映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

第三夫人と髪飾り(2018年)

2019-11-03 | 【た】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv68260/

 

以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 19世紀の北ベトナム。絹の里を治める大地主(レ・ヴー・ロン)のもとに、14歳のメイ(グエン・フオン・チャー・ミー)が3番目の妻として嫁いでくる。

 一族が暮らす大邸宅には、穏やかでエレガントな第一夫人のハ(トラン・ヌー・イエン・ケー)とその息子ソン(グエン・タイン・タム)、美しく魅惑的な第二夫人のスアン(マイ・トゥー・フオン)と3人の娘たちがいた。そして、若き第三夫人メイには、さらなる世継ぎの誕生が期待されているのであった。

 まだ無邪気さの残るメイは、ふたりの夫人に見守られながら穏やかな毎日を送っていたが、やがて、ここでは世継ぎとなる男児を産んでこそ“奥様”と呼ばれることを知る。  ほどなくしてメイは妊娠。出産に向けて季節が移りゆくなか、第一夫人も妊娠していることが発覚する。そんな折、メイは第二夫人のある秘密を知ってしまい……。

=====ここまで。

 

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 昨年初めてベトナムに行ったせいか、美しい北ベトナムの風景が出てくる予告編を見て、興味をそそられ見に行って参りました。

 と言っても、見たのは先月半ば。早く感想を書こうと思っていたんだけど、風邪を引いて鼻づまりが続き、ブログどころではない日々。といっても不調なのは鼻だけで、喉も痛くないし、頭痛もほとんどないし、当然熱はないし、でもダルい、頭もボーッとする(……これはいつもだが)、何かヘン、、、。……というわけで、先週1週間はほとんど健康優良児並みの早寝をする毎日。体調が悪いときは寝るに限る。

 がしかし。早寝を続けたにもかかわらず、一向に鼻づまりは改善せず。かんでもかんでも出てくる鼻水は一体どこから来ているのか? 脳ミソ溶けてんじゃねーの??と自分でツッコミを入れたくなる。今回、鼻が詰まって困ったのは、嗅覚がまるでダメになり、とにかく味が分からない!! 食欲はゼンゼン衰えないから、フツーに食べるのだが、せっかく食べても味が分からない。辛いのと苦いのは一応分かるが、甘いのはイマイチ分からない。目をつぶって食べたら、きっと今自分が何を食べているのか分からないに違いない。それくらい味が全く分からない。鼻が詰まったことなどこれまで何度もあるはずだけど、ここまで味が全く分からなくなったのは初めてな気がする、、、。

 相変わらず、何となくボーッとしたのが続いていたけど、昨日は半年前から待っていたブレハッチ&ワルシャワフィルの演奏会で、これが期待以上に良かった!(感想はいずれ書きたい、、、)ので、良い気分で調子に乗って帰りにデメルでエクレアとか買いこんで来たんだが、帰宅して早速エクレア食べたら、何と!! 嗅覚が復活したんである! 良い音楽聴いて美味しいもの食べたら、味が分かるようになった、という、、、私の体調は非常に現金なものだと分かった次第。

 デメルのエクレアは、シュー生地の下にもチョコが敷かれていて、いやはや良いお値段の訳だ。

 と、前振りが長くなりすぎましたが、本題へ。

 

◆監督自身が上映中止の判断をすることに……。

 監督は、ベトナム出身で欧米育ちの女性アッシュ・メイフェアというお方なんだが、ベトナムで本作が公開されて数日後、上映中止を決断せざるを得ない状況になったらしい。

 内容もだが、主役である第三夫人のメイを演じたグエン・フォー・チャー・ミーとその母親に対する批難・中傷が激しくなったためだとか。公開前から炎上状態だったというから、中には本作を見てもいない人たちが多くいたのだろうことは想像に難くない。14歳で第三夫人に、、、というストーリーから、この母親に対し「娘を金のために売った」という中傷まであったらしい。

 日本でもR指定になっていたみたいだけど、性的な描写は一応あるが、そんな指定は必要ないくらいに全編抑制の効いた描写だったと思う。児童婚がいまでも行われているインドなどの現実の方がよっぽどマズいでしょ、、、なんて真っ当な意見はかき消されるんだわね、こういう場合。

 昨年行ったときにガイドさんが話してくれたことを聞く限り、ベトナムの女性たちもかなり社会進出している様だったが、まだまだ抑圧されている部分はあるだろうね、そりゃ。日本だっていまだに、、、なんだから。そして、そういう歴史に蓋をしよう、いやそれどころか抹消しようという人々は、ベトナムにもやっぱりいるらしい。本作は上映中止に追い込まれたが、まあ、これからもっと直截的な作品は多く出てくるだろう。メイフェア監督も、これからの若い女性アーティストのためにも、ベトナムでの上映に拘ったと言っている。

 

◆男たちはいずこ、、、?

 本作は、全体にセリフは少なく、メイの目線で日常が丁寧に描かれていくので、一見単調な感じがするが、実はそこにはそれぞれの立場での葛藤が静かに描かれており、淡々としながらも埋み火がチロチロと見え隠れする、、、そんな映画。

 ……といっても、夫人たち同士は一応仲が良く、協力し合って生活していて、表向き“大奥”みたいな陰謀渦巻くドロドロはない。けれど、メイは、第二夫人に恋愛感情を抱いたり、自分と同時期に第一夫人が妊娠したと知ると「どうか私にこの家で最後の男の子をお授けください」と祈ったり、、、と、複雑な心の内を見せる。いくら抑圧された状況とは言え、人間なら当たり前だと感じる。

 印象的なのは、とにかく男たちがほとんど出て来ないこと。家事はもちろん、家業の養蚕、農作業を始め、牛の出産や鶏の解体といったことまで、ほとんど全て夫人たちと下働きの女性たちが担っているのである。一体、男たちは何やってんの??という感じで、この家の主も若旦那も、おそらく仕事らしい仕事はしていないと思われる。取引や商談の場に、“顔”として出ていくのが彼らの仕事なんだろう。実際に手を動かし作業をするのは、ほとんど女たちだった、ということのようだ。

 しかし、そんな女たちは主体的に生きることは禁じられており、女たちの人生を決定するのは“普段は何もしない”男たちなのである。メイもそうやって第三夫人になるべく、嫁いできたわけだし、第一夫人、第二夫人もそうだった。そしてそんな理不尽が最悪の形で表出するのが、第一夫人の息子(長男)にトゥエットという少女が嫁いでくるエピソード。

 この長男、なんと、第二夫人と不倫しているのである。長男は第二夫人を本気で愛しており、結婚などしたくないと泣いて訴えるが、トゥエットは何も知らずに嫁がされてくる。初夜に新郎に拒絶されたことで、彼女自身に何の罪もないのに、実の父親さえトゥエットを家の名を汚す娘と貶める。立つ瀬のないトゥエットは、結局、自ら首を吊る。……なんという不条理。

 こういう現実を不条理と明確に認識し、NOと意思表示するのが、第二夫人の娘というのも皮肉である。この娘は、「男になりたい」とも言う。そして、ラストでは、女性の象徴である長い髪をジョキジョキとハサミで切って川に流すというシーンで終わる。

 この時代、女性たちは何となく理不尽さを感じながらも“そういうもの”と受け止めていた人が多かっただろうが、その中で、その理不尽にNOと声を上げ、自覚的に行動に移す女性というのは珍しかったに違いなく、本作でもシンボリックに描かれる。こうして希望を抱かせるラストではあるけれど、その後のベトナムの歴史(植民地化、ベトナム戦争)を知る身としては、複雑でもある。

 

 

 

 

 

 

またベトナムに行きたくなった!

 

 

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