映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

ダンガル きっと、つよくなる(2016年)

2018-10-12 | 【た】



 以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 国内チャンピオンになったものの生活のため引退したレスリングを愛する男(アーミル・カーン)は、道場で若手を指導しながら、いつか息子を金メダリストにすることを夢見ていた。しかし生まれたのは女の子。それから神頼みに始まり、あらゆる産み分けを試したが、授かったのは4人連続女の子だった。すっかり意気消沈し、道場からも遠ざかる。

 十数年後、ケンカで男の子をボコボコにした長女と次女の格闘センスに希望を見出した男は、翌日から二人を鍛え始める。娘たちに男物の服を着せ、髪を切り、一家は町中の笑いものになるが、父は信念を曲げない。娘たちはささやかな抵抗を企て続けるが、やがて才能を開花させていく……。

=====ここまで。

 実話モノ。世界で総額約376億円稼いだという本作。アーミル・カーンにとっても最大のヒット作となったらしい。 

 
☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜☆゜'・:*:.。。.:*:・'☆゜'・:*:.。。.:*:・'゜


 アーミル・カーン好きの映画友に誘われて、劇場に見に行く予定だったのだけど、そもそもあんまし気乗りしていなかった上に、都合もつかず見送り、、、。まあ、予告編を見て想像していたとおりのスポ根映画だったけれど、まあまあ面白かったかな。……でも、私はやっぱし『きっと、うまくいく』の方が断然好きだけど。


◆女のくせに、、、

 インドが舞台、ってのがミソだよねぇ。インドと言えば、いまだに根強い性差別。女は黙っとれ!的な風習が根強く残っている彼の国で、女が、しかもレスリングで、世界的に活躍するというオハナシなんだから。

 私が一番印象に残ったシーンは、姉妹が強くなって世界の舞台で活躍するシーンではない。

 姉のギータと、妹のバヴィータが、アーミル・カーン演ずる父親マハヴィルの理不尽なシゴキに耐えられず、友人の結婚式で愚痴る。「普通の父親は娘にレスリングなんかさせない。あんな父親いらない、、、」 ……それを聞いた花嫁になった友人は、涙ながらに姉妹にこう返す(セリフ正確じゃありません)。

 「私はあんな父親が欲しい。普通の父親は、娘が生まれれば掃除と料理を覚えさせて、14歳になったら顔も見たことのない男の所に嫁に出す。厄介払いするだけ。でも、あなたたちのお父さんは、あなたたちの将来のことを考えてくれている。いい父親よ」

 この友人の言葉が、姉妹を目覚めさせたんだよね。

 確かに、この父親は、自分の夢を娘に託すという自己チューパパに違いない。その鍛えっぷりは半端なく厳しいもので、姉妹がレスリングを止めたくて「(土の上での)練習で頭が砂だらけになってシラミが湧いて困っている」と訴えると、姉妹の長い髪をスポーツ刈りにしてしまうなんてのは、日本じゃ虐待だろ、という感じ。

 とにかく、女性が一人前扱いされていない環境にあって、姉妹は、同じ自己チューであっても、嫁に出して厄介払いする父親の自己チューよりは遙かにマシであることに気付き、自らトレーニングに積極的に励むようになるわけ。ここから、父親と姉妹の3人のスポ根ストーリーが本格的に始まるという次第。


◆この自己チューな父親は嫌いじゃないワ。

 でも、私はこの父親の姉妹の鍛え方にはほとんど不快感を抱かなかった。髪刈り事件はいただけないが、この父親は姉妹に体罰を加えないし、感情にまかせて罵倒することもしない。時に理不尽でさえあるシゴキには違いないものの、それは、ひとえに“レスリングに必要なものを身に着けさせる”ためであることが伝わってくる。いわゆる、根性論ではないところが、好感を持てる。ある意味、極めてロジカルなのよね。

 実際の父親と姉妹の関係がどうだったかは、もちろん知る由もないけど、少なくとも本作での描かれ方は、見ていても不快にならない。

 それ比べれば、強くなったギータが入った国立スポーツ・アカデミーのコーチはサイテーだ。もちろん、この人物は創作で、実際はこんなアホコーチではなかったと信じたいが、本作中でのコーチは、ギータの父親に露骨に対抗意識を燃やし、ギータから父親の影響を完全に排除しようとする、非常にちっせーヤツなのだ。まるで指導者の器ではない。

 ……でも、こういうタイプの人間は、実在するよなぁ、と見ながら思った。本人の持つ良さを認めない、まずは否定から入る人。そして、上手く行かないと、本人のせいだけにする。自分の言うことを聞かないから上手く行かないんだと。自分の言うことに黙って従ってればいいんだ! みたいな。自分の指導が本当に本人にとって良いのかどうか顧みる、ということを絶対にしない人。これぞ、パワハラが生まれるシチュエーションじゃない?!

 おまけに、このコーチ、観察眼もイマイチ。敵の分析力にも欠けるのか、コーチがギータにアドバイスする内容と、父親がアドバイスする内容は正反対。そして、ギータは(多分、彼女なりに考えた上で)父親のアドバイスに従い、コーチをイラつかせるが、結果的には試合に勝つ。それがますますコーチのプライドを傷つけ、コーチは父親を排除しようと躍起になる、、、。とまあ、この辺は映画上のシナリオだと思うけどね。

 この、父親VSコーチの感情的対立は、終盤の見せ所となる。大事な試合なのに、父親が観戦に来られない状況になり(もちろんコーチが仕組んだことなんだが)、試合中、客席に心の支えである父の姿を見ることが出来ないギータは、負ける寸前まで追い込まれ、、、(続きは、本作をご覧ください)。まあ、これは完全な創作だと思うけど、ちょっとやり過ぎだったような。このエピソードがあったために、私は却って盛り下がってしまった、、、。ごーん。

 途中、父親と、アカデミー仕込みのギータが対立し、直接対決してギータが父親を負かす、というシーンがあって、ここで力では“親を超える”という通過儀礼が描かれる。でも、実は精神的にはまだまだ超えられていなかったという厳しい現実がその後に展開し、なかなか、こういったところも見ている者を飽きさせない構成で素晴らしい。

 2時間半と、相変わらず長尺だけれど、長さを感じさせないエンタメにも仕上がっています。


◆その他もろもろ

 DVDの特典映像で、アーミル・カーンの肉体改造ってのがあったんだけど、これがマジで凄かった。中盤以降、彼の演じる父親は、ず~っと太っているのね。実際の撮影は、この太っているシーンから撮り、その後、減量して、痩せている現役選手の頃の撮影をしたんだとか。相撲取りのような身体が、ボディビルダーみたいな身体に変化していく様は、それはそれは見ものです。

 アーミル・カーン自身は、太るときは「好きなものを気兼ねなくたくさん食べることができ、幸せだった」とか。でも、太ってるバージョンの撮影が終わったときは「もう二度とこんなに太りたくはない」とも言っている。やはり、身体が重く、動きにくいらしい。

 彼は、『きっと、うまくいく』では10代の学生を43歳で演じ、その5年後には『PK』でサイボーグみたいな身体になっていたから、肉体改造なんて朝飯前かと思っていたら、やはり、そのためにやっていることはなかなか壮絶でシビアなものだった。でも、あんなに肉体を頻繁に改造していて、健康面は大丈夫なんだろうか。急激に太ったり痩せたりすると、かなり内臓にダメージが掛かると聞いたことがあるので、ちょっと心配。

 本作では、ギータに焦点が当たっているけど、バヴィータにもきっとドラマがあったに違いない。難を言えば、そのバヴィータのドラマがかなり薄かったことかな。まあ、でも尺を考えると致し方ないのかも。

 あと、音楽が面白かった! タイトルの「ダンガル」ってのはレスリングのことを指すらしいが、重要なシーンになると、BGMで ♪ダンガル・ダンガル、♪ダンガル・ダンガル、♪ダンガル・ダンガル……と、延々と続くんだよね、これが。見ている方も、手に汗握ります。



 








ギータは吉田沙保里選手・伊調馨選手とも対戦しているようです。




 ★★ランキング参加中★★

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« トランボ ハリウッドに最も... | トップ | 愛する映画の舞台を巡る旅Ⅱ ... »

コメントを投稿

【た】」カテゴリの最新記事