駒子の備忘録

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宝塚歌劇星組『ロミオとジュリエット』

2021年05月19日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 宝塚大劇場、2021年2月14日13時(初日)、24日13時、26日13時、27日11時。
 東京宝塚劇場、4月16日15時半(初日)、5月12日18時、18日18時。

 イタリアのヴェローナに古くから続くふたつの名門モンタギュー家とキャピュレット家は、何代にもわたって争いを繰り広げていた。キャピュレット家では、娘のジュリエット(舞空瞳 )とヴェローナ随一の富豪パリス伯爵(綺城ひか理、極美慎の役替わり)の縁談が持ち上がっていた。一方、モンタギュー卿のひとり息子ロミオ(礼真琴)はまだ見ぬ恋人を想って森を散歩していた…
 原作/ウィリアム・シェイクスピア、作/ジェラール・プレスギュルヴィック、潤色・演出/小池修一郎、演出/稲葉太地、音楽監督・編曲/太田健。2001年フランス初演、2010年日本初演。全二幕。

 初演の感想はこちら。雪組版はこちら。月組版はこちら。星組再演はこちら。外部版はこちら
 今回の初日雑感はこちら
 緊急事態宣言の発出で、持っていた東京A初日のチケットが飛んだのが恨めしい…でも結果的にはABバランスよく観られたのかもしれません。
 というか私はなので生で観る予定がまだあるからと配信をまったく見なかったのですが、無観客上演での配信は演じている側も見ている側もさぞ寂しかったことでしょうね。おのれコロナ、そして無能な政府よ…東京初日のカテコでこの劇場の満席の客席を見るのが2年ぶり、と言って感極まった様子だったこっちゃんの表情が忘れられません。再開後、それでも12日夜のロビーはまあまあうるさいなと感じましたが、18日夜は注意喚起アナウンスもそれはそれは頻繁で、さすがにみんな言葉少なに思えました。千秋楽まであと少し、みんなでがんばっていきましょう。そして無事に花組さんを迎えられますように… 

 というわけで、個人的にはBパターンの方がおちついて楽しく全体を観られて浸れた気がします。かりんさんパリスの出番が少ないからね(笑)。で、ぬめぬめ怪しい愛ちゃんの死に浸れる。愛もきさちんの方が好きだったかなー。というかさりおはめっちゃ痩せちゃいましたね、ちょっと心配…
 でも、正当な配役はAなんだろうな、という気もしました。もちろん今後の上演でも2番手が死を演じる役替わりもあってもいいだろうとは思いますが、そのときの生徒の個性やポジションにもよりますよね。私は申し訳ありませんがせおっちとぴーにそんなに興味がなくて、今回も特に目覚めることはなかったので、そのせいもあるのかもしれません。あかベンかりんマーの組み合わせが観たかったよ…でもさらに目が足りなくなるだけだったかしらん?
 ティボルトは、やはりベルナルドもやっていることもあって、こじらせっぷりとかでもそれを乗り越えようとあがいている感じとかが、愛ちゃんの表現の方に一日の長がある気がしました。どなたかのつぶやきにありましたが、ペルソナに順応する強さ、自己肯定感のた高さが愛ちゃんの方にはあった。あと単純にデカいので、ベンマーふたりがかりで喧嘩するのも納得の、いいライバルに見えました。でもせおっちも、また違う意味でかわいそう感とか悲壮感とかはあっていいかな、と思いました。ただ、芸風が小さく見えたかな…そしてベンヴォーリオではただのいい人に見えてしまって、これまた小さかった気がしてしまいました。
 ベンヴォーリオはなんてったってあかさんの「どうやって伝えよう」が絶品! 花組時代も歌がいいなと思っていましたがあまり歌う機会がなく、組替えしても前作はこれまたとりあえずな置かれ方だった気がしましたが、美形だしタッパもあるし踊れるし、これまた今までの星組には意外といなかった感じのスターとして座を占めていけそうで、一安心しました。まあまあちゃんとしてそうなんだけど一周回って意外と粗忽、という役作りがとてもよかったと思います。パリスは、鼻持ちならない金持ち感が出ていてこれもよかった。「♪莫大な相続がこの私を待っている」って、父親とかではなくておそらくは恩義ある縁者からのものなのでしょうが、その死をもはや規程のものとしてルンルン歌い上げちゃう非道さがとてもよく似合っていました。うん、ジュリエット、嫌って正解(笑)。
 ぴーマーキューシオはなんか私は目と耳が滑ってあまり印象に残らず…意外とええ声なのがマキュにはアレなのかなあ(みやちゃんマキュの声とかよく記憶しているのですが…)、まあフツーにキレキャラをよく務めていたと思うのですが…死はお衣装の、特に上体がなんかダボッとして見えるのが気になりました。それでなんかあまり人外感を感じられなかったのかなあ…
 大公とピーターはどちらもちゃんとしていてよかったですね。ジョンはさすがに差異がよくわからなかったかな。
 みっきーシュリパパはジュリエットについ手を上げるくだりの芝居とソロが、公演後半ではとてもいい感じにヒートアップしていてよかったです。初日にはちょっともの足りなく感じたので…そしてあんるジュリママは、とにかく歌いこなそうとしんどい努力をし続けているのが見て(聞いて?)取れましたが、喉をつぶしたりすることなく完走できそうなのでまずはよかったです。これも初日はどこかで休演するはめになるのではないか、と心配したので。でも小桜ほのかとかでも観たかったかな…
 みきちぐロミパパ、なっちゃんロミママは手堅く上手い。せおベンのアタマをつかむロミママの強さよ…(笑)そしてもちろんじゅんこさん神父の、ちょっと俗っぽいところが見えなくもない、いい感じの包容力もよかったです。完全無欠の聖者じゃないところがいいんだと思うので。くらっち乳母も、歴史に残る素晴らしさでした。
 その他のAB分けアンサンブルだと、Bのモンタギュー男のあまとくんはやはりイイね力入ってるね!って感じで目がいったし(代役ロケットも圧があってよかったです)、キャピュレット女はAのマメちゃんの艶やかさ、Bの水乃ちゃんあまねちゃんのカッコ良さをガン見しましたし、モンタギュー女ならAのるりはな、綾音ちゃんが好きでよく目で追っていました。
 こっちゃんは本当になんでもできる人で、でも今回はあえての美少年芸でロミオをやってみせていて、さすがでした。「僕は怖い」の絶品ぶりは長く語り継がれることでしょう。
 そしてより強くひたむきに現代的になったひっとんジュリエット。「今行くわ(怒)」は賛否両論あったようですし、ロミオがちょっと引いて見える回もあったけれど(^^;)、リアルなヤングさがあってよかったし、恋する乙女のリリカルな姿とも両立するものだと思うので、私は好きでした。歌もこっちゃんに引っ張られて、すごーく成長しましたよね。そして圧巻のデュエダン! もちろん今度は振りの少ない、ゆめゆめしいダンスも観てみたくはあります。両方できるとホント強いよ! まだまだ伸びしろがあることでしょう、さらに大きく育ってほしいトップ娘役さんです。
 では最後にかりんさん。単なる盲目的なファンの戯れ言で申し訳ありませんが、ホント心配していたよりまずマーキューシオが良くて安心したし、でももちろんまだまだ雑というかできていないこともたくさんあるのも見えるし、でもホント華があってタッパあってスタイル良くて顔が良くて目を惹くし、ホントはそろそろソレだけじゃダメな年次なんだけどでもこの段階ではたいしたものでは?とつい甘やかしてしまうファン心理なのでした。当人はもちろん悩みあがきがんばり、かつ楽しんでやっているんだろうと思います。愛ちゃんゲスト回のドリタイ、めっさおもろかったなー(笑)。パリスもホントにキュートでいい感じに残念で(笑)、とてもいいバランスだったと思いました。コレに耐える強さはひっとんジュリエットにはまだないよね、逃げて正解(笑)。
「マブの女王」の歌はぴーの方が上手かったと思います。というか全体に歌はまだまだ足りないと思う。でもなんか、そういう在り方もマキュっぽいとも言えるかな、と感じました。
 100パー陽キャみたいな空気感あるんだけれど、意外とほの暗いところもあって、それが死に際に結実するようでもある。ロミオに「謝るのはガキだけだぜ」と嘯いても自身も十分に若く、愚かで、でも「♪俺は憎む、どっちの家も」と言えるだけの視野もある青年。そしておそらくはアドリブで「ロミオ、ありがとな…」と言って死んでいける青年…そのあとの死に踊らされるダンス含めて、好きでした…!

 はるこ様のお取り次ぎでSS席で観たときに初めて、フィナーレの男役群舞のお衣装が下半分が濃い色になっているのに気づきましたよ…顔しか見ていないんで単なる影の暗さかと思ってた(笑)。このときは正面がほぼかりんさんで、そっちばっか見ていたら、基本的にこっちゃんを見ている同伴親友とは視線が交差したらしく、失笑されましたテヘペロ。ほのかみたいな端正さもおださんみたいな骨太実力も持ち合わせていないんだろうけど、上手く育ってほしいですホント…!
 …はっ、でもコレまた極美日記じゃないから! まだだいじょぶだから! …とムダにあがいて、今回はあっさりめに終わります。




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