映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

まぼろしの市街戦(1966年)

2018-11-24 | 【ま】



 以下、公式HPよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 第一次大戦末期、敗走中のドイツ軍は占拠したフランスの小さな街に大型時限爆弾を仕掛けて撤退。

 イギリス軍の通信兵は爆弾解除を命じられ街に潜入するも、住民が逃げ去った跡には精神科病院から解放された患者とサーカスの動物たちが解放の喜びに浸り、ユートピアが繰り広げられていた。

 通信兵は爆弾発見を諦め、最後の数時間を彼らと共に過ごそうと死を決意するが…。

=====ここまで。

 あの名作が4Kデジタルリマスター、なんとスクリーンで見られることに!

 
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 これを見逃してはいかんでしょ~。と、劇場まで行ってまいりました。……この映画をスクリーンで見られる日が来るとは。しかも4Kデジタルリマスターで画像もキレイ。感激。


◆毒入りおもちゃ箱

 本作はよく“カルトムービー”とか“カルト映画”とか言われるんだけど、今回再見して、どこがカルト?? と改めて思った次第。一緒に見に行った映画友は「やっぱ、精神病院が舞台だからじゃない? ディズニー映画みたいには公開できないっしょ」と言っていたけど、そうなのか、、、? コアなファンがいるのは確かだろうけど(私もその一人だけど)。

 まあ、それはともかく、、、。詰まるところ、本作は、戦時下のシャバと精神病院とじゃ、精神病院の方が平和なユートピアである、つまり“狂気”の本質を抉っているわけだ。それを、押しつけがましくなく、可愛らしいメルヘンのような装いに痛烈な毒を塗り込めて作られており、大人のおとぎ話といったところか。正直なところ、非常に中毒性の高い映画であるので、その辺が“カルト”と言われる所以かも知れませぬ。

 みんシネにも感想を昔書いたのだけど、あるレビュワーさんが本作のことを「おもちゃ箱をひっくり返したみたい」と書いていて、至言だと思った。まさしく、精神病院の患者たちが、もぬけの空になった街中に繰り出して、思い思いの格好をし、自由を祝うがごとくのお祭り騒ぎに興じる描写は、その色彩といい、音楽といい、おもちゃ箱そのもの。おまけに、爆弾を恐れて住民がみんな逃げ出した後の街には、ほかにも、移動動物園から出て来たクマやサルが闊歩していて、おもちゃ箱、、、いえ、パンドラの箱を開けたみたい。

 そのおもちゃ箱のロケ地は、パリの北40キロにあるオワーズ県サンリスという街とのこと(パンフによる)。この街並みが実に美しい。ヨーロッパには中世の趣を残す街並みは少なくないだろうけれども、このサンリスもそう。こんな街で暮らしてみたいものだわ。

 そんなおもちゃ箱に仕掛けられた爆弾を巡り、ドイツ軍とイギリス軍が右往左往するわけだが、終盤、この両者が鉢合わせになる場面がある。爆弾の仕掛けられた広場で、両者は向かい合い、双方が発砲する。当然、両軍の大勢の兵士たちはバタバタと倒れて死ぬ。このおもちゃ箱のようなメルヘンと大量死。

 アラン・ベイツ演じる通信兵プランピックは、途中で、ドイツ軍が爆弾をどこに仕掛けたかを悟り、患者たちを街の外に避難させるべく連れ出そうとするが、患者たちは、ふと我に返ったように街から出ることを拒絶して精神病院に戻っていくのである。色とりどりの衣裳を脱ぎ捨て、「現実の世界は苦しいだけです」と言って。精神病院の門の前に散乱する衣裳やパラソルの数々に、何とも言えない虚無感を抱いてしまう。

 こういう、ところどころのシビアな描写が、全体のおもちゃ箱との鮮烈な対比となり、実に印象深い。


◆ラストシーンの違い

 本作の原題は“Le Roi de Cœur”で、「ハートの王様」。これは、序盤にプランピックがドイツ兵に追われて精神病院に逃げ込んだ際、患者に紛れて名乗った名前。それで、患者たちから「王様」に祭り上げられ、街中に繰り出した際には教会で戴冠式まで行われる。

 そして、このハートの王様が恋するのが、患者の中の一人コクリコという可愛い女性。このコクリコを演じているのが、ビジョルドであります。なんと可愛らしい、、、。プランピックに「あなたに抱かれたい」とか言うのよ。当然、プランピックもコクリコを好きになってしまう。だから、街から出ようとしない患者たちをプランピックが見捨てられなかったわけよ。そしてまた、このコクリコと最期の時を過ごそうとプランピックが腹を括ったことで、爆弾の起爆装置を止めることが出来た、、、というオチ。

 この爆弾については、序盤で、住民の一人のレジスタンス(街の床屋)がイギリス軍に密告するんだけど、「真夜中に騎士が打つ」と言い掛けたところでドイツ兵に銃殺されちゃうので、イギリス軍としては、この謎の一文だけを手掛かりとして爆弾探しのためにプランピックを街に送り込んだというわけ。で、終盤、コクリコが言ったセリフが、この「真夜中に騎士が打つ」を解明することになる、、、という次第。

 街は爆破されずに済むんだけれど、戦争の狂気は続き、、、。ということで、問題のラストシーンになります。

 日本公開版と違うラストということだけど、私は、DVDの特典映像だったか何かで、この4K版のラストシーンを見たことがある。ちょっとした違いだけれども、どちらが好きかは人によるかも。私は、日本公開版の方が好きかな。4K版ももちろん悪くはないけれど。どんなラストかは、ここでは敢えて書きませんが。是非見ていただきたいです。


◆その他もろもろ

 主演のアラン・ベイツは撮影当時31歳くらいですかね。若いです。私の中で一番印象深いアラン・ベイツといえば、そらなんつっても『ニジンスキー』で演じたディアギレフ役。それはそれはもう、冷酷非道な男を、実に見事に演じておられました。本作ではコミカルな役どころで大分印象が違うけれど、ハートの王様の彼はすごく可愛かった。ゼッフィレッリの『ハムレット』や、アルトマンの『ゴスフォード・パーク』とかも印象的。2003年に亡くなっていたのですね、、、。

 ビジョルドは、もう最高に可愛い。ハートの王様の部屋に、窓から窓へとパラソルを持って綱渡りするシーンがすごく良いです。ビジョルドの出演作で一番好きなのは、『1000日のアン』と本作かなぁ。彼女の魅力が最も生きている役だと思う。何のDVDだったか覚えていないけど、割と最近(10年くらい前かな)の彼女が特典映像のインタビューで出ていて、確かに歳はとったけれど、相変わらず可愛らしい魅力的な女性だったのが嬉しかったわ。

 あと、娼館のマダムを演じていたのがミシュリーヌ・プレールで、あの『肉体の悪魔』でジェラール・フィリップと共演していた女優さんだった!! パンフを見て初めて知ったけど、ビックリ。何度も見ているのに今までゼンゼン分からなかった。しかも今もご健在とか(98歳!!)。公爵を演じていたジャン=クロード・ブリアリはやっぱり渋くてステキ。

 本作は資金集めに苦労した、ということだけど、この豪華出演陣、、、スゴい。フランスではゼンゼン当たらなかったらしいけれども、その後公開された、当時ベトナム戦争泥沼化していたアメリカでかなり受けたという、なんとも不思議な現象。どっちかというと、本作はヨーロッパ的エスプリ(?)な感じだけど、アメリカで受けたとは。やはりベトナム戦争という背景があったからでしょうかね。

 今回見逃すと、いつスクリーンで見られるか分からないので、是非この機会にご覧ください。可愛いパンフも発売されています!










「サバは芋好き」(街の床屋の暗号名)




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