平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
今夜、「はやぶさ」が帰還する
日本人の自信を喪失させるマイナス報道が多い中で、小惑星探査機「はやぶさ」の執念とも思える帰還劇は、ワールドカップの華々しいニュースの陰に隠れているけれども、久々に日本人の誇りを取り戻させる明るいニュースである。今夜11時前に大気圏に突入したというが、小惑星「イトカワ」の土壌が入っている可能性があるカプセルの回収には至っていない。
小惑星探査機「はやぶさ」は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究チームによって、平成15年5月9日に、それほど注目されることも無く、打ち上げられた。太陽系の火星と木星の間に、数十万個あると云われる小惑星の一つ「イトカワ」に着陸し、土壌の採取して地球に持ち帰るのが「はやぶさ」のミッションであった。
小惑星は惑星になり損ねた小さな星々で、太陽系の誕生する頃の記録がそのままの形が残っていると言われている。「イトカワ」は日本のロケット開発の父と呼ばれる故糸川英夫博士の名を頂いた小惑星である。
「はやぶさ」には世界初めての技術がたくさん搭載されて、探査機の運行そのものがすべて実験航行だった。例えばキセノンという気体をイオン化し、電気的に加速して噴射する(理解不能)、効率の大変良いイオンエンジンを採用した。また通信が到達するのに40分掛かる遠い小惑星まで行くと、遠隔操作で探査機を動かすことは不可能になり、カメラやレーザ高度計のデータをもとに、探査機が自ら判断して航行する「自律航法」が不可欠になる。探査機そのものがロボット化されることが必要であった。
その結果、「はやぶさ」には数々のトラブルが発生して、その都度、ロボットと研究者の指示が一体化して、危機を乗り越えてきた。中でも最大のトラブルは、往路ですでに三つある姿勢制御エンジンの二つまでが壊れてしまったことと、復路で太陽に向けた姿勢が180度かえってしまい、太陽電池の供給が出来ず、通信が途絶えて、1ヶ月半に渡って探査機が迷子になったことである。
今回の帰還は奇跡と言ってもよい快挙であろう。世界の惑星探査史上、月以外の天体に着陸した探査機が地球に戻ってくるのは初めてといい、わずかな予算でこんなに小さな探査機が大きな成果を上げたことに世界は驚いている。
直径40センチメートルのカプセルの中に土壌を取り込むためのミッションは失敗したが、探査機の着陸時に舞い上がった土壌が入っている可能性はあるという。もし、砂粒でも入っておれば、地球以外の天体の地表試料の回収は「月の石」以来の快挙となる。
大気圏への突入に際して、探査機本体はカプセルを放して役割を終えると、3千度に達する高温に燃え尽きてしまう。「はやぶさ」はネットの世界では人格化されてたくさんの応援メッセージが飛び交っているという。満身創痍になりながらミッションをやり遂げて、自らは燃え尽きる。日本人好みのヒーローで人気が高まるのも当然である。
明日は青いカラスがカメレオンに挑戦する。はやぶさの次はカラスの活躍を応援したい。
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