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1943年6月の奇天烈ここに極まるコーダの演奏表現に比類するものはいまだ出現せず。これからも永遠に出現しないであろう。あまりにも常軌を逸している。
ベートーヴェン運命第4楽章コーダに至る加速、そしてコーダの狂ったアチェルランド。木管の細かな加速とともにコーダに突入し、弦が蹴りをいれる。ここで一つの楽器に着目しよう。それはトランペット。加速をべき乗で重ねるフルトヴェングラー。弦と同じキザミをいれるトランペット。もつれるタンギング。うなるバルヴ。縦の線も無ければ横の線も無い。最後は完全に舌がめくれあがっているスタッカート。ベルリン・フィルを意のままに動かすフルトヴェングラー。名演」といった範疇にはいる演奏ではない。意図されない即興が技術を昇華した。あまりにもクレイジーすぎる。指揮者が自分で音を出してもいないのにオーケストラをここまで即興的に駆立てることが可能とは。
ここまで彼を駆立てたものは一体なんだったのか。河童はいまだ理解できないでいるが、なんとなく何かのテスト・試験の前夜に聴くと、合格しそうな感じ。
あまたあるCDは全部音がだめ。メロディアLPはガストの古いのが目の覚めるような音で刻印されているが一般的には手にはいらない。河童が昔愛聴していたのはコロンビア(VOX原盤)。このLPはコーダのトランペットがリアルにとらえられている。
板おこしCD花盛りであるが、いまだこのLPサウンドに迫るものは聴いたことがない。
みなさんも聴いてみて下さい。CDだと楽に手にはいるが、音が丸くなっている。それでもものはためしで、運命、を聴くんだ。という感じで。