くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「キッチン・ブルー」遠藤彩見

2017-05-19 05:24:22 | 文芸・エンターテイメント
 某古本屋(わたしと読書傾向が似ている人がいるのでは疑惑のある店)で購入した本。遠藤彩見「キッチン・ブルー」(新潮社)。
 遠藤さんの本は「冷蔵庫探偵」から「給食のおにいさん」までほぼ持っているわたし。
 食に関わる短編が六つ収録されています。
 誰かに見られることに怯えて、一人でしか食事ができない灯。外食を避けるために自宅でできる仕事を選び、現在は翻訳をしています。今回は化学に関する専門用語が多いため、監修してくれる人を紹介されました。
 彼のおおらかさに惹かれて、少しずつ関わりをもちはじめた灯でしたが……。
 うまくかみ合ったふたりの姿にほっとしました。(「食えない女」)
 また、「味気ない人生」も印象的です。
 階下の住人の騒音に悩まされる希穂。真夜中の歌声、夫婦げんか、ベランダの煙草。ストレスで味覚障碍を起こします。何を食べてもおいしくない。つらい思いを抱えた彼女が巡り会ったのは、食感を大切にする堀さんの手料理。唯一食事の楽しみを感じるために、堀さんのやっているボランティアを手伝います。
 味覚を取り戻した彼女が、呆然としてしまったラストには驚きましたが、意外とそれはそれで納得と言いましょうか。その衝撃もふっと抜けるようなユーモアがありました。何よりも悩みから抜け出せたことにほっとします。
 食べ物に関するドラマ、好きなジャンルなので楽しく読みました。