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「竹下村誌稿」を読む 29 大井川 18

(城北公園から、雪いっぱいの富士山)

午後、駿河古文書会で静岡へ行く。早い時間に出席して、先輩会員と色々情報交換するのがとても楽しい。こちらの会でも、色々な方と構えずにお話し出来るようになってきた。年賀状で、金谷の古文書講座に誘った藤枝のKさん、参加してくれそうな感じであった。次回話を具体化して、事前に体験入会してみて、もらおうと思う。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

更科日記
田籠の浦は波高くて船にて漕ぐめり。大井川と云う渡しあり。水の色世の常ならず。すりこなど、濃くて流したらんように、白き水はやく流れたり、云々。

※ 更科日記(さらしなにっき)- 平安時代中ごろに書かれた回想録。作者は菅原道真の5世孫にあたる菅原孝標の次女菅原孝標女。平安女流日記文学の代表作の一つ。
※ 田籠の浦(たごのうら)- 田子の浦。
※ すりこ(磨り粉)- 米をすり鉢ですり砕いて粉にしたもの。湯でといて母乳の代わりとした。


西行物語
たゞひとり、嵐の風の身にしみて、うき事いとゞ大井川、しかいの波をわけ、なみだと露もおきまがう、墨染の袖、しぼりもあえず行くほどに、駿河の国、おかべの宿という所につきぬ、云々。

※ 西行物語(さいぎょうものがたり)- 西行の生涯を多数の歌をまじえて記した、鎌倉時代の物語。作者未詳。
※ しかい(四海)- 四方の海。世の中。天下。また、世界。(いずれも大げさな表現)
※ あえず(敢えず)- …しきれないで。


十六夜日記
廿五日(建仁三年三月)菊川を出でゝ、今日は大井川と云う河を渡る。水いとあせて、聞きしには違(たが)いて、わずらいなし。河原幾瀬とかや、いとはるかなり。水の出たらん面影、推し量らる。

   思い出づる 都のことは 大井川 幾瀬の石の 数も及ばじ

うつの山越ゆるほどにしも、あざり(阿闍梨)の見知りたる山伏、行き合いたり。夢にも人をなど、むかしをわざと、まねびたらん心地して、いとめづらかに、おかしくも、あはれにも、やさしくも、おぼゆ、云々。

※ 十六夜日記(いざよいにっき)- 鎌倉時代後期、藤原為家の室、阿仏尼が著わした旅行記。
※ あせる(浅せる)- 川や海などの水がかれる。
※ あざり(阿闍梨)-「あじゃり」とも。弟子たちの模範となる高僧の敬称。
※ 夢にも人を -「伊勢物語」のなかの歌、
   駿河なる 宇津の山べの うつつにも 夢にも人に あはぬなりけり
を受けて、「昔をわざとまねびたらん」と思った。
※ まねび(学び)- まね。まねごと。
※ めずらか(珍か)- 普通とは違っているさま。めずらしいさま。
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