カパコ「せっかく人間界にきたのだから、風流を味わいたいわ。」
河童「もうすぐ春だし。お花見でもしようか。」
カパコ「あら、いいわね。いつ頃がいいの?」
河童「もう少し先だね。」
カパコ「じゃぁ、あたし親戚の家に逗留する。」
河童「またしばらく会えなくなるのは辛いけど、耐えるよ。」
カパコ「4月1日なんてどう?桜ちょうどいいんじゃない。」
河童「了解。(ちょっと気になる日付だな。)」
カパコ「お花見コースはどうする。」
河童「そうだね。チドリガフチなんてどう、ワンパターンだけど。花見の前の腹ごしらえにちょうどいいパスタ屋さんがあるし。」
カパコ「わぉ、うれし、うれし。」
河童「半蔵門の駅出たところで12:30頃かな。」
カパコ「了解。それまで親戚の家で皿洗いしておく。」
河童・カパコ「グッナイ」
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当日はエイプリルフール。パスタに釣られて。
半蔵門の駅をでて右にまがって50歩ぐらい歩くと、エリオ・ロカンダ・イタリアーナというお店がある。皿持参の客は珍しいらしく、みんなにじろじろ見られていい気持ちだ。
予約していったが、平日のお昼ということもあり、雑然と混んでいた。お店のハーフとおぼしき人間に、見下されながら通路に仮設のテーブルを作ってもらい座った。ひどい冷遇だと感じたが、河童は場所が変わるたびに、時間とともに人間らしくなってくるので、このお店でもだんだんと人間模様が出てきて、そしたらそのうち、ひどいことをしていると反省したらしく、一組の客がひけたら、席をセットアップしなおしてくれた。お昼にもかかわらずアラカルト、河童ワインなどを順番にオーダーし始めたら、仕舞には猫なで声、なんでもしてくれる、みたいな雰囲気になったけど、後の祭りよね。
でも、カパコといると河童は機嫌が悪くならないんだ。
河童「パスタもメインディッシュもかなりの量だ。ワインもたらふく飲んで、お花見どころではなくなってきそう。」
カパコ「そうね。あたしたち、いつもシェアするじゃない。カパコは少なめでいいの。それでもおなかいっぱい。」
河童「最初のバッド・サービスを挽回しようと、盛り付けが少し多いんじゃないかな。それと塩加減もかなりめりはりきいてるよね。今日はドルチェなしだね。」
カパコ「だーめ。ドルチェは別腹なーの。」
河童「....(聞いたことあるせりふだな。讃岐うどんみたいだ。)」
カパコ「はーい。マスター。ドルチェ全部持ってきて。欲しいの全部カットしてもらうわ。いいわね。」
お店の人間「はい。はい。承知しました。汚名挽回ですから。なんでもします。はい。」
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河童「いろいろあったけど、お店は気にいったね。お客も人間界の日本人だけでなく多国籍模様で、だからボリュームが多いんだね。きっと。」
カパコ「あまり広くないけど、いい雰囲気のお店だったわ。お昼真っ只中にきたのはあたしたちのミス。」
河童「カパコはいつも冷静な判断が出来るからね。僕もこれからは見習って、もう少し緻密に計画立てるよ。」
カパコ「お花見忘れてしまいそう。」
河童「4月になったのにまだ2分咲きだね。あと一週間ぐらいずらせばよかったかもね。」
カパコ「だめよ、一週間後はあたし河童界の子供たちに勉強教えないといけないから。」
河童「そうだったね。2分咲きだけど心は散り気味。」
カパコ「そんなにおちこまないの。さぁ、桜と一緒に記念写真とりにいきましょ。」
河童「うん。わかった。」
花曇りのためフラッシュした光が、皿に反射したのが少し気になったけど、きっとよくとれているはずだ。