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塵摘問答 17 登り梯(後)、王の数

(散歩道の葛の花)

葛の花は繁茂する蔓の陰に隠れてなかなか見られないものだが、橋の欄干に伸びた蔓から、その咲く姿がしっかりとデジカメに撮れた。

塵摘問答の解読を続ける。「登り梯」一昨日、昨日の続きである。

(登り梯 後)
さる程に、そのときは難波の京なれば、御門も、公家も、大臣も、難波に帰らせ給いて、程なく、二月晦日(つもごり)に、八つの日輪を召し登せられければ、たけ一丈五尺の烏なり。尾羽は一丈六尺、は二尺八寸なり。
※ 嘴(はし)- くちばし。

さても烏を悉く首を切らせて見給えば、二寸四方の玉一つずつあり。その中に、一寸六分の釈迦仏一躰ずつあり。これをば八つながら御門へ召され、一つをば尾張の熱田の宮に籠め給う。一つは伊勢の外宮(に)籠められたり。一つは紀伊の国、日前の宮に籠め給う。一つは信濃の国、諏訪の社に籠め給う。一つは豊前の国、宇佐八幡に籠め、一つは逢坂の明神に籠め給う。一つは住吉の二の神殿に籠め給う。一つは御門の宝物に納まりたり。
※ 日前の宮(ひのくまのみや)- 和歌山市にある、紀伊国一の宮。名草宮とも呼ばれる。
※逢坂の明神(おおさかのみょうじん)-大津市、逢坂の関の明神。


すなわち、この烏は第六天の魔王なりしが、国土を治めんための方便に生じたるなり。また八つの烏の死骸をば天王寺の北なる玉造という所に、地の下四町、そこに埋まれたり。京の町に烏丸と申すはその塚をかたどるなり。さてかの射手には坂東八ヶ国を給わるなり。占いたる相人には御引出物、数を知らず。
※ 第六天の魔王 -(仏語)仏法を害し、人心を悩乱して智慧や善根を妨げる悪魔。欲界の第六天、すなわち他化自在天の主である波旬とその眷属をいう。

登り梯と申すは、この時よりぞ、始まりたり。さる程に梯の子丁にはせぬなり。半にするといえり。
※ 梯の子(はしのこ)- はしご・階段の一つ一つの上り段。
※ 丁~半~ - 丁は偶数、半は奇数。段数を奇数としたことをいう。


(王の数)
一 男問いて云わく、三千大千世界に、王の数いかほど御座候や。
※ 三千大千世界 - 仏教の世界観による広大無辺の世界。

老僧答えて云わく、三千大千世界と申すは、五百の中国と、震旦とを中千界と言えり。一万の小国と、無量粟散国と、その他、我が朝を合せて小千界と申すなり。
※ 無量(むりょう)- はかることができないほど多いこと。
※ 粟散国(そくさんこく)- あわ粒を散らしたような小国。


さて王数は、五天竺に一万千九百二十王あり。五百の中国に、五千王あり。一万の小国に百王あり。無量粟散国には一王もなし。震旦には七御門有り、また粟散国の他にて候えども、我が朝には一王まします。以上合せて一万七千二十八王にて候なり。
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