映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

マンディンゴ(1975年)

2021-04-06 | 【ま】

作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv8624/


以下、公式サイトよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 19世紀半ば、ルイジアナ州の広大な土地を所有するマクスウェルは、そこで黒人奴隷を育てて売買する“奴隷牧場”を経営していた。

 息子のハモンドは名家の娘ブランチと結婚するものの彼女が処女でなかったことに失望、黒人女エレンとの情事に溺れ、従順な奴隷ミードを鍛えることに没頭する。

 一方のブランチもミードと関係を結んで妊娠、権力者として振る舞っていた一家は破滅の道を歩む・・・。

=====ここまで。 

 フライシャー監督が『風と共に去りぬ』のアンチテーゼとして撮った傑作。


☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆


 新宿の武蔵野館は、時々こういう不思議なリバイバル上映をするので侮れない。なぜ今本作を再上映するのか? というのは、武蔵野館のHPを見てもよく分からない。デジタルリマスターされたから、ということだろうけど、TSUTAYAにはレンタルがあるしねぇ、、、。DVDはリマスター前の画像なのかな? よく分からないけど、スクリーンで見られる機会はそうそうないだろうと思って、これまた平日の昼間に仕事をサボって見に行きました。

 いやぁ、、、聞きしに勝る、おぞましい映画でございました。でも、一見の価値はあります。というか、見ないと損、、、レベルかな。


◆“悍ましい”とはこのこと。

 奴隷制度は、アメリカの黒歴史だそうだが、昨年からBLM運動が起きて現在も続いているところを見ると、制度こそなくなったものの、その精神は過去の遺物にはなっていない模様。本作は、その奴隷制度の核をなしていたであろう「奴隷牧場」が舞台。“奴隷”の“牧場”ですよ? 酪農感覚で奴隷を“生産”している場所です。そして、その描写が出てきます、本作では、バッチリ。

 そういう映画だと知っていて見に行ったわけだけど、それでもかなりの衝撃的な映像。奴隷を生産するってのは、つまり、牧場主(やその一族の男たち)が黒人女性を端からレイプして子どもを産ませ、その子どもたちを商品として売り飛ばす、ってことなんだけど、子どもはもちろん奴隷同士から生まれる場合もあるんだけれども、とにかく肌の色が白くない者は、「人間じゃない」のだよ、牧場主や白人たちにとっては。セリフにもバンバンそういうのが出てくる。大体、奴隷を診察するのは“獣医”なんだからね、、、唖然。

 で、タイトルのマンディンゴなんだけど、マンディンゴって何? と思っていたら、どうやら、奴隷にもいわゆる“血統の良し悪し”があるとかで、マンディンゴというのは血統の良い黒人のこと。ネットで調べたら、実際に「マンディンカ族」という種族がアフリカにいるらしい。それはともかく、本作内では、「マンディンゴだよ! 前から欲しいって言ってただろ!」などというセリフと共に、マンディンゴの男性ミードが競りにかけられるシーンが出てくる。

 まあ、とにかくもう、唖然呆然の描写がこれでもかこれでもかと続き、眉間にずーーっと皺が寄りっぱなしだった気がする。唖然呆然の内容を詳しく書いても、あんまし意味がないような気がするので、ご興味おありの方は、まだ武蔵野館で上映しているので見に行かれるか、TSUTAYAでDVD借りて実際に見ていただきたい。

 特筆すべきは、内容に反して音楽が陽気で美しいこと。当然、ここにフライシャーの意図を感じるんだが、その音楽を担当しているのは『アラビアのロレンス』や『ドクトル・ジバゴ』等、数々の名曲を残したモーリス・ジャール。本作でも、おぞましい画に不釣り合いな耳に心地良い音楽を披露してくれている。

 眉間に皺を寄せながらもどうにか終盤まで見ていたが、ラストにかけて、何かこう、、、トドメを刺された気分になった。もう、とにかく本作の終盤からラストにかけては狂気そのもので、正視に耐えない。いやしかし、きっとこういうことは現実にもあったに相違ない。このまんまのことがあった、というのではなく。これ以上におぞましく、常軌を逸した狂気の沙汰が繰り広げられていたのは想像に難くない。

 そうしてみると、『風と共に去りぬ』(は、私はあんまし好きじゃないんだが)が南部をいかに表層的に描いた物語かということが分かる。もちろん『風と共に去りぬ』は、あれはあれで名画なんだろうが、フライシャーが本作を撮ってやろうと思った気持ちは分かる気がするわ。


◆ジェームズ・メイソン、スーザン・ジョージ、ケン・ノートン

 牧場主のマクスウェル家の当主ウォーレンを演じているのはジェームズ・メイソン。いつも座るときには奴隷の子供を寝かせた上に自分の足を乗せている(理由を知りたい方は本作をご覧ください)。ジェームズ・メイソンといえば、こないだ見た『評決』での憎たらしい弁護士役が素晴らしかったんだけど、本作でもその才能をいかんなく発揮されております。とにかく、トンデモ爺なんだけど、それが彼にとってはあまりにも“当然”過ぎて、何の疑問も罪悪感も感じていないのがスクリーンからジンジンと伝わってくるのが恐ろしい。

 ウォーレンの息子ハモンド(ペリー・キング)は、ミードやお気に入りの奴隷女性は大事に扱い、父親とはちょっと感じが違う風でありながらも、他の奴隷女性を気まぐれにレイプしたり、ミードを野蛮な格闘技で闘わせたりと、根本的にはオヤジさんと同種の人間。おそらく、フライシャー監督は、ちょっとこのハモンドを優男っぽく描くことで、父親のトンデモ振りとあのラストを際立たせる狙いがあったと思われる。

 ハモンドは、自分は斯様に女をセックスの相手としか見ていないくせに、妻になる女性には貞淑を求めるという、笑っちゃうような男でもある(現代でもこういう男は一杯いると思うけど)。彼と結婚したブランチは、一見可愛らしくウブということになっているんだが、演じているのがスーザン・ジョージで、ウブにはゼンゼン見えないところが面白すぎる。スーザン・ジョージと言えば、『わらの犬』でもセックス・シンボル的な役回りだったが、こういう役が実にハマっている。

 で、当然のことながら、ブランチは処女ではなかったので、初夜を終えたハモンドは怒り狂う。いや、ホントに、その怒り狂い方が凄まじくて、怒りの大きさと、怒りの原因のみみっちさとのギャップにドン引き。ハモンドはブランチに興味がなくなって、お気に入りの奴隷女性の下に通う。ブランチは寂しくて、マンディンゴのミードを誘惑して関係を持ち、ミードの子を妊娠する。んでもって、ブランチが肌の色が黒い赤ん坊を出産すると、ハモンドは再び怒り狂って、、、という、こうやって文字にするとアホみたいな展開なんだが、ゼンゼン笑えない。何なの、このハモンド。あまりにもバカ過ぎ、勝手過ぎて、もう、、、ボー然。こんなんなら、まだオヤジさんの方が筋が通っていてマシに見えてくる。

 マンディンゴのミードを演じたのは、ヘビー級ボクサーのケン・ノートン。実にカッコイイ。そら、ブランチが誘惑したくなるのも分かる。てか、ハモンドなんかよりゼンゼン魅力的だろう。中盤の奴隷同士の格闘シーンも凄惨だった。あんなのを見て喜ぶなんて、(自分も含めて)人間ってホント、野蛮な生き物なんだな、、、とイヤになった。さらにイヤになるのが、ミードの凄惨極まる最期である。


◆黒人に攻撃されるアジア系

 今、アメリカ(ヨーロッパでもかな?)ではアジア系に対する暴力事件が頻発しているらしい。こないだ、TVのニュースで流れていた映像では、その犯人は黒人男性だった。BLMが叫ばれている中でそれ。もう、滅茶苦茶だ。

 人間が社会的な生物である限り、残念ながら差別はなくならない。きちんと子どもの頃から教育しないと、とんでもないレイシストが育つという実証データもあるらしい。それくらい、人間は本質的に差別をする動物だってこと。

 だから、国のリーダーが差別的発言をするってのは、ホントに罪が深い。やっぱし、キレイごとでも、リーダーはそのキレイごとをきちんと口にしないと、下々の者たちは「ああいうことを公言していいんだ」と思ってしまうからね。内心でどう思っていようと、やはり、口にしてはいけないことなんだ、という心理的なブレーキがあるかないか、ってのは非常に大きい。差別的な言葉を誰かにぶつけても、結局、そういうのは巡り巡って還って来る。

 アジア人を攻撃していた黒人男性も、別の所では差別される側な訳で、、、。

 子どものころ、「ルーツ」という、やはり奴隷制度を描いたドラマシリーズがTVで放映されていたが、内容はほとんど記憶にないけれど、かなり話題になっていたのは憶えている。ドラマだから、本作よりは大分マイルドな描写だったろう。アメリカがトンデモな国ではあっても、こういう映画やドラマがちゃんと作れるところは、やっぱしスゴイと思うし、正直言って羨ましい。日本人の蛮行を映画にしてほしいという意味ではなく、こういう映画を制作できる土壌があるということがね、、、。ま、羨んでもせんないことだけど。

 

 

 


 

 


本作のポスターは、あの名作のパロディ。“悍ましい”シーンも描かれています。

 

 


 ★★ランキング参加中★★


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« DAU. ナターシャ(2020年) | トップ | ノマドランド(2020年) »

コメントを投稿

【ま】」カテゴリの最新記事