くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「藤野先生」魯迅

2011-01-27 05:25:53 | 外国文学
またまた魯迅の話題でごめんなさい。集団読書用のテキストを発見したので、読んでみました。「藤野先生」(全国学校図書館協議会)。訳は松枝茂夫です。
なんとなくぎこちない感じ。でも、読み続けていくうちにちょっと気になる表現を見つけました。いわゆる「幻灯事件」。ニュース映像に中国人スパイが写っていて、銃殺される。「とりかこんで見物している群衆も中国人であった。教室の中には、もうひとり、私がいた」
うん?
わたしが読んだばかりだった「魯迅のこころ」では、こうなっています。
「その場面を幻灯で見ている人びとのなかにも、一人の中国人がいた」
この部分、なんの説明もなかったので読みとばしていましたが、当時仙台に留学している中国人は魯迅一人なのです。でも、こういう引用そのままなのはよろしくないような気がします。伝記なら魯迅が中国人として苦しむ様子がその一文に集約するようでないと。
図書室でほかの本を探したのですが、一冊しかない! おかしい。わたしが以前入れたはずなのに。
とりあえず、西本鶏介訳「阿Q正伝」(岩崎書店)。「それを取りまいて見物しているのも一群の中国人でした。そしていた一人、教室のなかでその映写を見ている中国人はわたしでした」
西本鶏介はほかの訳者と違って敬体で訳していますね。実作者だけあって、わかりにくいところを補ったりちょっと改訂したりして、読み手にはサービスしてくれています。特に、あのわかりにくい「故郷」のエンディングがすっきり。「いまわたしの考えた希望というのも、閏土のあがめるものと、どこが違うでしょうか。それは、わたしが自分勝手に作りあげた理想であり、自分だけが正しいと思いこんでいる迷信ではないでしょうか。
ただ違うのは、閏土の求める希望は、毎日の生活に直接つながる、もっとはっきりしたものであり、わたしの求める希望は、それに比べて、はるかに遠いぼんやりとしたものであるというだけです」
最寄の図書館に走りましたが、貸し出し中らしく見当たらず、家を探し回って平凡社世界名作全集「らくだのシャンズ・阿Q正伝」増田渉訳を発見。
でも、「藤野先生」は収録されていませんてました。
魯迅は自分の作品が日本で出版されるとき、「藤野先生」はぜひ入れてほしいと語ったそうですが。
「故郷」はあったので読みましたが、不思議なのはみなさん、ヤンおばさんを「豆腐屋小町」と訳すんですよね。原文は「豆腐西施」です。誰が最初なのでしょう。見事な技です。
わたしは西本訳が最もしっくりきましたが、一つだけ。「藤野先生」で「わたし」が二軒めに住んだ下宿の「山芋汁」は、ほかの訳者が言うように「芋がら」の入ったみそ汁の間違いだと思います。里芋の茎を干して乾燥させ、それをもどして入れるのです。うちでもお雑煮に入れますよ。
もう少しほかの訳を探してみます。

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