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「竹下村誌稿」を読む 38 用水 2

(番生寺の秋葉社/旧金谷町の秋葉社・秋葉灯籠2)

写真は昨年11月21日撮影。番生寺の秋葉社は番生寺の大井神社境内にある。

草津白根山が噴火。本白根山の方で、3000年振りの噴火だという。スキー場が近く、雪崩も発生、死者も出たようだ。白根山系では無警戒の山だったようだ。いつも自然災害は、人間の予測を越えて来る。

夜、金谷宿大学の教授会に出席する。

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「竹下村誌稿」の解読を続ける。

その一例を挙ぐれば、元禄十一年(1698)十月用水堰入困難のため、代官所へ出せし書、左の如し。

      恐れながら書付をもって申し上げ候
一 当年、上井用水一円、揚げかね申すに付、天水を待ち、六月中までに植え付け申し候故、大分日枯れ仕り候。元来当村、土浅く砂地に御座候えば、水持ち悪しく、別して日損仕り候。その外、荒し置き候田地も御座候。御検分の節、河合仙右衛門様、委細御見分成され候通りに、御座候御事。

※ 天水(てんすい)- 空から降った水。雨水。
※ 日損(ひそん)- 旱損。ひでりの被害。


一 世間に勝れ、諸役など御座候間、田地耕作も成りかね、よって去る子年、困窮仕り候処に、当年、別して金谷助郷しげく、夏中は度々の満水に付、大代川、大井川筋へも限らず、昼夜罷り出で、その上、人別、家別、或は高掛り、日々井普請仕り候。かれこれ諸役などを以って、間日もなく相勤め、困窮致し候所に、当丑も夥(おびただ)しき日枯れ仕り候に付、当冬中の夫食並び麦種とも御座なく、迷惑仕り候事。
※ 満水(まんすい)- 水がいっぱいに満ちること。洪水。
※ 間日(まび)- ひまのある日。仕事と仕事の間の日。
※ 夫食(ふじき)- 江戸時代、農民の食糧のこと。
※ 迷惑(めいわく)- 困ること。(人のしたことで不快になったり困ったりする「迷惑」とは、少し意味合いが違う)


一 去年、麦作違(たが)い、秋毛は日損仕り、難儀に存じ奉り候所に、又々当年麦作散々違い申し候。か様に打ち続き、作毛悪しく、百姓渡世成りかね申し候。然る所、当立毛、大分日損仕り候に付、弥(いよいよ)以って、身命を送り申すべき様、御座なく候。殊更(ことさら)当村の儀は山林も御座なく、馬草、薪などまで御礼米を出し、その外、山畑御座なく候。かくの如く、何にても百姓勝手に罷り成り候事、御座なく、段々困窮仕り候処、当年の日損故、冬中の夫食も御座なく候間、来春は弥以って飢えに及び申すべくと、存じ奉り候所に罷り在り、御慈悲を以って、田地をも仕付け候様に、恐れながら願い奉り候御事。以上
※ 秋毛(しゅうもう)- 秋の作物。稲作のこと。
※ 作毛(さくもう)- 稲や麦など、田畑からの収穫物。
※ 渡世(とせい)- 社会の中で働きつつ生きていくこと。世渡り。なりわい。稼業。
※ 立毛(たちげ)- 田畑で生育中の農作物。主として稲についていう。
※ 身命(しんめい)- 身体と生命。自身のいのち。
※ 勝手(かって)- 暮らし向き。生計。
※ 仕付け(しつけ)- 作物を植え付けること。特に、田植え。


 元禄十一年寅十月       竹下村庄屋   八左衛門 ㊞
                   組頭   三右衛門 ㊞
                   同    勘左衛門 ㊞
                   同    忠右衛門 ㊞
                   同    喜平   ㊞
                   同    惣左衛門 ㊞
                   同    次郎馬  ㊞
    吉田弥市右衛門様


読書:「ほっこり宿 小料理のどか屋人情帖13」 倉阪鬼一郎 著
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