くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「うた恋。」杉田圭

2010-10-04 05:28:36 | コミック
教材研究もの第二弾。杉田圭「うた恋。」(メディアファクトリー)です。発売間もない頃に買ったのに、車で読んでいて(おいおい)助手席の間に落としてしまったため、今日まで読み終わりませんでした……。
「小倉百人一首」の恋歌をモチーフに、背景を描いた作品です。「超訳」つき!
わたしが百人一首に出会ったのは小学生の時分。最近は授業者として折りをみてやらせてはいますが。考えてみれば、自分でかるたをとることは、もう長いことしていませんね。
教科書に載っているのは、人麻呂、憶良、赤人、家持、東歌、防人歌(万葉)、貫之、敏之、小町(古今)、式子内親王、西行、定家(新古今)です。わたしが中学生のころから載っている歌も多い。
昔はもっと額田王とか持統天皇とかもあったんですけどね。結構少なくなりました。(ゆとり教育のため?)
歌は背景がわかる方が圧倒的におもしろいのですが、なかなか手に取って共感しながら読めるまんがが少なくなりました。その中で、あえてこのテーマに挑戦する杉田さんに喝采を送りたい。
恋歌は、現代の女の子にも人気があります。小町の「うたたねに恋しき人をみてしより夢てふものは頼みそめてき」を選んで、千年前の人とも同じ思いを共有できると気づく子もいます。杉田さんは日本の雅やかな文化を愛する女子を「雅美女(みやびじょ)」と評していますが、こういうものに触れて興味をもつ子が増えるといいなあ。
超訳から紹介してみます。
「君と別れた朝 やけに冷たく見える月が空にあった 今も明け方の時間は 君を思い出してせつないよ」(ありあけのつれなく見えし)
「神様 今回は手ぶらですみません ちょっと急いでいたので……お供えがわりに この見事なもみじをどうぞ!」(このたびはぬさもとりあえず)
小式部の歌もかなり背景入ってます。「たしかに私の母は有名ですが 今は遠くに住んでいて 特にやりとりもありません 私は私 母とは違います」
まんがは六つのエピソードを描いていますが、やっぱり式子内親王と定家の回がよかった。冒頭と呼応する構成になっていて、おもしろいと思いました。どちらかというと、わたしは「万葉集」が好きなのですが、「新古今」の時代ももう少し知りたいな。
十年くらい前のことですが、ある私立高の入試で「伊勢物語」(白露の話ですね。鬼に食われるという)が出題され、業平が女を盗んだのはなぜかという設問がありました。選択肢。当然原文には書いてありません。その女が、このまんがの高子です。鬼に食われたといっていますが、実は追っ手に連れ戻されたのは有名な話。だけど、そんなことを知っている中学生、ほとんどいないよねー。
ですから、ぜひ中学生が親しみやすい王朝絵巻を。杉田さん、続刊待ってます。