書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

徐霞客著 周暁薇等訳注 『徐霞客遊記』

2012年01月23日 | 東洋史
 この書の大抵の紹介は、傑出しているとほめあげるばかりで、具体的な優れた特徴については書いていないことがおおい。
 そのなかではこの「簡介」は、如何に伝統中国の旅行記のなかで傑出しているか、その点の列挙がなされている。しかしそれは何故かの分析が全くない。
 あの着実精確な観察眼と客観に徹した文体(私にいわせれば時代離れしていると思う)がいかにして生まれたのかを、不思議に思わないのだろうか。読んで頭に情景の描ける叙事文言文って、とてつもなく凄いことではあるまいか。
 これは、部分注および現代中国語訳である。原著を読むことにする。原文が極めて平易だから(これはこの本の客観描写に関わってくることだが、故事成語の使用や比喩・誇張表現が極めて少ない)、さして困難はあるまい。

(「中国名著選訳叢書」89、台北、錦繍出版事業股份公司、1992年10月)