書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

張岱年 「中国古典哲学概念範疇要論」

2012年09月25日 | 東洋史
 『張岱年先生全集』4(石家庄 河北人民出版社 1996年12月)所収のテキスト(同書449-702頁)。1987年12月の日付のついた序文あり。
 「理」「気」をはじめ、夥しい中国伝統哲学の主要な概念および用語の実例文集として役立つ。
 語義の解釈は、唯物論でばっさばっさとなでぎりで、役に立たない。歴史感覚がないのと、テキストを読めていないせい(あるいはよめても唯物論の教義にあわせて読まねばならなかったせい)であろう。引用文は文言文のままで解釈はついていない。
 (32)の“故,所以,因”(596-599頁)で、これらをすべて“原因”と解釈しているのだが、同時に「因」“~を使って(依)”の意味であるともしていて、奇妙である。アリストテレスの四原因説ならともかく、現代の普通の原因の意味からすれば矛盾している。質量因を原因に入れるのならまさか目的因(~するために)も原因に数えているのではないかと例文を探してみたが、これはさすがになかった。
 とにかく解釈部分は怪しい。


柏艪舎編著  『根岸の里と子規と律』

2012年09月25日 | 日本史
 内容は古き良き明治の根岸風物詩だが、そのなかに陸羯南の四女・巴女史の談話があって、そこに子規と律の話が出てくる。巴女史は子規と律の両方を直に知る人であり、後者からはのち日参して裁縫を習いもしたという近しい関係にあった。律から聞いたという子規の看病の様子など、とても詳細であるが、ここに書くには忍びない。

(柏艪舎 2011年8月)