書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

溝口雄三 『中国の衝撃』

2012年09月19日 | 地域研究
 丸山真男は、自身の言説において研究者と運動家としての場合をハッキリ分けていたというが、この人はそうではない。運動家が研究をしていると云ったほうが正確かもしれない。個人としての理想とそれを支える価値観(中国=優で善、日本=劣で悪)が旗幟鮮明ということである。ただし研究者としての知識は該博で手法は確実であり、もちろんそのために史実や己の良心を枉げるようなことはない。おのれの結論を、堅実な論拠と緻密な論理で証明しようとするのである。

(東京大学出版会 2004年5月)