駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『薮原検校』

2021年02月12日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 PARCO劇場、2021年2月11日13時。

 舞台に現れたるはひとりの按摩・盲太夫(川平慈英)。盲の身ながら悪事に長けたひとりの男の生涯を語り出す。物語の始まりは江戸時代の中頃、松島は塩釜漁港。性悪だが見目の良い魚屋・七兵衛(三宅健)と、顔はおへちゃだが心根の優しいお志保(宮地雅子)の間に男児が生まれる。夫婦は子を慈しむが、七兵衛の悪行が祟ったためか、子供は目が見えなかった。生きる術は他にないとお志保は男児を塩釜座頭・琴の市(佐藤誓)に預ける。真っ直ぐに育て、と杉の市(市川猿之助)と名付けられるが…
 作/井上ひさし、演出/杉原邦生、音楽・演奏/益田トッシュ。1973年初演。

 以前、せたパブで萬斎さんで観たときの感想はこちら
 内容は全然覚えていないんだけれどおもしろかった…という記憶があったので、こまつ座でチケットを手配しました。おもしろいったってコメディとかではなくて、ピカレスク・ロマンで、ユーモラスなところもあるけれど基本的には障害者差別を描く重い、長い、しんどい作品です。
 前回も長いとは感じたんだけれど、今回はより感じたかなー。そこも含めて鑑賞すべき作品だとは思うんですけれどね。ミュージカルではないけれど効果的に歌や音楽が入るのが井上戯曲の定番で、なのでテーマとか構造とかが『パレード』に近いのかな、とも思いました。もうちょっと塙保己市(三宅健)の怖さというか胡散臭さをわかりやすく描いてもいいのかな、とは感じたかな。それがラストの嫌さ加減にも直結するんだと思うので。
 三宅くんは私は舞台を初めて観たかもしれませんが、最初は声が悪いなと思っていたら何役も演じ分けるためのものだったのかとのちにわかり、どの役も達者で感心しました。
 でも鮮やかだったのは川平慈英と益田トッシュだったかなー。猿之助はもちろん、松雪泰子も素敵でしたが。あとテレビドラマでよく見る人という印象でしたが、宮地雅子がホント上手かった。
 我ながら、ちょっと森発言のショックが尾を引いていて、さらに後任もアレな感じだし、『パレード』のユダヤ人差別、黒人差別、南部貧乏白人差別なんかもわかるし今回の障害者差別もわかるし、そういうあらゆるマイノリティ差別を世の中から撤廃していかなくちゃならないんだけれど、数でいったらマイノリティでもなんでもない、人口の半分を占める女性たちが今なお差別に苦しめられている現状を突きつけられてちょっとげんなりしていて、フィクションでも観るのが食傷気味、というコンディションで観てしまったかもしれません。すみません。(でもよく考えたらマイノリティって数じゃなくて、保持している力の小ささのことですね。そういう不平等が問題だ、ということであって…)

 新しくなった劇場は綺麗で客席の傾斜がしっかりあって観やすく、センターブロックが1列20席くらいあって真ん中の席の人の出入りがちょっと大変かな、という以外は問題がなさそうでした。ちょっと大きいシアタークリエくらい? ロビーで一杯飲めて終演後も街でごはんができて、という日々が戻ってくれば、楽しいロケーションにあるいいハコだな、と思いました。でも祝日の渋谷は、いつもほどではなかったけれどそれでも人出はけっこうありましたね…引き続き気を引き締めて、シュッと行ってシュッと帰り、普段は在宅勤務で家に籠もりたいと思います…





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