くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「この母にして」斎藤輝子・北杜夫

2017-05-20 19:56:53 | エッセイ・ルポルタージュ
 この本のジャンルは、どこに分類するべきなんでしょう?
 母子対談であることや、中心になるのが茂吉の話題なのだから「詩歌」とも思ったのですが、ふたりの話題に歌が頻繁に出てくるわけでもないし。
 輝子さんも北杜夫も鬼籍に入り、最早「伝記」レベルかもしれないと思ったり。
 購入したのは、茂吉ブーム真っ只中の二年前ですが、情報が多すぎて少し距離を置いていたのです。
 今年は短歌の授業があったのですが、あれほど熱中した茂吉のエピソードで生徒に提示できるものが少ない。
 結局、義父の紀一から「しげよし」と勝手に改名させられそうになった話題にしたのです。(実際病院ではそう呼ぶように通達したそうですし)
 そしたら、調べ学習に使った本に「本名は茂吉(しげよし)」と書いてあった!
 このことについて、北さんはこの本で「紀一お祖父さまは、茂吉のことを『シゲヨシ』ってわざと、そう呼ばせていたんでしょう?」と。
 輝子さんはそれを受けて「そうね、そのほうが病院の後継ぎとしておさまるからかしらね。その伝でいうとあなたは『ムネヨシ』……(笑)」
 北さんの本名は宗吉です。平岡百穂が名付けたそう。
 家族として語るゆえのエピソードがおもしろかった。
 輝子さんは茂吉が養子になると決まったとき8ヶ月。その後弟が二人も生まれています。西洋さんと米国さん。紀一がヨーロッパとアメリカに出かけていたときに生まれたから。お二人とも、戦中は肩身が狭かったようです。
 戦時中のことも詳しく話されていますよ。山形に疎開したときのことや、茂太さんが買った家がものすごかったこと、病院が焼けてしまって北さんは寮から帰省できなかった、とか。
 由香さんのことも書かれていました。犬のことも。
古本屋で掘り出し物として買ったのです。思い立って県内の図書館蔵書検索してみたら三館しか持っていなかった。1980年、文藝春秋発行、値段八百円でした。