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「江戸繁昌記 ニ篇」 6 混堂(ゆや)4

(散歩道のタマスダレ)

午後、金谷宿大学、「古文書に親しむ」へ出かける。五輪のテレビ観戦で、皆、お疲れの様子。その五輪、男子400メートルリレーの銀メダルは感動的であった。

「江戸繁昌記 二編」の解読を続ける。

既にして女湯もまた発す。屐音班々、金振るい、玉砕く。横坊の声、妓、左(ひだり)に紫を褰(から)げ、新道の外妾、斜めに碧帯を垂れる。紅姉粉妹爨婢を連れて並び、伴公に就いて糠袋を買う。
※ 屐音(げきおん)- 下駄の音。
※ 班々(はんはん)- あざやかではっきりしているさま。(正しくは王偏に將、何とよむのか?)
※ 横坊(よこぼう)-「坊」は、方形にくぎられた町の区域。市街。まち。「横坊」は、横丁の意。
※ 裳(も)- 平安時代以後の女房の装束で、腰部から下の後方だけにまとった服。
※ 外妾(がいしょう)- 自宅以外に住まわせているめかけ。
※ 紅姉粉妹(こうしふんまい)- 紅と白粉の姉妹。
※ 爨婢(さんぴ)-「オサンドン」とルビあり。
※ 伴公(ばんこう)-(「公」は、人名の略称などに付いて、親愛の情、または軽い軽蔑の意を表す。)「伴公」で、「番頭」を指す。
※ 糠袋(ぬかぶくろ)- 糠を入れた布袋。肌を洗うのに用いる。


笑語喧鬨、湯中、一派の波を湧(わ)かす。一浴して出て、皆な外板上に在りて澡(あら)う。鶏卵の皮を脱するは、皓顔の紅を拭(ぬぐ)うなり。白蓮の漣󠄁(さざなみ)に濯(あら)うは、玉臂、粉を剔(えぐりと)るなり。惜むべし、瑠璃の露、江戸の水、(並匳漿)一洗して余香を滴(したた)らす。
※ 笑語喧鬨(しょうごけんこう)- 笑い声や喧しい声。
※ 皓顔(こうがん)- 白く汚れなく輝いている顔。
※ 玉臂(ぎょくひ)- 美しいひじ。玉のように美しいうで。美人のひじの形容として用いる。
※ 江戸の水(えどのみず)- 文化8年(1811)、式亭三馬が売り出した化粧水。
※ 並匳漿(なみれんしょう)-(「匳」は「くしげ」、櫛や化粧道具を入れておく箱。「漿」は濃い汗。)「いずれも、化粧水」の意。


思う、渭水(あぶらあか)の漲(みなぎ)らん。真に是れ一面の温泉宮。聞く、往時は男女同浴、混雑、別け無し。賢執越公に及びて、停止、別けならしむと。仰(あお)ぐべし。今、人の別湯に浴する者は、公の余沢に浴するなり。
※ 渭水(いすい)- 黄河支流の一つ。陝西省中央部を流れる川。流域の渭水盆地は中国古代文明の中心の一つで、秦・漢以来は「関中」とよばれ、歴代王朝の都となった長安(西安)がある。
※ 膩(あぶらあか)- 油じみてべたつく垢(あか)。
※ 温泉宮(おんせんぐう)- 中国陝西省西安の南東の驪山(りざん)にあった離宮、華清宮のことか。唐初に太宗が造営した温泉宮。玄宗が楊貴妃を連れてしばしば訪れた。
※ 混雑(こんざつ)- 物事が無秩序に入りまじること。
※ 余沢(よたく)- 先人が残してくれた恩恵。
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