駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇月組『Eternal Voice/Grande TAKARAZUKA110!』

2024年06月28日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2024年4月5日13時。
 東京宝塚劇場、6月13日15時半(新公)、25日18時。

 ヴィクトリア女王統治下のイギリス。考古学者のユリウス(月城かなと)は、古美術商を営む叔父ジェームズ(凛城きら)に頼まれてアンティークハンターとして各地を飛び回る生活を送っていた。ある日、エディバラの鑑定即売会を訪れていたユリウスは、ひとりの男からスコットランド女王メアリー・スチュアート(白河りり)の遺品とされる首飾りを見せられ…
 作・演出/正塚晴彦、作曲・編曲/玉麻尚一。月組トップコンビの退団公演となるミュージカル・ロマン。

 マイ初日雑感はこちら
 結局その後、東京では新公を先に観ることになってしまい、どれが誰の役だっけ、とか点呼しているうちにあっもうオチ?てかじゃあさっきのくだりがクライマックスだったってこと??と新鮮に驚いてしまい、そのあと観た本公演ではもっとおちついて観たつもりでしたが、しかし私はやっぱり全然ダメなのでした…
 なので、感動した! 超名作判定!! …という方はここまでで読むのをおやめくださいませ……
 ちなみにもちろん生徒さんにまったく罪はなく、完全にハリーの問題だと思っています。

 私は理屈っぽい人間なので、遺品に残る残留思念が読み取れるとかの特殊能力、あるいはいわゆる超常現象なるものに対しては全体に懐疑的です。非科学的だと思う。ただないという証明は難しいものだし、現実にできていないわけですよね。それにロマンとしてはあっていいとも思います。
 ただ、フィクションのモチーフとして扱うなら、明確なルールが必要だと思うのです。どういう条件でどんな能力がどう発動するのかを定めてほしい。でないと魔法や超能力と同じで能力者は無敵の人になってしまい、その力ですべて難なく解決できてしまうはずで、物語としてまったくおもしろくなくなってしまうからです。あと、観客とか読者とかはそうした能力を持たない一般人が大半だと思うので(まれに「わかる! 私のことだ! よくぞ描いてくれた!」って人がいるのかもしれませんが…)、自分とは関係のない、知らない星の人の話だ…となってしまわないよう、よりキャラクターに感情移入させる工夫が必要だと思います。
 主人公だから、ヒロインだから、トップスターが演じるキャラクターだから、観るのは宝塚歌劇のファンが大半だから、そのあたりは担保されているのかもしれません。でも、甘えないでほしい。少なくとも私は、もしかしたら意地悪すぎる見方をしているのかもしれませんが、ユリウスのこともアデーラのことも特に好きにはなれませんでした。どういう人間なのかはそれなりに描かれていたと思うけれど、あまりチャーミングに思えなかったのです。それでお話そのものにもノレなかったというのはあると思うけれど…もっと主役を好きになって応援する気持ちでお話を追えるよう、脚本や演出にきちんとお膳立てしてほしかったんですよね。望みすぎですか? でも、それって創作の基本では? 主役が嫌なヤツのお話なんてごまんとあるけれど、たいていは共感しやすい視点人物が他に置かれているものですが、今回のヴィクター(鳳月杏)やダシエル(風間柚乃)、カイ(礼華はる)がそれを担えていたとは思えません。というか要ります?この役、みたいな役しかなかったじゃん…もちろんそれが贔屓ならなんとしてでも萌えて観ていたかもしれないけれど、正直、今回、つらくないですか…?
 ユリウスはなんかオラついた男で、それは自分の特殊能力故の生きづらさにイラついていて、でも開き直って生きていくことにしているのでその虚勢なのかもしれないし、考古学だけでは食べていけないことにもイラついているのかもしれないけれど…いくられいこちゃんが素敵でも、ちょっと幼稚で、周りに甘えて当たっている、よくいるプチ傲慢な男性の典型にも思えて、私はなんか萌えませんでした。アデーラも、そうなる状況に追い込まれている、というのはわかるにしても、神経質でヒステリックな女性に見えて、またそれ以外の個性や特徴は特に描かれていないので、私にはなんか好きになるも何もなかったのでした。
 それは他のキャラクターも同様で、ジェームズ(凛城きら。東京でやっと観られた! お元気そうで何より)とアマラ(羽音みか)の謎のイチャつきとかもニヤニヤしないことはないんだけれど、それでなんなんだ?という気がしたし…エゼキエル(彩みちる)とマクシマス(彩海せら)も、あみちゃんの「もうやめよう、姉さん…!」みたいなのには萌えたんですが、結局なんだったの?という気しかしませんでした。てかアデーラが先祖の意志云々っていうなら彼女たちだってそうだったんでしょ? ヴィクトリア女王(梨花ますみ)を呪うのは筋違いだから叶わなかったんだ、ってこと? そんなのもっと早くわからないものなのか…? トリックスターにしてはエキセントリックすぎて、そしてそれなりに上手いみちるちゃんがいろいろかなぐり捨ててやっているのを観るのは、私はなんかホントしんどかったんですけど、やや考えすぎなんですかね…?
 有能で敏腕なしごでき女性エイデン(天紫珠李)と、その後輩でやはりやる気がある若い女性エレノア(花妃舞音)、ってのだけは、好みもあるけど響きました。ただ、話の本筋にはあまり関係ないキャラ立てだった気もしますけどね…あと、フツーならこのあたりを七城くんとかわかとかしゅりんぷに振ってもよかったんじゃないの?とも思うので、正直言って微妙なフェミ媚びに感じました。まあ次期トップ娘役にまあまあちゃんとした役を書いた、という意味では評価できるのかな…?(毎度上から目線ですみません)実質的に彼女の救出劇がお話のクライマックスになっているわけでもありますしね。ただ、そんなんでいいのか?ってのはあるけど…なんせ主役ふたりは彼女自身とはほとんど関わりがないようなものなので、今ひとつドラマチックに盛り上がらなかった気がするのです。
 それこそエイデンは家の都合によるユリウスの婚約者なんだけど、当人同士は全然その気がなくて…とかにしてアデーラ含めてちょっとこじらせたりしたほうが、もう少し何かのドラマが生まれたのでは…? なんでも色恋にすればいいということではなくて、人の感情が動くエピソードを作ってほしい、という意味です。だって昔のスコットランド女王の無念が云々言われても、大多数の人にはなんじゃソレ、ってなもんじゃないですか。イヤそれが国家元首の隠遁につながっていて政情不安で、ってのは国民としては大問題なんだろうけど、あの説明台詞ではその深刻さは上手く伝わっていないんじゃないでしょうか…てか「クイーン・オブ・スコッツ!」ってナニ? カッコいいから言わせてみた、みたいなの、やめたら…? ただでさえイングランドとスコットランドとかカトリックとプロテスタントとか、わかりづらいんだからさ…
 生徒さんはみんな脚本に書かれたことを上手く演じてみせていたと思うんですけれど、なんせその脚本がまたひどくて、「ル・サンク」を買っていたら私は5行に1回は赤入れしていそうな気がします。指示代名詞が何を指しているのかわかりにくい、省略された語尾や言葉が類推しづらい、掛け合いの意図がわかりづらいなどなど、問題山積だったと思います。実際の人間のしゃべり言葉や会話ってこうだよ、というんだとしても、芝居の台詞は現実とは違うものであるべきだし、ハリー節云々という味わい深さはあってもいいけど、無駄にわかりづらいんじゃ台無しじゃないですか。
 こういう引っかかりも全部飲み込んで、補完して、思い入れて観れば、味わい深いれこうみの関係性が楽しめて、なかなかいい佳作だったよ…みたいな評価になるのでしょうか。そこまで人間ができていなくて、すみません…という気持ちにはなっています。ホント申し訳ございません。

 前日に知人からお声がけいただいて、生で観劇できた東京新公についても、以下簡単に感想を。ちなみに最後のラインナップで正面がまのんたんのお席で、ホクホクでした私…
 ま、全体としてはハリー芝居はやはり下級生には難しかったかな、という印象でした。
 初主演コンビで、ユリウスは雅耀くん。前回の新公でおださんのところをやっていて、華がある若手キター!な印象はありました。確かに美形、でももちろんメイクはもっと洗練されていくことでしょう。立ち姿なんかも、登場時がズボンの皺とかがあまりにも美しくなくて、本役の着ている物をお直ししているから限界があるのは当然なんだけれど、とりあえずこういうこともスキル、場数、年季で、どんなに好素材でもそれだけでは舞台は務まらないものなんだなあぁ、と改めて痛感しました。歌も緊張もあってかけっこう怪しかったし、デュエットはどこをハモってるの?という微妙さでしたね…でも声は深くていいなと思いました。これは役者として武器ですよね。上手く育ててほしいなと思いました。
 アデーラは乃々れいあちゃん、組ファンには美人で知られた存在だそうですが私はほぼお初。確かにこちらも美形。まあソツなくやれていたのかな? でもこちらもまだまだ天然なだけの美でぷくぷくしていて、娘役として洗練されていくのはこれからだな、と感じました。のびのび育てー!
 それからするとヴィクターの七城雅くんはさすがおちついていました。主演経験者はやはり違うなあ…!
 あとはザンダー和真あさ乃くん、よかったです。上手い! 印象に残りました。
 わかのダシエルは…フツーだったかな…どうにも伸び悩んで見えるけど大丈夫かしらん…
 エイデンは俺たちのまのんたん、キリッと作れていて、よかったです!
 ジェームズまひろんは安定の上手さ。てかまだ新公内なの…!?
 エゼキエルはスーパーおはねタイムでした。しゅりんぷのマクシマスもなんせ顔が良くて、やっとわかりやすく目立つところがキタ!って感じでしたね。
 ヴィクトリア女王は私が大好きな静音ほたるちゃん、素敵でした。
 アンナ・クリフトンの美渦せいかとメアリー・スチュアートの咲彩いちごの歌声は圧巻。
 ハリエットの澪花えりさもクールでしごできで良きでした。
 あとはフィンレイの美颯りひとくん、顔がいい! 期待!!
 …そんなところかな……


 レビュー・アニバーサリーは作・演出/中村一徳。
 安定のBショーで舞台にいつも人が多く、銀橋にもいろんな生徒がバンバン出してもらっていて、娘役が銀橋にズラリなんて珍しい場面もあって、まあフツーに楽しかったです。目新しさはまったくなかったですけどね…れいこちゃんセンターの荒城の月くらい?
 大劇場では初舞台生ロケットだったところが東京では多少構成が変わって、スーパーおださんタイムになっていたのも良きでした。イヤすごいよホント、大スターさまだよ…!
 我らがまのんたんは2列目の一番端っこ、みたいな立ち位置が多く、2階席からの方が被りなく見えたかな…とも思いましたが、どの場面でもくるくる表情変えて良きだったので満足です。マスカレードの扱いなんかは良くて、もっと起用してくださってかまわないんですのよ?のキモチ…あー今から『BLUFF』が楽しみすぎます!!
 この期に及んでやっばりみちるあましシンメってなんなんだ、とは思いますが、次代も楽しみです。
 れこうみもご卒業、おめでとうございます。まあいろいろ思うところはありますが…私はくらげちゃんはひらめのように先にやめてくれるものとばかり思っていたのですけれど、当人は自己評価が低いタイプなのか、全然満足できず、なので結局同時退団となったようですね。なんなら残ってまだやりたい、突き詰めたい、くらいすらあったのかなとも思いますもんね…なんとも不思議なコンビでした。まあれいこちゃんは安心できる相手でよかったのかな。個人的には、違う相手役とも組んでより新しい顔を見せてくれていたら…とも思いますけれどね。
 2番手に関しても、結局変わらないままでしたしね…まとぶんも大空さんからえりたんになって、珠城さんもみやちゃんかられいこちゃんになって、こっちゃんも愛ちゃんからせおっちになって…やっぱりのびのびしたと思うんですよね、やっぱり上級生2番手って変則的なんですよ。なんなら珠城さんのあとちなくらげだってよかったんじゃないの?とすらも思いますけれど、まあこういうたらればは言っても仕方ないんでしょうし、劇団はそもそもレールを敷くのが下手でかつ事が敷いたレールどおりに進むとは限らないんだから、もう仕方がないですね。私はれいこちゃんのお芝居は好きなので、芸能のお仕事を続けてくれたら嬉しいです。まあその美貌を活かして、ただのめっちゃ綺麗なお姉さん、になって生きていく…というのもアリなのでしょうが…
 まずは七夕まで、どうぞご安全に。そしてそのあとは少しゆっくりのんびりしてください。組子と組ファンのご多幸をお祈りしています。







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新国立劇場バレエ団『アラジン』

2024年06月18日 | 観劇記/タイトルあ行
 新国立劇場オペラパレス、2024年6月14日19時(初日)。

 商人たちが行き交うにぎやかな市場にアラジン(この日は福岡雄大)が現れる。何かと騒ぎを起こす彼は宮殿の警備隊に捕まってしまうが、その様子を見ていた魔術師のマグリブ人(中家正博)が魔法でアラジンを助け出し、自分の仕事を手伝わないかと誘う。財宝に目がくらんだアラジンは了承するが…
 振付/デヴィッド・ピントレー、音楽/カール・デイヴィス、装置/ディック・バード、衣裳/スー・ブレイン、照明/マーク・ジョナサン。指揮者/ポール・マーフィー、管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団。
 プリンセス/小野絢子、アラジンの母/中田実里、サルタン/中野駿野、ランプの精ジーン/渡邉駿郁、アラジンの友人/木下嘉人、原健太。2008年初演、5度目の上演。全3幕。

 デイヴィスがスコティッシュ・バレエのために書き下ろしたバレエ音楽『アラジン』を用いて、ビントレーが新国立劇場バレエ団と創作した新作…というようなものだそうです。『アラビアンナイト』などを参考にしたということですが、アラジンがプリンセスと出会って恋に落ちて結婚して離れ離れになって再会して…というストーリーには目新しいものはなく、単純です。ただ、音楽がいい。振付もいい。セットもいい。砂漠の洞窟の財宝、その宝石たちのディヴェルティスマンがゴージャスで飽きさせず楽しいし、何度かある主役カップルのパ・ド・ドゥは華やかでチャーミング。なんちゃって中東…どころかタイや中国のイメージまであるのは、ホント西欧人の考えるエキゾチックって…とほとんどあきれるところですが、お衣装も素敵でなんせ目に楽しい。ジーンはバリバリ踊るし、ミュージカルばりの演出もデーハーで楽しい。3階最前列センターブロックやや下手寄りのお席から、十分堪能しました。
 宝石たちではパ・ド・トロワのエメラルド(原田舞子、益田裕子、中島瑞生)や男女カップルのルビー(木村優里、井澤駿)、たおやかなサファイア(池田理沙子)なんかが素敵でした。
 そしてアラジンとプリンセス(プリンセス・バドル・アルブダル…「満月の中の満月」という名だそうな)の踊りが、どれも本当に素敵でした。福岡小野コンビというのは新国立のエースだし、私も何度か観ていると思いますが、今回はことに息ぴったりで、何度もあるダイブからのリフトがまったく危なげがなく流れるようで、実に美しく鮮やかで軽快で、ハッピーなラブのオーラにあふれていました。こうでなくっちゃね!
 3時間近くたっぷりあるので、18時開演でもよかったかもね…とは思いましたが、客入りもよく、お子さんでも楽しめそうで、良き演目だと思いました。団の財産として育っていくといいですね。
 ついついド古典のバレエ・ブランばかり観がちな私でも、楽しかったです!








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『ウーマン・イン・ブラック』

2024年06月16日 | 観劇記/タイトルあ行
 PARCO劇場、2024年6月12日18時。

 ヴィクトリア様式の小さな劇場。舞台に特別な装置やセットはなく、がらんとしている。そこへ中年の弁護士キップス(勝村政信)と若い俳優(向井理)が相次いで現れる。キップスには青年時代、家族や友人にも告白できないようなある呪われた体験があった。以来、その記憶のために悪夢に悩まされ、安らぎのない日々を送っていた。悩み抜いた末、キップスはこの忌まわしい記憶を家族に打ち明けようとする。あの怪奇な出来事を家族や身内の前で語ることによって、悪魔祓いに代え、呪縛から解放されようというのだ。その手助けに俳優を雇ったのだが…
 原作/スーザン・ヒル、脚色/スティーブン・マラトレット、演出/ロビン・ハーフォード、アントニー・イーデン、翻訳/小田島恒志。1987年イギリス・スカーバラ初演。日本では1992年の初演以来8回目の上演、全2幕。

 前回上演は2015年で、俳優役は岡田将生、キップスは同じく勝村政信だったそうです。タイトルは知っていて、『黒衣の女』も以前読んだことがあるようにも思いますが中身はまったく覚えておらず、ふたり芝居というのでおもしろそう、と出かけてきました。
 ふたりなんだし、休憩なし90分か2時間弱くらいの舞台かな?と思っていたら、しっかり2幕あって驚きでした。正確にはふたり芝居ではないのかもしれないけれど…でも台詞もアクションもふたりでずっと回すので、神経使うし体力的にもかなり大変な作品なのでは、と感じました。ただ、もちろん上手いふたりなので、安心して観られました。私はスプラッタはわりと平気ですがホラーは全然ダメなので、そういう部分については怖くてまあまあ涙目になりましたが、悲鳴を上げたりはせずにすみ、楽しく観ました。
 ただ、ミステリー部分については、だんだんことの顛末がわかってくると同時にお話のオチについても類推できるようになっていくので、トータルで観ると、これはもっとおもしろくできる演目なのではあるまいか?と私は思いました。権利関係が厳しいのかもしれませんが、一度日本人演出家でガッチリやってみたらどうなんでしょう…
 というのも、これは俳優が俳優を演じるタイプの芝居、作品なんですよね。ムカイリの「俳優」は当初は、キップスが自伝というか自作の回顧録? 日記、告白文? を読み上げるテクニックについて指導するのですが、まだるっこしい、となって、俳優が若き日のキップスを演じ、キップスはそれ以外の自伝の登場人物である地主とか管理人とか御者とかを演じ出すわけです。で、読むのはたどたどしかったキップスが、なりきり演技はものすごくて、だんだん劇中劇がそのまま回想になっていくというかなんというか…な構造になっています。いかにも舞台作品のギミック、という感じです。
 ただ、その過程で、キップスは語ることで肩の荷を下ろし回復していき、黒衣の女の呪いを俳優に押しつけてイチ抜けた、と去っていき、傲慢で上から目線だった俳優がキップスを演じるうちに自信を失いその呪いごと引き受けてしまって、今度は自分の家族に災厄が…というオチになる、はずにしては、その変化が描かれていなかった気がしたのでした。現実と演技の境目がなくなる、あるいは逆転するのがこういう作品の醍醐味なんじゃないの? そこが私には弱く見えて、アレッこれで終わり?という気がしてしまったのでした。これは演出とか演技指導の問題じゃないのかなあ。それとも私が穿って見過ぎ…?
 あとは、まあイギリスのゴーストとはこういうものなのである、と言われたらまあそうなんでしょうけれど、この黒衣の女の呪いというかなんというか、には節操がないというか際限がなさすぎて、これだとちょっと同情しづらいな、というのがちょうど観たばかりの『四谷怪談』のお岩さんとの違いかな、などと考えたりもしました。代わりの子供を殺しても自分の子供は帰らないのだし、、自分も救われたり癒やされたり気がすんだりしていないようだし、不幸な家族を増やすだけで虚しいどころか害悪だよね、という気しかしなかったのです。理屈っぽい人間ですみません…
 あとは(が多くてすみませんが)、もう一回り小さいハコでやるとより効果的だった気はします。客席登場の使い方なんかはホント上手いですよね。ザッツ演劇らしい演劇で、さすがイギリス作品なのかもしれません。
 数十年後、若い俳優を迎えてムカイリがキップスをやるときまでに、適度に中身を忘れてまた観たい、と思いました。かつて俳優をやっている西島秀俊も上川隆也も、そろそろキップス役ができそうですよね。そういうの、楽しいと思います。
 ところでプログラムのムカイリのスーツ姿の写真が素敵すぎますね…罪な男だぜ!












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フライングシアター自由劇場『あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た』

2024年06月09日 | 観劇記/タイトルあ行
 新宿村LIVE、2024年6月6日19時(初日)。

 8人の俳優たちは皆、夢を見ている。或いは誰かの夢の中に浮遊する。8人の俳優たちは皆、森と呼ばれる夢の時空を彷徨う。8人の俳優たちは皆、ピラマスとシスビーの悲恋を演じ、恋をする…
 脚色・演出・美術/串田和美、原作/ウィリアム・シェイクスピア『夏の夜の夢』、翻訳/松岡和子。全1幕。

 アンダーグラウンド・シアター自由劇場がオンシアター自由劇場になり、解散し、そしてまたフライングシアター自由劇場となったんだそうです。その第二回公演。ホント大空さんっぽい仕事だなあ、と思いました。良き感触が得られたのか、次回公演への参加も決まりましたね。串田ミューズになっていくのかしらん? 楽しみです。
 今回は、8人の役者が20数役をこなす2時間の舞台でした。『リア王』も『ハムレットQ1』も「うーん…」で、私はもうシェイクスピアはいいかな…のキモチでしたが、これは大空さんがよかったのもあるし、『夏の夜の夢』はいろいろギミックもあって楽しいっちゃ楽しいし(やはり整合性とかはないんだと思いますが)、『PUCK』の記憶もあるし(これはイケコにしてはホントいい翻案だと思います…)、上手く「考えるな、感じろ」ができて、楽しく観られました。それこそ夢のあわいをさまよったような気がしました。
 初めて行くハコでしたが、シアタートラムみたいな感じ? わりに新しいんだそうですね。3列目どセンターをいただき、とても観やすかったです。
 物語は劇中劇というか、何層にもなっているようで、プログラムによれば一番の外枠は二千年後か三千年後の生き残ったホモサピエンスが見る夢、ないし記憶…ということだったのかもしれませんが、そのあたりは私は実はよくわからなかったかな。そんな長い時間、人類は存続できていないのでは…(地球はともかく)と私が考えている、というのもありますが。
 というわけで大空さんはヒポリタでティターニアで「ラオ屋のみっちゃん」で月の光です。ラオ屋のみっちゃんは他の仕立て屋(川上友里)や表具師(皆本麻帆)やいかけ屋(小日向星一)たちと一緒にお芝居を上演?しようとしている人たちの役…かな? 月の光は、ピラマス(谷山知宏)とシスビー(川上、皆本、小日向の3人が演じる…)の物語を演じる舞台でのお役…というか照明係?(笑)黄色いお衣装をまとって仏頂面でランプを掲げ持っている姿がラブリーでした。
 ヒポリタはアマゾンの女王、ティターニアはご存じ妖精の女王で、いずれも素敵でした。なんとお歌もありましたしね(何故か「サマータイム」…!)。魔法でロバ、というか化け物に惚れちゃうくだり、『PUCK』でいうところのユリちゃんや珠城さんに懐く大空さん…!と時空を超えて勝手にたぎったりもしました(笑)。お相手役のシーシアスでオーベロンな島地保武が大空さんよりさらに長身で映えてよかった、というのもあります。
 あとは、あれはどの役としての台詞だったんでしょう、みっちゃんではなかったような…なんか普通の女性がひとりごとみたいにかなり長くしゃべるくだりがあるのですが、そこがとてもよかったなあぁ、と。声が好きだってのもあるし私がファンだっていうのもあるでしょうが、すごく難しい場面だろうに十分聞かせてホント上手い!と思いました。ちょっと違うけど今とても怖ろしい思いで楽しく見ている『燕は帰ってこない』のショーコちゃんのお役、に近いものを感じたりもしました。というかああいうお役、大空さんもできそうと思った、というか…映像ではあまりそういう役回りをやっていない印象ですが。あの役は別にひとりごとを言ってはいないんだけど、相手が息子だろうとその妻だろうと、人の話を聞いていないじゃないですか。その感じが、似て感じられたので…
 ちょうど夏至のころ、ルーマニア公演があって、そして松本で大楽なんですね。すごいなあ、またフェスタでいろいろお話が聞けるかな? 次のオイディプスではやはりイオカステをやるのかな? 先日のものとはまた違ったものになるのでしょう。楽しみです!!






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宝塚歌劇花組『アルカンシェル』

2024年05月28日 | 観劇記/タイトルあ行
 宝塚大劇場、2024年2月14日13時、3月23日11時。
 東京宝塚劇場、4月23日18時、5月2日18時半(新公)、22日11時。

 ナチス・ドイツ占領下のバリ。ミュージック・ホール「アルカンシェル・ド・パリ」では、ドイツ軍の進駐を目前にユダヤ系演出家が亡命し、残された看板歌手のカトリーヌ(星風まどか)が演出を任され、ダンサーのマルセル(柚香光)が振付を担当することになった。マルセルは振付の経験がない上に、カトリーヌとも意見が合わず、稽古は難航する。そこへドイツ軍文化統制官のコンラート(輝月ゆうま)が副官のフリードリッヒ(永久輝せあ)や部下たちを引き連れて現れ、高圧的な態度でジャズの禁止とウィンナ・ワルツの上演を強制し…
 作・演出/小池修一郎、作曲・編曲/青木朝子、小澤時史、多田里紗。トップコンビの退団公演、一本立ての全2幕。

 マイ初日感想はこちら
 今読んでみると、やはりその後の組子の仕上げ力はすごくて、芝居もキャラも深まったと思うので、作品への私の評価はもう少し高いです。『エタボ』が私はダメだったこともあって(東京だまた観たら印象が変わるかもしれませんが…)、佳作とまでは言わないまでもきちんと及第点を取る出来に仕立ててくるイケコは、さすが腐っても大家だな、など思いました。ただ本当に腐っているなら問題なわけで、引き続きこのままスルーなの? 本当に?? ということは言い続けていきたいです。
 まったくの事実無根なので関わりを持つのも馬鹿らしい、とスルー…というポーズを取りたいキモチはわかりますが、叩けば誇りが出る身なのはもうみんなわかっているじゃないですか。自浄作用、働かせましょうよ…他にも作家、演出家はいるじゃないですか。違う演出の『エリザベート』も『モーツァルト!』も『ロミジュリ』もファンは観たがっていますよ、新機軸でまた客が呼べますよ? そうしないなんてどんだけ弱み握られてんの、と邪推もしようというものですよ。たとえ社長まで含めて乱交パーティーに及んでいたとかだったとしても、全部クビ切って出直してくださいよ…このままでもどうにかなると思っているらしい様子が、本当に絶望的です。みんなちょっとずつ観劇回数減らしてるんですよ? ジリ貧だよ、それでいいの…? ああ、OGになった卒業生たちがイケコと外部で仕事をすることがないよう祈ります。そこじゃないところでも仕事はできるんだよ…そういうことで姿勢を示していってほしい、と切に願います。
 その後私もいろいろ学習して、今は「ナチスはダメだけど国防軍はマシだった」みたいな言説は最近の研究では否定されていることや、ジャズは当時プロテストソングとして歌われてひどい弾圧も受けていたりしたので、こんな「隠れてやればいんじゃね? みんな喜ぶんじゃね??」みたいな安易な展開はありえなかろう、みたいなことを知っています。ただ、宝塚歌劇が何をどこまでやるか、という問題はあり、作中でも語られているように、まずはひとときの気晴らしを求められているようなところはあるから、事実に対してそんなに厳密ではなくていもいい…のかもしれません。ただ、作り手があからさまにそういう態度を見せるのはどうなんだ?とは思います。創作の作り手としてまずは歴史や史実をきちんと調べて、その上で取捨選択してこの形にしたのだ、くらいの言及はすべきであって、何も言わず、かつろくに調べもせずイメージだけでテキトーに作りました、みたいなのが見え透いちゃっちゃあダメなんだよ、とは思うのです。そこはちゃんと反省してほしいし、こんなの外国人には見せられない、外国には持っていけない代物だ、ということは劇団も意識しておいてほしいです。そういうレベルのものしか作れていないのだ、という自覚はちゃんと持っていてよね、とは心底思います…
 そして観客・ファン側も、その問題意識は持ちつつも、この枠の中で贔屓やスターたちを応援する…という芸能なんだ、ということに自覚的でなければならないでしょう。特殊だし、ある意味で正しくない。もっとできるはず、理想は高く持っていいはずなんです。それも、言い続けていきたいです。

 さて、そんなわけで、私は今はマルセルもカトリーヌも好きですね。
 マルセルは、初見で私があまり好印象を持たなかったというか、愛嬌がないキャラだなあと思ったのが正解で、トップスターがやるお役には珍しく、ダンスは天才的に上手いかもしれないけれど性格的に偏屈で孤高で人に合わせないし人好きがするタイプでもなく、自分の目的だけに邁進している、周りがちょっと扱いに困るタイプの男…なんですよね。それが、ジェラール(舞月なぎさ)たちの亡命によって振付を担当させられることになって、ひとりだけで好きなように踊っていればいいだけではなくなって…という変化が肝だったんだろうと思います。ただ、脚本が今ひとつ下手で、そう見えないんですけどね…ロベール(帆純まひろ)やアンヌ(凛乃しづか)が振付に関して云々言う台詞がありますが、あれが効いていないんですよね。マルセルが全体のために、舞台の出来のためにみんなに優しくなっていって、それでみんなも踊れるようになるしマルセルを中心に集まるようになるし、それでやっとレジスタンス活動にも誘われるようになる(つまりそれまではハブられていた)、というのが本来の流れなんだろうと思いますが、今、なんかそうは見えませんもんね。
 まあでも、そういうかたくなだったところから一回り人間的に大きく、優しくなるマルセルをれいちゃんは生き生きと演じていて、それがとてもいいなと思いました。カトリーヌとの恋愛の推移も、ナチュラルでとてもよかった。最後の、抱きついてきたカトリーヌをぐるりんとぶん回すところ、ホント面目躍如という感じがしました。良きお役で、よかったです。
 劇中劇の形でショーナンバーはありましたが、それでもれいちゃんとしては踊り足りなかったかと思います。でも『ビシャイ』でたくさん踊ったし、仕方ないのかなとも思います。フィナーレのソロダンスも、どちらかというとザッツ宝塚なポーズを決めていくばかりの振付だったかなと思いますが、それこそこういう踊りってもう観られなくなると思うので、堪能しました。外部ではダンスを活かした公演ってなかなかないものですが、ご卒業後も良き芸能活動をしていただきたいと思っています。
 私はファン歴のスタートがヤンさんだったこともあって、オサのあと、まとぶん、まゆたん、みりおちゃんを挟んで再び生え抜きの、いかにも花男らしい、ダンスに秀でた花組トップスターが出現してくれたことが本当に嬉しかったですし、ここまで見守れて、そして見送れて、本当に感慨無量でした。お疲れさまでした。

 カトリーヌも、可愛いだけのわかりやすいヒロインではなくて、頑固な職人気質なところがある、プロ意識の高い、ベテランになりかけなくらいのキャリアのある歌姫、という設定ですが、それこそまどかの仕上がりきったキャリアと経験からしたら難なく演じられるお役で、むしろ本当に今のまどかにちょうど良く、好きなキャラクターになりました。お衣装がどれも似合っていたのも素敵でした。
 本人はずっとそこまでではない、と思っていたようですが、クラシック歌曲もちゃんと歌える人だと私は思っているので、アデーレのアリアもヴィリアの歌もとても耳福でした。れいちゃんマルセルとの、アドリブもあったらしいやりとりも可愛らしかったし、新公では変更がありましたが、ドイツでひとりでちゃんとがんばるのもよかったです。
 フィナーレのデュエダンも本当に美しかった…! 私は華ちゃんが苦手で、特にデュエダンで懸命にカウント取って踊っているようなところがジュンナ以来だな…!とあきれるくらいにダメだったんですけれど、れいまどになってダンスが本当に伸びやかになって、観ていて気持ちがよかったです。OGミュージカルスター枠は飽和状態な気もするけれど、是非ゴリゴリ突入していっていい仕事をしてください!というキモチです。私のスマホの待ち受けはまどかです、娘役ちゃんの写真にしたのは初めてですよ…! 気に入っている写真でもあり、しばらくはこのままかな…お疲れさまでした。

 さて、マイ初日感想ではいい役だなあと思ったフリッツは、イヤむしろこのお役をひとこホント上手くやってるよね…!と思うようになりました。ドイツ軍にもいい人はいる、エンタメ好き、フランス贔屓の人はいる…ってのはいいんだけど、ホントちょっと無責任というか、ちゃんと考えて言ってる?ってところがあるし、異動はしても粛正も処刑もされないのって実家が太いの?って気にもなるし、なんかホントちょっと、かなり、微妙なキャラですよね…あとこれは完全にイケコのせいであり、おかしいと指摘し修正させない周りのせいなんだけれど、台詞の日本語がちょいちょいおかしいのも、言わされるひとこが本当に気の毒でした。でもこんな難役を、ありったけのキラッキラを投入してなんとか成立させているひとこが本当にすごい…!と改めて思いました。次期トップスター、まったく問題ないと思います。どうぞこの先いいお役、いい作品が当てられますように…!!
 そして私は星空ちゃんも苦手なんですけど、それでもアネット(星空美咲)の芝居も良くなっているのはちゃんとわかるので、こちらもこの先もなんの問題もないことでしょう、がんばれー!と思っています。
 ほのかイブ(聖乃あすか)は…役不足なようでもあるし、力不足であるようにも思えました。中に入ってみんなと絡むお役をやらせた方がよかった気もするし、こういう額縁役って儲け役になることもあるんだけれど、役自体にそこまでギミックがなかったこともあって、爪痕が残せていなかった気がします。新公では変更があり、まるくんは目立っていたかなと思ったんですけどね…
 あとはホントまゆぽんとあかちゃんが仕事しているだけで、ほってぃーはなこだいやらいとはひとからげのグループ芝居だし、びっくまいこつゆかちゃんあたりも頼もしいんだけどいつも似たような敵方をやらされているかなという気がします。娘役に至ってはみこたんにもみさこにも特に餞はないし、つーか糸ちゃんみょんちゃんあわちゃんと特に仕事もないし、なんだかなーという感じです。柴田先生ならこのあたりまでいいお役を書いてくれそうなんですけどねー…
 まあでも、ミュージック・ホールを存続させるためがんばる人々、を宝塚歌劇に重ねて、上手く胸アツに作ってあって、やはり水準にはあったかな、とは思います。悪役のドイツ帝国と組んでたんですけどね我が国は…という視点がないのは怖ろしいことですけれどね…


 東京新公は観られたので、以下簡単に印象を。
 担当演出は平松結有先生。ショーナンバーをカットしてコンパクトにまとめるだけでなく、不必要だったり不可解だったりしたイケコの台詞も細かくカットしていて、とても好感が持てました。逆に、星空ちゃんがやっていたからかもしれませんが、お衣装部さんとダンサーたちが協力して工夫している様子なんかの台詞が足されていて、単なる場つなぎではなく、そういうことを表現したい、という意志が感じられたのもよかったです。お若く新しい作家さんは大歓迎です、早くバウデビューが観てみたいものです!
 ラスト、手が足りないからというのもあるんでしょうけれど、出演者をほぼほぼパリ市民にして銀橋に出して「たゆたえども沈まず」を歌わせたのもGJでした。初舞台ロケット以来の銀橋という生徒も、これが最後の銀橋となる生徒もいることでしょうからね…そのあとフリッツだけが舞台を横切り、それで他にもドイツ兵たちは投降、退却していったのだろう、と思わせたのもうならされました。マルセルとカトリーヌは下手花道にはけるのではなく、舞台奥に向かって進んでいく形で幕、でそれも美しかったです。

 さて、マルセルは天城れいんくん。二度目の新公主演ですが、序盤はだいぶ緊張して見えましたね。ただ、そういう硬さや頑なさ、空回りギリギリの必死な様子が、「ああ、マルセルってこういう役だったんだな」と私には思えて、とても好感を持ちました。れいんくん自体にも、これまでも手堅く上手いけど私のツボじゃないかな、などと思っていたのですが、なんか今回すごくときめいてしまいました…ヤダ私にはらいとがいるのに…!(笑)声で識別できるので本公演ではドイツ兵にいることは知っていましたが、マイ楽にじっくり観てみたらなんかやさぐれた芝居をしていて、それにもちょっとキュンと来ました。華もあるし声にあたたかみがあって、いいですよね。大きく育てー!
 カトリーヌは七彩はづきちゃん、こちらも二度目の新公ヒロイン。私はなんか顔立ちというか持ち味がお姉さんっぽいというかおばさんっぽいというか(失礼!)、おちついているなと感じていて、こういう役の方がハマるのでは?と考えていたのですが、やはりだいぶ緊張して見えたし、けっこうやりあぐねているようにも見えたのが意外でした。本人的には可愛い役の方がやりやすいのかな…? あとは紫のワンピースが、ダーツの位置の問題もあるのかもしれないしそもそもそまどかのものだからサイズが合っていないのかもしれないけれど、胸の位置がすごく下に見えて、それこそおばさんっぽいぞー、ってのがすごく気になりました。もっと高い位置にキープする下着を着けてほしい…私は乳にはうるさいのです、すんません。
 フリッツは遼美来くん、ひとこよりさらにあっかるーいパワーで押して、この役を成立させている感じでした。でも好印象。歌も良かった!
 アネットも楽しみな新進歌上手娘役の花海凛ちゃん。歌は万全、お芝居もよかったです。ちょっと大柄に見えたかな? まあ痩せるのはこれからか…
 まるくんのイヴ(美空真瑠)は少年イヴ(真澄ゆかり)本人となっていて、劇中の立ち位置もちょいちょい本公演と変わっていて、単なる外野、額縁の狂言回しではなくなっていて、すごくよかったです。そしてまるくんはものすごくおちついていて、全体を掌握しているような感じがあって、それが新公全体をものすごく支えていた気がしました。
 でもMVPはコンラートの夏希真斗くんかな…本公演ロケットではセンターで圧をかましている男役さんですよね? いやーよかった、振りきってしっかりやっていました。
 鏡くんはペペ(鏡星珠)でしたが、勉強にはなるだろうけど起用としてちょっともったいない気もしました。これでご卒業のみこたんはマダム・フランソワーズ(愛蘭みこ)で、歌はちょっと力みが見られたけれど、ちゃんとマダムに作っていて感心しました。ああもったいない…!
 そしてみさこがハナコのポールをポーラ(美里玲菜)としてやっていて、これがよかった! お稽古場のピアニストはもちろん、レジスタンスにも参加していて、パンツにブーツでバリバリ踊るのがカッコいいったら! 男役が足りない、というのもあるのかもしれませんが、他にも娘役が数人レジスタンスに参加していて、そうだよね女性もいたはずだよね、荒事ではあるかもしれないけれど男性ばかりっておかしいよね…!と思う、とても良き改変でした。
 おっ、と思ったのがあかちゃんのジョルジュ(光稀れん)の光稀くんで、わりと抜擢に思えましたが、台詞もしっかりしているし、背格好も良さげだったので、磨かれていくといいなと思いました。
 娘役ちゃんたちはあとはホントやりようがないので…ドイツ軍人たちも、まあしっかりしていたけれど、特筆して何か、とかはなかったかな…
 雪『ベルばら』から大劇新公も復活するようですが、引き続きコロナもインフルその他も油断できないし、でもなんとか調整してやはり東西二度やれるといいよね、と思います。お稽古が重荷になりすぎることのないよう、その中でがんばってみていただきたいです。


 千秋楽も無事終わったようで、よかったです。れいちゃんの武士みたいなご挨拶も素敵でした。みなさん、まずはゆっくり休んでね…の気持ちです。
 そして『ドン・ジュアン』、楽しみです!!


※※※


 先日、雪『ベルばら』の集合日があり、主な配役についてはジャンヌ復活に期待するしかない!というところではありますが、そして退団者については覚悟していたようなところもあるのでここでは泣き言は述べませんが…ひまりー!(ToT) しかしせいみーはもったいないのではなかろうか…
 そして、集合日付けで一禾あおくんのご卒業が発表されました。
 本当に残念です。戻ってきてほしかったし、きちんと送り出してあげたかった…ファンには会えたのでしょうか? ご本人とご家族、ファンの方々が一番悲しいでしょうね…でもせめてここまで在籍してくれたのは、お姉さんの件が一応の決着を見るまでは、ということだったのかもしれません。そもそもこんな事件がなければ、もっとずっといてくれて活躍してくれたことでしょう。もちろんみんながみんな、いろんな形で夢を絶たれるものなのかもしれませんが…それでもこんなことがあっていいはずはなかったのです。申し訳ないし、無念です。これからのご多幸をお祈りしています。
 一応の決着、とは書きましたが、あくまで一応であり、何もなかったことにはできませんし、問題も山積しています。劇団からは何やらふわっとした進捗報告もありましたが、宙組公演も再開に向けて動いているので、事故のないよう、また不当な誹謗中傷を組子やファンが受けることのないよう、何より生徒始め関係者全員が健康で安全で幸福に舞台に関われる環境を作るよう、劇団と阪急には引き続き努めてもらわねばなりません。それは見守るし、できていないように見えるなら苦言を呈し続けたいし、だからこそ、あるいはそれでも、私は観劇を続けたいと思っています。宙組公演も友会が当たりましたしね…
 ブーイングしたり、生卵を投げつけるような観客が出ないことを祈ります。抗議したいことがあるんだとしても、劇場に持ち込むのは違うと思うので…最近、外部公演で客席から舞台に上がっちゃった人がいたりした事件もあったようですが、ホタル嬢のみならず警備員でも警官でも投入してしっかり見張らせて、まずは出演者をきちんと保護してほしいな、とも思います。手荷物検査でも本人確認でもなんでも、やるべきなのではないかしらん…ああ、心配。

 ひとこみさき大劇場お披露目公演の初日はずらさないのかしら?とずっと思っていたのですが、命日は月曜で休演日なんですね。来年以降、劇団がどうするつもりなのかも注視したいと思います。歌舞音曲禁止で、経営陣と各組幹部で墓参に行くくらいで当然だと思っています。
 改めて、どうぞ劇団関係者全員が、安全で健康で幸福に働けますよう、そしてファンも楽しく幸せに観劇できますよう、祈りたいですし、自分でもできることはがんばりたいと思っています。ファンはみんな多かれ少なかれ悩みながら、迷いながら、客席に座っていることでしょう。意見の違いはいろいろあるのかもしれませんが、なるべく穏便に、前向きに、やっていきたいものです…










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