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塵摘問答 8 八宗、酒、戒酒


(散歩道のムラサキシキブ)

塵摘問答の解読を続ける。

(八宗)
一 男問い云わく、八宗の渡る次第はいずれ/\にて候や。

老僧答えて云わく、一番に法相(ほっそう)宗渡る。二番に三論(さんろん)宗渡る。三番に倶舎(くしゃ)宗渡る。四番に律宗渡る。五番に成実(じょうじつ)宗渡る。六番に華厳宗渡る。七番に天台宗渡る。八番に真言宗渡る。これ八宗というなり。この外、二宗有り。禅宗、浄土宗これなり。合わせて十宗とはこれをいうなり。
※ 八宗 - 南都六宗(法相、三論、倶舎、律、成実、華厳)に最澄の伝えた天台宗、空海の伝えた真言宗を加える。


(酒)
一 男問い云わく、酒と云いて、米を腐らかして、これを吸い楽しむは、いかなるゆえ候や。

老僧答え云わく、昔、天竺の大転輪聖王の御時、天より甘露降り下り、これを延命水と名付け、その後、転輪聖王の御時、マカシャリブ人と云う人、酒を造り始めたり。その年が癸(みずのと)の酉の年なる間、酒と云う字は、さんずいに酉と書くなり。
※ 転輪聖王(てんりんしょうおう)-古代インドの伝記上の理想的帝王のこと。単に転輪王または輪王ともいう。この王が世に現れるときには天の車輪が出現し,王はその先導のもとに武力を用いずに全世界を平定するとされる。

天竺のしゅこ(酒戸)と云うものが釈迦仏に伝え申し、その後震旦へ渡し、その後日本へ渡るなり。これにより酒呑む人は利根知恵ありと承りて候なり。
※ しゅこ -(「酒戸」ならば)酒屋。
※ 利根(りこん)- 生まれつき賢いこと。口のきき方がうまいこと。


(戒酒)
一 男問い云わく、それ程めでたき物を、何とて仏は御戒め候や。

老僧答え云わく、釈尊の御弟子にしゃかた比丘という人、酒を多く呑み、泥の中に伏しける。仏御覧ずれば、胸のあたりにひる(蛭)が多く食い付いてあり。仏悲しく思し召して、水掛けて御洗い候えば、仏の御かしら(頭)を踏みたり。
※ 比丘(びく)- 出家して、定められた戒を受け、正式な僧となった男子。僧。
※ 泥の中 -「泥酔」とはこのことをいう?


その時、仏のたまわく、今日より以後、まったく我弟子に酒呑むべからず
とて、五戒のうちに入れ給い、堅く御戒め給うなり。まことに/\酒呑み候人は、気を破り、いさかい(諍い)を招き、ことを欠き、罪を作るもとい(基)なり。
※ 五戒(ごかい)- 在家の信者が守らなければならない基本的な五つのいましめ。不殺生・不偸盗・不邪淫・ 不妄語・不飲酒(ふおんじゅ)の五つ。
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