駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『Liefie』

2024年07月20日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 日本青年館ホール、2024年7月18日15時。

 オランダの小さな町で新聞記者として働くダーン(聖乃あすか)は、誰もが思わず笑顔になるような、世界を明るくするような「言葉」を探している。そのために自ら新聞の広告欄を購入し、「あなたに伝えたいこと」と題した街の人々に取材した記事を連載している。ニュースが掲載される水曜日、ダーンは幼馴染みのミラ(七彩はづき)が働くカフェへと必ず足を運ぶ。ダーンとミラは幼いころからよく一緒に遊んでいたが、大人になるにつれてミラはどんどん笑わなくなっていた…
 作・演出/生駒怜子、作曲/手島恭子。サブタイトルは「愛しい人」というロマンチックコメディ、全2幕。

 ほのかちゃんの初主演作の感想はこちら、2作目はこちら。生駒先生のデビュー作についてはこちら。今回がデビューかと思っていましたが、違ったんですね…てか進化してないじゃん、劣化してるじゃん……どうした? もう疲れちゃったのか…??
 イヤなんか景子先生とかもたまにこのテの作品をやらかすけど、でも作家性が全然違いますよね。イヤなんかほわっと温かい、ええ話をやりたかったんだろうけど、でも、でもさ…どなたかが「学生演劇みたい」と言っていましたが、要するにそういうことですよ。中学生が書いたみたいな脚本で、歌詞も台詞も素人臭くて、演出はフツーで…セットがやたらお洒落だったので(装置/川崎真奈)、何かのパクリじゃないことを心底祈ってます。劇団のチェックがザルだから、たまにやらかしますからね…マジ勘弁してくださいよ?
 というかこの椅子、「居場所」のメタファーだってホント? そんなこと劇中で言ってました? これって居場所探しの話だったの? でも別にミラは祖父の店で働いていてレオは大工修行していて、社会的な居場所がちゃんとあるじゃん。二幕冒頭にミラの椅子取りゲーム場面がありましたが、私はめっちゃトートツに感じましたけど…書店のブランコもそういうことなの? それでレオ(侑輝大弥)は座れなかったの? でも最後にダーンと和解したら椅子に腰掛けられたの? たまたまではなく、そういう演出だったの? ホントに?? でも伝わってなくない…???
『夢現~』はとんがっていておもしろい意欲作だったのに…なんでだろう、あまり評判良くなかったのかな? それでフツーのも作れますよ、って見せる方向に行っちゃったのかな? いやー、でもなあぁ…あ、ほっこり可愛らしいお話でおもしろかった楽しかった、好き、と感じた方にはすみません。私は全然ダメだった、という話です。
 なんとなーく嫌な予感がして、一回でいいや、遠征もしなくていいや、と判断したかつての自分を褒めたいです。しかしほのかちゃんは残念だなー、初主演作も決して出来がいい作品ではなかったしなー(だが作家のやる気は断然感じた)、『舞姫』はいうても再演だしなー。まあひとこ任期中にもう一、二作は主演作が来ると思いますが、それでいい当たり役に巡り会えるといいですね。それか、本公演で二番手としていいお役をもらえればいいのだけれど…フィナーレのデュエダンがなんかそんなイメージなのかな、とも思ったんですけれど、ほのかちゃんって『青薔薇』新公みたいな中性的なフェアリーか、でなかったらもう『冬霞~』みたいな方に振り切っちゃった方がいっそ似合うのかなー、とか思ったりします。なんにせよこの素敵なスターをもっと生かす役、作品を回してやってくれよ劇団!と切に思うのでした…
 あとはもうホントちゃんと作家を育ててくれ劇団!と言いたいですね。企画をちゃんと精査しているのか?という不信感がマジであります…
 別に善人しか出てこないほっこり可愛いお伽話でも全然いいんだけれど、でもじゃあヒロインの両親の事故死なんて重いネタをぶっ込むなよ、と思うのです。そして主人公がそれもあってか新聞記者になったようなのに、では実際の事故の経緯はどんなものだったのか、当時どんな報道がなされていたのか、今はどういうことだったと認識されているのか、15年ぶりの今回の取材、報道がどんなものだったのか、それで何が変わったのか…そういう説明が全然ないじゃん。なんなの?
 ミラはひとり生き残ってしまったことに対して罪悪感を感じていて、笑わなくなっていったということなの? でもミラが笑わない、って設定ってプログラムのあらすじにあるだけじゃない? ミラがアンナ(真澄ゆかり)と会話していたときの変顔は、単なる変顔だとしか私には感じられなかったんですけど…
 アンナもダーンもミラの幼馴染みで、ということはご近所で家族ぐるみのつきあいだったのでは?とも思うのだけれど、ふたりの両親の話は全然出てきませんよね。ふたりは一瞬たりとも「死んだのがうちの親でなくてよかった」とかは思わなかったのでしょうか? そしてミラは祖父ヨハン(一樹千尋)に育てられたということなのでしょうが、傷ついてかわいそうな子としてみんなから腫れ物に触るようにいたわられつつ成長したということ? ミラにはそれが苦しかったけれど、レオはそれを妬いていたということ? レオも幼馴染み…ではないですよね、でも歳が近くて周りで様子を見ていたということ? レオの両親がいないのは事故とは関係ないんですよね? じゃあなんで今さらレオがミラに絡んでいくの…?
 ダーンとミラがお互い告白していないだけで好き合っていて、周りもわかっていてじれじれ見守っている…というのはわかるしまあまあ楽しめましたが、でも突然跪いて指輪の小箱ぱっかーんと開けてプロポーズとか、むしろ怖くない…? パレードは結婚式でしたが、サービス過剰というか…むしろ恋愛も結婚も舐めてんのかこの作家、って気が私はしました。ホントすみません…でも、無理。
 そもそも、ダーンが自分の連載枠を買っているって設定、要ります? 記者として情けなくない? てかあの社長(美風舞良)ならフツーに紙面をくれるのでは? というかこの新聞社は地方新聞を発行しているんだと思いますが、街ネタ部にこんなに人手が割けるほど規模がデカいのか?という…いや若手男役を出さなきゃならない都合はわかるんですけどね、もう少しやりようはなかったのかと言いたい、ということです。
 ジェームス(泉まいら)も別に悪役ではないんだけれど、彼の家庭の事情もよくわかりませんでした…単身赴任じゃないよね、どういう別居だったの? でもヤン(初音夢)はちゃんと懐いてたからときどきは会っていた、良き父だったということ? ヤンの歳とミラが事故にあった歳は同じだけれど、それはたまたま? というかジェームス自身はこの事故とはなんの関係もないんですよね? それとも当時偏向報道をしてしまったということなの? そう、なんかそういう報道被害とかのお話なのかなとも考えていたんですけど、全部中途半端にふわっとして終わりましたよね…なんなの??? すみませんマジでわかりませんでした…
 細かいディープな設定があったけれど、重すぎたのでなくしたのではないかという考察も見ましたが…そうなの? でも重いのが人生でしょう、それをどう軽く明るく描くか、がエンタメの極意なんじゃないの? 全部なくしてどーするよ…作品には作家が人間を、人生を、世界をどう捉えているのかが表れます。私はこの作品からはすごーくあさはかなものしか感じ取れなかったので、評価したくないのです…
 楽しかった、おもしろかったと感じられた方がうらやましいです。別にシリアスに作れと言いたいわけじゃないのです、たわいないほっこり作品だってあっていい、というかあるべきだと考えています。でもそれを作るにはただほのぼのやってたら駄目だと思うんですよね…ウェルメイド舐めんなよ、と言いたいのです。
 もう一作くらい別箱やって大劇場デビュー…なのでしょうか? ショーのセンスがあるなら、まずはショーから、はいいかもしれませんね。ショーなら若い、目新しいってだけでなんとかいけると思うので…

 というわけでほのかちゃん、次の本公演は素敵なお役が来ることを祈ってます。三番手としては辛抱役も多かった気もするので…
 はづきちゃんは美声でとても良き。しどころなさげなヒロインを可愛くやっていて好感持てました。ただ、娘役スターさんとしては地味、か、な…?
 ところでミラの登場には聖乃会が率先して拍手を切るべきでは? あと、プログラムはちゃんと1ページ取ってヒロイン扱いしてくれよ劇団!と思いました。
 二番手格はだいやになるんですね。でもプロローグで意味ありげに出たあとはずーっと出番がなく、その後も出番としては少なくて、新入社員ピーター(鏡星珠)のほうが目立っていておいしく見えたので、フィナーレとか私はけっこう困惑しました…てかここも拍手が欲しいぞ! まあ鏡くんも『巡礼』新公のなんだったんだ大抜擢以降、特に扱いがいいわけでもないので、やっとおいしい役が来てよかったねという気はしました。元気でうるさくてでも邪魔していなくて、よかったです。
 そして娘役二番手格は仰天の真澄ゆかりちゃんですよ…! えっ、次回でやめないよね? イヤ次でやめるからって役付きが良くなるようなクラスのスターじゃないと思うので、大丈夫だと信じていますが…私は顔が好きでずっと注目してきましたが、新公含めてこんなに
役が大きかったことなんて今までまったくなかったじゃん。ぽっぷあっぷも出たことないのにナウオンですよ、何事? 主要スターがみんな御園座に行っているとはいえ…イヤしかし達者でした可愛かった綺麗だったやればできるんです知ってます、フィナーレ娘役群舞センターもたいしたものでした。でもホント何故…という動揺の方が大きいです。でもみんなが覚えてくれたら嬉しい!
 あと、アンナはしっかりしているだけでダーンやミラより歳上、というわけではないのかな? 優男のダーンなんかより自分がミラを守る、ってのはすごくいいし、なんなら百合でもよかったんですけど、でもなんでそんなにミラに過保護になるんだ?ってのはややあったかな…あと、ピーターとのくだりも可愛くてよかったんだけど、なんでもかんでもカップルに仕上げて終えなくてもいいんですよ、とはつっこみたかったです。
 MVPは子役のゆうゆかな。『BF』の茉莉那ふみと並ぶ今年の子役ベストアクトでは…ただ彼女もまだ新公内ですよね、ちゃんとヒロインやらせてくださいね劇団? フィナーレの娘役姿も素敵でした。きちんと起用してくれー!
 あとはみんななんかちょっと役不足でしたかね…ゆかちゃんがヨハンでも問題なかったとも思いますけどね。一樹さんは『アルカンシェル』でも花組にいたしね…
 可愛くて目立っていたのは常和紅葉ちゃん。本公演でも見つけられたらいいなあ…(でも役名の「おかし屋」という表記が嫌。「ぼうし屋」も…何故そこをひらがなに開く!?)

 配信の方が意外に観やすい作品なのかもしれません。DCのほうが青年館より気持ち狭いのかな? まあ、これでほっこりした、愛しい人を大切にしたいと思えた、という観客が増えるなら、いいことなのだとは思います。無事の完走をお祈りしています…!













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設定が酷すぎるのでは (とおやま)
2024-08-06 23:36:10
少しご無沙汰しています。
私は梅田の初日を観たのですが、久々に殺意を覚えるくらいの駄作で、ほのかちゃんに心から同情しました。
初対面の方と隣同士で観劇したのですが、終演後、
「演出家は何を言いたいかったんですかねえ?? 全くわかりませんでした」とおっしゃっていて、思わず二人で苦笑してしまいました。

新聞って媒体(および報道)をなめすぎていて、最初からげんなり。
自分の知らない業界を舞台として設定しても構いませんが、観客が鼻白むような台詞を書くのはどうなんでしょうねぇ。
少しはリサーチしないのかな。
いくら宝塚がファンタジーだからといって、限度があるのでは。まさに「中学生かよ」って感じ。

あと、「さすが“校閲”という工程の無い宝塚歌劇団、記者が書いた文章がそのまま掲載される設定なんだー」と、企業風土の発露におののきました。
とにかく新聞社内の会話が幼稚すぎる。学校新聞の話だったら良かったのにね。

初音夢ちゃんの子役は今回も素晴らしかったけど、どう考えても6歳児くらいの言動でしょう。
あれを11歳という設定にして平気な演出家に絶望しました。
今後、生駒氏が贔屓組やお気に入りの生徒の主演作に当たらないよう願うばかりです。
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ご無沙汰です! (とおやまさんへ)
2024-08-11 01:55:10
別途メールでもお世話になっております(^^)。

なんか、ホントはもっといろいろあった設定が重すぎたので
どんどんなくしていったらスカスカになったのでは…
というような擁護?の意見も見かけたのですが、
舞台に乗ったものがすべてなので…いろいろナメてる作品でしたよね(ToT)。
作品には作家が人間、社会、人生というものをどう見ているのか、が表れるので…
コレではほんと創作家としてこの先かなり厳しいのでは、と言わざるをえません。
宝塚だからこれくらいでいいでしょ、みたいに思われてる感じなのがまたイヤなんですよね…
ほんと、いろいろナメてくれるなよ!?と言いたいです…
組子は作品を選べないからなあ、つらいなあ…

涼しくなったら、また久々にお会いして語りたいです!ごはんしましょう(^o^)。

●駒子●
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