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塵摘問答 12 地震、渡り橋、六地蔵

(散歩道の松葉牡丹)

塵摘問答の解読を続ける。

(地震)
一 男問いて云わく、地震とて、大地の揺るぐは如何なるゆえ候や。

老僧答えて云わく、地震の謂れは、五、六年も、さして聞き給わずば、申し尽くし難く候。さりながら、あら/\語り申さん。

地震というは、龍神動、火神動、金日鳥(金翅鳥)動、帝釈動と申して、二十四動、かわり/\に動けば、太地揺るぎ候。また四種一同に震動すれば、天下は破れ果つべきなり。
※ 金日鳥動-金翅鳥動。金翅鳥(こんじちょう)はインド神話・仏典に見える想像上の鳥。八部衆の一つ迦楼羅(かるら)とは別のものであったが,同一視されるようになった。

さる程に、帝釈動が揺る時、天下は不佞なるといえども、揺らぬにはしかじとて、帝王、国司、臣下の大事にて候。
※ 不佞(ふねい)- 才知のないこと。

龍神動が揺る時は大水、大風に立つなり。火神動が揺る時は、大旱(ひでり)に立ち候て、五穀に実入らず候。

金日鳥動が揺る時は、大兵乱起って挙兵流布し候なり。詳しくは智度論に見えたり。
※ 智度論(ちどろん)- インドの仏教者龍樹の著。鳩摩羅什が漢訳。


(渡り橋)
一 男問いて云わく、渡り橋は誰人の所立てにて候や。

老僧答えて云わく、作人なく候。たとえば、震旦国を越えて、天竺へ渡り候口に、流沙川とて、長さ八千里有り。その川の横に、三世の諸仏集まり給いて、石の橋を架けられたり。則ち、石の橋と書きて、しゃっきょう(石橋)と読むなり。人、せいしどうとも申す。我朝にては伊勢の宇治橋が最初にて候。いずれも橋はせいしどうと申すなり。
※ 流沙川(りゅうさがわ)- 唐と天竺の境にあるといわれる川。
※ 三世の諸仏 - 過去・現在・未来の三世にわたって存在 する一切の仏。
※ せいしどう - 下線の「せいしどう」がどんな字を書くのか不明。


(六地蔵)
一 男問いて云わく、六地蔵は一仏にて候や。また別々にて候や。

老僧答えて云わく、六地蔵は本地一体にて候えども、衆生済度の方便に六道の主(あるじ)となり給う。

一体はミョウヒ地蔵と申して、錫杖持ちて無間地獄を救い給うなり。一体は無二地蔵と申してほんかんを持ちて餓鬼道の苦患を救い給うなり。一体はシャリサン地蔵にて、数珠を持ちて畜生道の苦患を救い給うなり。一体は諸龍(しょうりゅう)地蔵とて、鉾を持ちて修羅道の苦患を救い給うなり。一体はソク地蔵と申して、衣を持って人道の苦患を救い給うなり。一体は福力地蔵と申して、手を合せて天道の苦患を救い給うなり。
※ 苦患(くげん)- 地獄におちて受ける苦しみ。
※ ほんかん - 下線の「ほんかん」が何を示すのか不明。
※ 六地蔵にはいろいろな呼ばれ方があるが、下線部分の呼称は見付けられなかった。

かくの如く、六道はおわしまし候えども、皆な一体にて候なり。
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