河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

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OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

934- 10年前に閉店した六本木ウエイヴRoppongi WAVEの思い出

2009-11-29 11:40:40 | 六本木にて

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●(再掲編)
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ちょうど10年前の11月この時期、一枚の葉書が舞い込んできた。
翌月12月25日で慣れ親しんだ六本木のWAVEがクローズする。12月4日から3週間セールをするので最後の別れをということだった。
1983年の開店当時のことは国外左遷にあっていたので知らない。だからWAVEのことは途中からしか知らないが、当時の六本木で、WAVEは唯一芸術の香りのするオアシスだった。俳優座のことはよく知らなかったし、そもそも三河台の信号の方に足が向いたこともなかった。WAVE以外はもっぱら乃木坂方面での活動が活発ではあったが。

1999年12月25日(土)六本木WAVEは閉店した。
日比谷線六本木駅で降り、端の階段を駆け上がり、六本木通りを渋谷方向に向かうと麻布警察があり、その先に日産のビルがありその先隣りの円筒形のビル。エレベータを4階で降りると、右側がジャズコーナー、左側がクラシックである。何度かレイアウトが変わったが、同じフロアにジャズとクラシックがあるというのは、レイアウト変更前の銀座の山野楽器、渋谷のHMVなども同じスタイルだ。河童はジャズとクラシックは全然違うものだと思うけど、両方好きという人は割と多い。とくにオジサン系に。
フリードリッヒ・グルダは真剣にジャズに取り組んでいたのだろうか。単なる息抜きではなかったのか。そんな気持であったなら別に聴きたいとも思わない。ジャズは内部から湧き出る感情である。全部即興といってもいいし、細部の異常な拡大音楽と言い換えてもいい。とにかくそのような感情の流れをしっかりと受けとめて聴くものだ。やるほうも真剣勝負でなければならない。リコのために、のような甘いメロディーから始めて、その後ジャズを通過しただけだったのでは無いだろうかと感じる。
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それで、左側がクラシックコーナー。そんなに大きなスペースではないが、そんななかにモーツアルト・ハウスがある。少し間仕切りされていて、いい感じであった。そのあとその一角はオペラや歌のコーナーになった。記憶の流れが不確かだが、このようなスタイルがWAVEの特徴だった。
クラシックコーナーは完全に多品種少容量のポリシーとみた。塔のお店みたいに同じ商品をダラダラならべることもなくコアな品が揃っていた。渋谷の東急本店通りのビルの1階のコーナーにつつましくあったHMVなんかもその頃はやはりうぶだった。ついでに、当時東急本店の裏にオーチャード・ホールを含む文化村はなかったので今みたいに、文化村通り、という名前にはなっておらず、東急本店通りと言った。どっちにしろ東急の通りにちがいはないが。
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六本木のWAVEだが、12月になり閉店セールが始まった。日を追うごとにだんだん安くなっていくのである。ある日河童も悪友と禿鷹のごとく漁りにいってみた。でもいいものはもうない。賞味期限が切れてなくて安くできないものや、売れ筋ではない初期のオペラなどがなんとなくならんでいる。これは河童の出番だ。
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河童「このデニス・ブレインのセット物はなんで定価なんだ。」
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店員「はい。まだ賞味期限が切れていませんので。」
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河童「割引してくれたら買う。」
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店員「だめです。」
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河童
「河童の記憶によるとこのなかの1枚は、別のシリーズでも出ていて、そっちのほうは賞味期限が切れているはずだ。だからこのボックスは丸ごと安くしても法律違反ではないはずだ。」
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悪友「おぉ、そうだそうだ。」
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店員「。。。。」

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河童「なぁ。」
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店員「少々お待ちください。」
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店員B
「お河童さま。お待たせしました。お河童様の言う通りでございました。割引対象でした。」
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河童「で、5割オフだろうね。」
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店員B「。。。。。。はい。そうでございます。」
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こうやって河童はデニス・ブレインの12枚セットものを格安で手に入れたのだった。
1954年ルツェルンの第九でフルトヴェングラーのもと,ホルンを吹いていたブレインはフィルハーモニアのオケCDで割と聴くことができる。しかしソロの味はやはり格別である。カラヤン好みと言われる前からやわらかで滑るようなビロードの音、境目のないフレーズ。やはり素晴らしかったのであろう。しかしその夭折は車とともにあっというまにやってきてしまった。今日の割引価格は長年お世話になったWAVEへのお返しだ。

ほかにはグルックやヘンデルのオペラなど売れ筋でないものを買い、ナップサックに入れて帰った。
はずだった。
しかしここは六本木だった。

河童の皿を潤さなければならない。河童用のアルコールで皿を洗い、五臓六腑にしみわたった頃には、CDの割引価格など意味もなくなるぐらい酩酊河童になっていた。

WAVEは、今の六本木駅からバブルヒルズビルへ通る地下通路のあたりに位置していた。
WAVEにCDを買いに行こう」というのは合言葉であり、CD買いは口実。そのあとの一次会は河童好物の〆た鯖がうまい行きつけのおばんざいでおいしいものを食べながら買ってきたCDを悪友と見せっこする。変かもしれないが。
今はその行きつけのおばんざいのお店もなくなってしまった。ミッドタウンのせいだ。
昔は防衛庁の正門には、夜中、自分の番号のタクシーを探し回る河童連中、そのタクシーの山々、見事なバブル状態で、酩酊河童は自分のタクシーが見つからないときは、正門に向かって美声の君が代をはなむけし、さらに悪酔いし、角の公衆トイレの横にいつも立つおでんの屋台で好物の紫蘇巻を全部平らげてほかの客に迷惑をかけたりしていた。
その正門も屋台もミッドタウンや大江戸線の出入り口となり全てが露と消えた。
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バブルヒルズビル、バブルタウンができたせいで、我らの楽しみはひとつひとつ消えていってしまったような気がする。

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