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「江戸繁昌記 ニ篇」 12 混堂(ゆや)10

(散歩道のソライロサルビア)

先週に続いて、駿河古文書会に出席する。月に2回の会が後半に纏まったために続くことになった。さらに来週は9月の会が続くため、3週連続となる。しかも、来週は自分の当番である。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

晩に際して混雑、復た沸く。吊燈(ちょうちん)晃々として、真に白日の如し。なお偸兒に備えて、中央にまた高床を設け、更に一南郭を出す。左顧右省、蚤を撮るの眼を為す。
※ 晃々(こうこう)- キラキラと光り輝くさま。
※ 偸兒(とうじ)- ぬすびと。
※ 左顧右省(さこうしょう)- 左を見たり右を見たりして、周りの様子を窺う。


雪に砕ける竹、返魂香、枕辺の臂(うで)、松落ちざる緑、曲同じくして音異るに、音同じくして節(ふし)(こと)なり。時に鬨聲(トキノコエ)を揚げ、挟むに邪許の聲(キヤリ)を以ってす。水潑し桶飛ぶ。山壑、将に頽(くず)れんとす。方(まさ)にこの時にてや。湯滑かにして油の如し。垢を沸かし、を煎ず。衣帯狼藉、脚の投ず容(ひろ)き莫し。蓋し、蚤と蚤相食らうことを知る。
※ 山壑(さんかく)- 山と谷。山谷。
※ 膩(じ)- あぶら。あぶらあか。
※ 衣帯狼藉、脚の投ず容(ひろ)き莫し - 着物と帯がとり散らかって、足の踏み場もない。


女湯のまた江海を翻す。乳母と悪婆、喋々談じ、大娘小婦聒々話す。飽(あ)くまで、隣家の富貴を罵(ののし)り、細かに伍閭の長短を弁ず。わが新婦を訕(そし)り、わが旧主を訴(うった)う。
※ 江海(こうかい)- 大河と海。
※ 喋々(ちょうちょう)- しきりにしゃべること。
※ 大娘(だいじょう)- おばさん。
※ 小婦(しょうふ)- 若い嫁。おめかけさん。
※ 聒々(かつかつ)- 人声が大きく騒がしいさま。
※ 伍閭(ごりょ)-(「伍」は、五人組(向こう三軒両隣)。「閭」は村。)御近所や町内。


金龍山の観音、妙法寺の高祖、併せてその霊験に説き及ぶ。隣家の放屁も論じて、遺(のこ)すこと無し。既にして、甲夜を報ず。爨奴、早く槽底に向いて、枘(セン)を脱す。数客闌入す。伴頭、急に止めて曰う、既已に漏(もら)せり。(ヌケマシタ)客曰う、大いに事を敗けると。(オヽシクジリ)沈吟して去る。
※ 柝(き)- 拍子木のこと。
※ 甲夜(こうや)- 五夜の一。およそ今の午後7時または8時から2時間をいう。戌の刻。初更。
※ 爨奴(れい)- 三助。風呂屋の男の使用人。燃料を集め,釜を焚き,また特に洗い場で浴客のあかすり、肩もみを行った。
※ 槽底(そうてい)- 湯船の底。
※ 闌入(らんにゅう)- 許可を得ずにかってにはいりこむ。乱入。
※ 既已(きい)- すでに。もはや。
※ 沈吟(ちんぎん)- 考え込むこと。
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