2013-2014シーズン聴いたコンサート観たオペラはこちらから
2013-2014シーズン
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2014年8月28日(木)7:00pm サントリー
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(プログラム前半)
木戸敏郎、佐藤信プロダクション
シュトックハウゼン作曲 リヒトから、歴年(1977)
雅楽版、新演出 57′
キャスト( in order of appearance)
1.プレイヤー、(省略)
2.奉行、西村高夫 (*レフリーに相当)
3.舞人、松井北斗
3.舞人、笠井聖秀
3.舞人、山田文彦、
3.舞人、小原完基
4.天使、(映像のみ)
4.悪魔、(映像のみ)
5.四つの誘惑と煽揚、他、(省略)
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音楽監督、木戸敏郎
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(プログラム後半)
一柳慧 時の佇まい、雅楽のための world premiere 23′
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プレイヤー、前半プログラム同様他
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シュトックハウゼンのオペラ、初めて見ました。プログラム解説を読んだり、後で知ったことなどをまじえながら。
一度見てしまえば比較的シンプルで、百聞は一見にしかず、とはよく言ったもの。でもやっぱり強烈なインパクト。ストーリー付きのオペラというよりも、何か素材があってそれがそのまま舞台に転がっている感じ。でも、原始的というものでは全くなくて、逆に、作為の極致ということです。4ケタのデジタル年数の進行速度に合わせた舞が奇天烈。一桁目が一番早く、4桁目の千年は動いているかどうかわからない微妙なもの。1桁目が回転して桁あがりして10桁目に、そして100桁目、千桁目と同じ具合に。それぞれのテンポに相応しい速度で舞人が舞う。うぁあ、強烈なインパクト。
年数の表示はデジタルだが、動き回転はデジタル風味の正確なものではなく動いたり止まったり、途中4つの誘惑的なエピソードがはいり、それに興味は示すものの引きずられることなく、また、進行する。それは天使と悪魔の励ましと煽りによる。また聴衆の拍手の励ましもいる。
天使と悪魔はP席にある幕に都度映し出される。現実感があまりないが、出てくるときのサウンドとよくマッチしている。映像なのでフラットな感覚が和風なプロダクションをあまり刺激することもない(というかほぼ目立たない)。
4つのエピソードは洋風なものなのでそれとのかけ離れた異種風味が面白いと言えるかもしれない。雅楽の中に花束男とかコック料理とかクラクションバイクとかストリップガールとか出てくると全くのアンマッチではあるがミスマッチという感覚は無い。シェーンベルクは音を壊したけれども構造はママだった、というあたりのことを思い浮べてしまうというのはある。この日の演出コンセプトはシュトックハウゼンのものを普通に踏襲したものかどうかわからないが、アンマッチの対比感は面白いものであるが、それは意図するしないにかかわらず、本来狙うべきものでもないという思いも、別の一面として無くは無い。まぁ、芸術への一つ目のとっかかりとして興味本位的な要素にひかれてはいっていくというのも別に悪い話ではないので、このような実験工房的フレキシビリティが今の時代の東京メトロポリタンで可能であったということでそれ自体評価されるべきものであると思います。まして翌々日には洋楽版が控えており、二日あわせて一大イベントあることは言を俟たないだろう。
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和楽器の音は高音主体で、またハーモニーとは別の世界、絹糸が何本も別々に揺れ動くような趣き。太鼓の音はでかいがこれはいたしかたがない。こうゆうものだ。バランスとは別の調和があるというもの。もともとがどのようなスコアでこのような和楽器の演奏譜になるのか全く分からないことだらけなのですが、妙に深遠というか想定外の奥行き感みたいなところがあり面白かった。
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総じて振り返ってみるに、レフリーに相当する奉行の最初の口上、これがおそらく10分以上続いたはずで、圧倒的なものであったように思います。結果、1時間近い演奏で4つ誘惑エピソードそれ自体は短いもので、この口上が10分以上かかったことは全体演奏時間配分的に計算されていたものではなかったのでしょうか、エピソード間の演奏時間は10分ぐらいずつになりバランスしている。それらエピソード間は間奏曲風にならず、これ自体が非常に主体性をもった自己主張する音楽となっており聴いていて圧巻だったわけです。充実の音楽だったように思います。オペラとしての動きの劇、そして構成された進行音楽あわせ、感服の唸りが思わず出てしまいました。
ありがとうございました。
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以下の解説を参照
http://www.suntory.co.jp/sfa/music/summer/2014/producer.html
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補足:シュトックハウゼンのインパクトがずっと継続してしまい、休憩20分あったものの後半の一柳の曲は覚えていません、失礼。