちょっと前のアメリカだろうがなんだろうが、普遍的なものがないなら再演の意味はないわけで、配役の醍醐味だけではそらこんな小さなハコでも埋まらないでしょ、としか思えませんでした。
 美術の松井るみはともかく、照明が勝柴さんで音楽が玉麻さんで衣裳が有村さんでという宝塚布陣なのもこうなるとむしろなんだかなあ…でした。達者な役者揃いだっただけに、残念でした。


  
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