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峡中紀行上 1 峡へ行く次第

(昨日「県議選投票証明書」)

冬から春へ、季節の境目の雨が続いている。この2日ばかりは、春の嵐に警戒が必要だと、ニュースが報じている。遅れていたが、今日、「四国お遍路まんだら再び」の最終校正を印刷へ回した。後は、本が出来上がるのを待つだけである。

いよいよ今日から、荻生徂徠著の「峡中紀行 上」の解読を始める。最初は、徹底して(注)を多用したため、(注)だらけになってしまった。我慢してお付き合い願いたい。

  峡中紀行上
宝永丙戌の秋、余、省吾と、使いを奉(ぶ)して、へ適(ゆ)く。峡は藩の封ぜるゝ国なり。始め藩主、峡を封じ得るに、驩(よろこ)ぶこと甚し。計吏、往来する所の者を召して、先公家世旧邑営塁丘墳の、在るところ、咨詢するに、よく悉く睹記する者ある事なし。
※ 宝永丙戌(ひのえいぬ)- 宝永三年(1706)。
※ 省吾 - 徂徠の門人。
※ 峡(かい)- 甲斐の国。
※ 藩主 - 柳沢吉保。柳沢氏は甲州武田の旧臣で、武田勝頼滅亡ののち徳川氏に仕えた。甲州が柳沢氏の故地であったため喜んだ。
※ 計吏(けいり)- 国方より江戸の屋敷へ諸費用を届けに来る役人。
※ 先公(せんこう)- 先代の君主。ここでは武田氏をさす。
※ 家世(かせい)- 代々続いてきた家柄。また、その家の代々の人。
※ 旧邑(きゅうゆう)-「邑」は、諸侯などの領地。旧邑は武田氏の領地だった所。
※ 営塁(えいるい)- 土などを積み重ねて防御とした陣地。とりで。
※ 丘墳(きゅうふん)- 土を盛った墳墓。
※ 咨詢(しじゅん)- 参考として問い尋ねること。意見をきくこと。諮問。
※ 睹記(とき)- 見て、頭にとどめて忘れない。


寿蔵治城の北に営み、寺を建て霊台(後改め永慶)と曰(い)うに、自ら碑文を撰ぶに及び、記述するその所の山川の景象、皆使いを遣わして、図し致しければ、文成りて、その或いは、禹貢九江の議、貽(お)かんことを慮(おもんばか)るや。遂に今の命有り。時に邦乗及び晋書、梁書、南斉書の較讎(かな)い畢(おえ)る。
※ 寿蔵(じゅぞう)- 生前に自分で作っておく墓。
※ 治城(ちじょう)- 治めている城、ここでは甲府城。
※ 景象(けいしょう)- 景色。
※ 禹貢(うこう)九江の議 -「書経」の中の一編。伝説上の聖王禹が、全国を九つの州に分け、各地の山脈・水系・地理・物産を調査し、貢 賦の制度を定めた事跡を記したもの。
※ 邦乗(ほうじょう)- 邦の史書、歴史。
※ 較讎(こうしゅう)- 文章や字句を比較照合して、誤りをただすこと。校正。校合。
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