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「甲陽軍鑑」を読む 22

(正月バージョンの大井川鉄道五和駅)

午後、女房と散歩に出る。最初に目指した、大井川鉄道の五和駅(無人駅)は地元のボランティアグループによって様々に飾られている。近所の人も何人か参加していて、思い付いたことは何でもやってしまうのは、何ともたくましい。今は正月バージョンで訪れる人を楽しませている。

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「甲陽軍鑑巻第十一下」の解読を続ける。「信長、家康、氏政、輝虎、批判の事」の項の続き。

さて、家康は海道一番と言いながら、日本に若手の武士なり。これに劣らぬ人も有るべく候えども、国を一国と持たざれば、大功(たいこう)なることなし。然れば、信長、家康を一つに押し絡(から)み、五、三年の内に信玄防戦を遂げ、仕様(しよう)を以って勝利を得べく候えども、信長、信玄には出で向うまじき事、口惜しく候。あわれ信長、対陣あれかしと仰せられ、次いでに惣別(そうべつ)、侍は必ず望みの有るを良き武士と申す。昔より近江の国を一国持ち、天下を望まぬ侍をば、近国の事は申すに及ばず、その身、家中より軽ろしめ、江州をもたせぬと申し伝えたり。
※ 大功(たいこう)➜ 大きな手柄・功績。
※ 防戦(ぼうせん)➜ 相手の攻撃を防いで戦うこと。
※ 仕様(しよう)➜ やりかた。方法・手段。
※ あわれ ➜ 強い願望を表す語。ぜひにも。どうか。
※ 対陣(たいじん)➜ 向かい合って陣を構えること。
※ あれかし ➜ ぜひともそうあってほしいと望む心を表す。
※ 惣別(そうべつ)➜ 総じて。概して。おおよそ。
※ 軽ろしめ(かろしめ)➜ 軽くみる。あなどる。見下げる。


信玄望みありといえども、若盛りに、信州強敵の、我れより老功なるに取合い、村上へかかれば、小笠原長時出で、諏訪へかかれば村上出る。伊奈の侍衆も、皆な剛の武士故、手間を取り候。信長も大敵・強敵は、今川義元、さては美濃衆、家康が強敵は同国三川侍、かようの強敵ばかりに、信玄若き時より今までも戦い候。上野(こうずけ)蓑輪(城)、長野信濃守父子にも、七年かかりて治め、今は信長、家康を敵に仕り候えば、信玄は、強敵、大敵に生まれつきたる弓取りなりとて、御寝所に入らせ給えば、各々も退出申すなり。

※ 村上(むらかみ)➜ 村上義清(むらかみよしきよ)。戦国時代の武将。北信濃の戦国大名。
※ 小笠原長時(おがさわらながとき)➜ 戦国時代の武将。信濃守護長棟の子。府中(松本)林城を居城として、安曇、筑摩、伊那三郡に勢力をふるった。
※ 上野蓑輪(こうずけみのわ)➜ 上野箕輪城。長野信濃守父子の居城。

(「信長、家康、氏政、輝虎、批判の事」の項終り)
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