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塵摘問答 21 神楽

(裏の畑のニラの花)

塵摘問答の解読を続ける。

(神楽)
一 男問いて云わく、神楽(かぐら)という事は、誰人の始め給い候や。

老僧答えて云わく、それ神楽は地神五代の始め、天照大神、日月を奪い取り、天の岩戸へ引き籠り給いての時、国土暗闇になりにける間、大力王(手力男、てぢからお)と言いし人、方便を廻らして、神楽という事を巧みて、岩戸の前にて舞わせられければ、天照大神あら面白やとのたまい(宣)て、少し岩戸を開け給いしかば、また大力王、やがて岩戸に打ち入りて、日月逆(さか)に掴んで出でにける。
※ 地神五代(ちじんごだい)- 天神七代に続き、神武天皇以前に日本を治めた五柱の神の時代。すなわち、天照大神・天忍穂耳尊(あまのおしほみみのみこと)・瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)・彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)・草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)の五代。

大力王はその時より日たきそんの明神と齋(いわ)われて、紀伊の国の山東という在所に現われ給う。
※ 日たきそんの明神 - 紀州名草郡山東荘伊太祈曾(いたきそ)村に伊太祁曾明神がある。現在の和歌山市伊太祈曽、伊太祈曾神社。

さる程に、神子の舞いけるは、三身円満の姿なり。振る鈴の響きは常夜の眠りを覚ますなり。五人の神楽獣五智の如来なり。八人のやおとめは八大会の徳をかたどるなり。打つ太鼓、つづみの音は生死(しょうじ)の夢を覚ます儀なり。突拍子のさつ/\の声は、天地和光にして、神穏やかなる躰なり。神楽はこの時よりぞ始まり候
※ 三身円満(さんみえんまん)-(仏語)三身が完全に具現していること。「三身」とは、大乗仏教で説かれる三種の仏身。法身・応身・報身。
※ 常夜(じょうや)- 夜の間じゅうある現象や状態が続くこと。
※ 神楽獣(かぐらおのこ)- 場を盛り上げる獣による演芸。
※ 五智の如来(ごちのにょらい)- 密教で五つの知恵(法界体性智、大円鏡 智、平等性智、妙観察智、成所作智)を五体の如来にあてはめたもの。金剛界五仏のことである。
※ やおとめ(八乙女)- 神社に仕えて,神楽などを舞う八人の少女。転じて,神楽の舞姫の意にも。
※ 大会(だいえ)- 大規模の法会。大法会。「法会」は仏法を説くためや供養を行うための僧侶・檀信徒の集まり。
※ 突拍子(とひょうし)- 太鼓などの拍子を変えて打つ奏法。
※ 和光(わこう)- 光をやわらげること、また、やわらかな光。
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