オペラパレスでの2009年ラインゴールドの上演ですが、初日にいったのですが、また観てしまいました。
新国立劇場のラインゴールド5回公演のうち4回目に行ってきました。
キース・ウォーナーのプロダクション再演です。
2008-2009聴いたコンサート観たオペラはこちら。
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2009年3月15日(日)2:00pm
オペラパレス、新国立劇場
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ワーグナー/ラインの黄金
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キース・ウォーナー プロダクション
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ヴォータン/ユッカ・ラジライネン
ドンナー/稲垣俊也
フロー/永田峰雄
ローゲ/トーマス・ズンネガルト
ファーゾルト/長谷川あきら
ファーフナー/妻屋秀和
アルベリヒ/ユルゲン・リン
ミーメ/高橋淳
フリッカ/エレナ・ツィトコーワ
フライア/蔵野蘭子
エルダ/シモーネ・シュレーダー
ヴォークリンデ/平井香織
ヴェルグンデ/池田香織
フロースヒルデ/大林智子
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ダン・エッティンガー 指揮
東京フィル
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初日の席1階ど真ん中と異なり、今日は2階右手わりと前方。
そのためWALHALLのネオンは全く見えず。そのかわり、オケピットが丸見え。
100人超と思われる大人数が所狭しとならんでいる。壮観。
それに加えピットの最後方にはハープが6台、デンと構えている。これも壮観。
そして明かりが落ちる前に、エッティンガーがポウディアムに向かい、サスペンダー状態で座っている。
明かりが落ちてから入場し、一拍手あってから最初の音を出すより、暗くなった状態でそこから音が湧き出てくる。このほうがラインゴールドには効果的かもしれない。
幕が上がり、そして音がラインを生成する。
映写機の強烈な光が客席に突き刺さる。席によっては眩しすぎてなんの光かわからないが、右手からみていると、映写機の光、そして映写機の向かって右側にヴォータンが座っている。
まもなく、地下から映画の幕のようなものが上がってきて、そこに川、水流が映し出される。
今度は観客席のようなものが出てきてその映し出されたものをラインの乙女が他人事のように見ている。
縫いぐるみの乙女、そして、同じく縫いぐるみのマスクをしたアルベリヒの登場。
といった始まり。
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エッティンガーの棒のことは、以前書いた。
個人的には、バレンボイムはワーグナーが歩いているようにしか見えないが、そのバレンボイムと手さばきが瓜二つ。腕を伸ばし、左手の指を伸ばし、肘を折らないで、ポイントをついていく振り方。そっくりだなぁ。。
真似ているからといってそれが悪いということはなく、音楽は全く納得のいくものだ。
伸縮自在で劇的で駆り立てる棒。初日に聴いた時と同じ印象なのだが、とにかくこれだと絶対2時間20分の世界だよね。と思ったのだが、前回も今回もほぼきっちり2時間40分かけてきた。
細やかな音の作り、聴かせるアンサンブル、歌の部分だけではなくオーケストラだけの部分も濃い、そして思いきったゲネラル・パウゼ。本当に音楽の作りもバレンボイム的。
左手の表現は時としてバレンボイムを凌駕し、クナッパーツブッシュ的ひねりをいれ、それがサスペンダー状態ともども久しぶりのワーグナー振りがあらわれたような気になりなんとなく浮き浮きしてくる。
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思うにこの種のオペラは、まず棒を持たないと話にならない。
それと、しゃくりあげるような、一番底に一拍目を置いた振り方はやっぱりアウトだろうね。
指揮者とオーケストラの位置関係からして、オーケストラのほうはかなり窮屈に上の方で棒が動いていると感じるはずだが、舞台コントロールを考えると、しゃくりあげ棒は見づらく、やっぱりバレンボイムやエッティンガーのようにかぶさる棒がいいだろうと思う。
オペラは一筆書きみたいなものだから入りの部分の明確さが非常に大切で、この棒には納得できるものがある。エッティンガーは的をついた棒で、ポイントが的確、だからあのような太くてそろった音が出てくるのだろう。演奏者をコントロールしている。こうゆう指揮者はめったにいないものなのだ。
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リンゴ場面あたりから本格的なオペラを感じる、と前回の感想で書いたが、このどうでもいいとはいわないが、そんなに強調するポイントではないと思われるあたりまで神経が行き届いており、一分の弛緩もない。オペラの末梢部分肥大化みたいなあたりにまで力を入れてくるあたり、本格的オペラ指揮者。
それとか、第4場への場面転換であるが、地下から山の頂への音楽の流れが非常にゆっくりとこれ以上ない丁寧さで描かれるあたり、この奇天烈な演出をなだめすかすにふさわしい見事な音の流れである。
劇的な部分でなくてもこのように音楽の内面を表現できてしまう指揮者だと思う。バレンボイムについて習っただけのことはある。あざやかにして印象的なシーンであった。
ラインゴールドは、ほぼ全面にわたり三拍子系だと思うが、リズム感がよく、切れ味鋭く、ボタボタしない。ここらへんはオーケストラの性能にもよると思うのだが、神々のワルツ、観た目はいま一つ動きがいいとはいえないが、鳴っている音楽のほうは明確で、分厚い音符が踊っていた。
今回の5回公演が一番こやしになったのは言うまでもなくこの指揮者だろう。5回も振れて契約金ももらえて、言うことなしだなぁ。
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歌の方は、金曜日のお昼に歌っており、一日休みでまたお昼に歌うわけで、4回目ともなればさすがに少しへばり気味か。
ドンナーのハンマーシーンは声を張り上げよく透っていたが、ほか押し並べていいというわけではなかった。オーケストラの雄弁性がうわまわったようだ。
ただ、歌、演技、ともにかなりこなれてきており比較的安心してみていられるようになった。余裕が出てきている。
ドンナーがハンマーシーンでハンマーを持っておらず、マジシャンのローゲが奥の映写機のあるあたりからさりげなく持ってきて手渡すあたり、あれ演出ではなく、余裕の整合性だろう。
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それと、事実上の第5場神々の入場で奥から出てくるWALHALL、あれって病棟だよね。。
結局、
ファーゾルトが殺されところで音楽はジークフリートの死となったり、
最後のシーンでラインの乙女の一人がカートンボックスに乗り、残り二人が上手から下手に押して行って終幕となるわけですが、あれ何?、
といったことをまたずとも、早い話、ラインゴールドは全部、問題提起をしただけであり、聴衆はその思考を空中に放り投げられ、そのままの状態で来月のワルキューレを待つこととなった。
おわり