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「紙芝居」 ~昭和の一風景~

2016年02月18日 | 昔回想
もう10年近く前だけど、テレビで今はもう殆ど居なくなってしまった
“紙芝居のおじさん”がまだ活動しているところがある、っていう
番組をやってたのを観たことがある。その場所は自分の地元、都島区だった。
モロに知っている場所が映ってたのでかなり興味深く鑑賞した。
…でもさすがに今は見かけないなあ、絶滅してしまったかも。

自分がそう、小学1~3年生くらいの頃、友達と公園や民家の横の路地みたいな
所で遊んでると、自転車に乗った“紙芝居のおっちゃん”をよく見かけた。
いつも同じ人で、“おっちゃん”、と云うよりもう“おじいちゃん”くらいの
年だったような…。自転車はよくある昔の大きい、ドロップ型ライトの付いた
タイプで、ブレーキレバーもチューブに繋がっているのではなく
一体のままハンドル軸の辺りまで来てて、金属ロッドでブレーキに繋いである
感じの。でスタンドは4箇所で地面に立つすごくガッチリしたやつで、
後輪の辺りを思い切り上に持ち上げながらガチャッとかけるヤツだ。
だからスタンドの地面に擦る部分には小さい車輪が付いてる。
もっというと、よく売りに来る豆腐屋さんとかが使ってるのと同んなじヤツ。
…あー、“売りに来る豆腐屋さん”自体、今はいないよなあ。

その自転車の荷台に小さいタンス、ともいえる引き出しのいっぱい付いた
木製の箱が積んであって、テッペンの面全体が蓋のように開けられるように
なっている。開けるとからくりの様にカタン、と紙芝居の画面が垂直に立つ
仕組みになっているんだ。おっちゃんは辺りに子供が多数居るのを
確認するが早いかその“移動式紙芝居劇場”を素早く組み立てる。
子供もそれを見ると自動的に周りに集まってくる。
ただ暗黙の了解があって、そのまま只で紙芝居が見れるわけではなく、
おっちゃんはそこでまず駄菓子を売り始めるのである。
つまり自転車紙芝居の正体は外回りの駄菓子屋さんと云う訳だ。
誰が教えられたともなく、子供は皆駄菓子を買ってそれを食べながら
紙芝居を見物するというシステムを心得ていて、たまたまお小使いを
持ってる子は駄菓子を買い、それを見るや慌てて家にお小使いを
もらいに走る子や、中には諦めていじけて帰る子もいたりする。
別にお菓子を買わずに紙芝居だけ見ていた所で「あんたは帰りなさい」
とまで言われないけど、一応子供なりに“タダ見”の後ろめたさはあるのである。

で、売ってるお菓子はどんなかというと、殆どの子供は開口一斉に
「おっちゃんパリパリー!」と叫ぶ。
…“パリパリ”とは切手よりやや大き目の板状に加工された砂糖菓子で、
うーん、名前を知らないのだけど見た目にはラクガンのもっとキメの細かいヤツ、
というかデコレーションケーキの上に載ってる飾りの材質に近い。
厚さは1ミリくらい、色は淡いオレンジや緑で片方の面に細いミゾで
動物やら何かの絵が描いてあり、それが細かい粉にまぶさって紙に包まれている。
価格は10円。
お菓子は全てタンスの引き出しに詰まっていて、それを皆に配り出す。
そのままぱりぱり食べてしまってもいいが、コレを買うメリットは他にある。
皆んな何をしだすのかというとこの動物の絵を一生懸命ミゾに沿って形に
切り出し始めるのである。上手く形通りに切り出せるとソレをおっちゃんに申請。
すると更に高い、30円くらいの駄菓子がもらえるのだ。
しかし絵柄にも当たり外れがある。ランダムに渡されるのでどんな絵に当るか
紙を開けるまで分からないのだ。“亀”みたいに比較的太い形で
抜き易いのもあれば、“フラミンゴ”みたいな絶望的なやつもある。
そういう場合は「おっちゃん替えてー」と1回だけチェンジ可能。
それも裏目に出て更に無慈悲な形に当ってしまう事もしばしば。

さて、周りの子を観察すると形の抜き方には2通り確認できた。
1つは指で少しづつペリペリ割って残していく方法。
もう1つはミゾの無い裏面をゆっくり舐めて切り出す方法、ミゾの僅かに
繋がった部分を溶かして自然に分かれるのを狙った方法である。
前者は比較的簡単な絵だった場合、後者はフラミンゴみたいな絵に使う手だ。
…でヘンな所から割れてしまうと諦めて食べる。成功すると30円のお菓子だ。
記憶の限り、過去成功した友達は1人しか覚えていないけど。
もちろん自分も上手く行ったことがない。今思うと30円のお菓子に
そこまでの労力使うかよ、と子供の熱血加減に感心する。
その他のメニューは主力としてぺらぺらのウエハース状のせんべいに
どろっとしたソースを挟んだ“ソースせんべい”とか、このソースの代わりに
練乳が挟まってるのとか。割り箸につけた水飴もあった。
水飴は二本の割り箸で透明の飴とカラフルな粉を練り合わせ、
乳白色の綺麗な色にして食べる楽しみがあり、コレは後に“ねるねるねーるね”
とか云う製品の原型になったと思う。…共に確か20円かと。
因みに30円のお菓子はこのせんべいにドロッとした汁の付いた昆布が
挟まったヤツ。食べた記憶は無いけどあれは多分美味しいぞ。
まだ他にもあったかも知れないけど憶えていないなあ…。
でも大体は普通の駄菓子屋に売ってるようなものよりもっとチープな、
いくら食べても腹の足しにはなりそうにない軽い食材ばかりだった。

肝心の紙芝居の方は、なんかそのおっちゃんの考えたオリジナルの内容で
確か「(頭部分不明)…キン坊」とかいう題名だった。
坊主頭の少年が主人公でギャグのような、道徳っぽいような、勉強にも
なるような、1~2分くらいで終わるような内容の短い話である。
絵も当然おっちゃんの作で綺麗な色で仕上げた原紙だ。
当時コピー機も無かったしね。
…でその漫画だけじゃなく“とんちクイズ”もセットになってて、
絵と文字の組み合わせなんかを見せながら「はいこれ何と読む~?」
とか問題が出ると解った子は「なんとかー!!」とか答えながら
手を出す。当ってたらその子にまた駄菓子をくれるワケだ(笑)。
だいたいこんな流れだったかなあ。
家にテレビが1台あったか無かったかの、「バリバリの昭和」話である。
でもバカにしちゃあいけない、あの昔テレビアニメになってた
「黄金バット」は最初はこの移動紙芝居のネタだったそうである。

(卓上のモデルはその当時人気商品だった「宇宙戦車アトラス」)
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2 コメント

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私は見た事ないのですが (絹崎)
2016-02-20 15:15:32
きっと、たぶん、その自転車は「ウエルビー号」。
返信する
絹崎さんこんばんは (カシメルマン)
2016-02-25 19:05:23
おそらく「ウェルビー号」ですね!
流石にウェルビー号は無いですが
最近でもこのドロップ型ライトの付いた
自転車を見かけるので結構欲しかったり
します。でもなんか他のタイプより
決まって高価なのよなあ~。
返信する

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