goo blog サービス終了のお知らせ 

くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「本屋大賞2009」

2009-06-18 05:30:47 | 書評・ブックガイド
毎年この小冊子が出るのを楽しみにしています。「本の雑誌増刊 本屋大賞2009」。今年の大賞は湊かなえ「告白」。でもベスト10でわたしが読んだのはあと「テンペスト」くらいです。
これから読むかどうかも、まだわからないなー。今回は過去五回のベスト10も紹介されていましたが、第4回の6冊がこれまで読んだなかでは最も多かったくらいで、実はあんまり読んでないですね。
でも、11位からの寸評や書店員さんが「これぞ!」と推薦した地味な(?)作品リストがおもしろいのです。掘り出し物もあり、つい読みふけってしまうのです。まずは読んだことのある本を飛ばし読みして、「そうなんだよねー」とか「んー?」とか思いをめぐらせ、その後気になる本の紹介を読むという流れで、わたしはこの本を活用しています。
今年も文庫復刊希望リストがついていて、いろいろと発見がありました。例えば安房直子の作品集が講談社X文庫に入ったとか!(一応本屋に飛び込んで確認。でももとの文庫も全集も持っているので今回は買いませんでした)
「監督と野郎ども」! 懐かしい! どこにしまいこんだのでしょう。
そのほかにも懐かしい書名山積で、心はざわめきっぱなしです。
普段、自分が読んだ本のことや感想を熱っぽく話すことはそれほどないんですよね。相手も好きな場合ならいいけど、そうでない場合は話しにくい。
でも、こういうガイドものは、開くたびに何かしら発見があると思うのです。本が好きな人の気持ちをぎっしり詰めてある本。印象に残る本があったら、ぺらぺらとめくり直して、感想を共有したいものですね。

「新版・小説道場」② 中島梓

2009-06-13 05:20:54 | 書評・ブックガイド
思いの外早く借りて来られました。中島梓「新版・小説道場」②(光風社出版)。
わたしが予想していた「あの人」は、この巻で登場しました。柏枝真郷氏です。はじめはずいぶん低い級から始まったのだなぁーと、驚いてしまいました。尾鮭あさみ氏が破竹の勢いで昇級するのと対照的です。いや、わたしはどちらも読んだことないんですけどね。尾鮭さんが「サーモン」と呼ばれていたことは覚えています。
②は、連載開始から六年経って、充実した道場の様子が伝わる巻でした。
常連として活躍する人が現れるかと思えば、いつの間にか名前を見なくなった人もいる。さらさら読んでしまうので、この門弟が以前どんな作品を書いてどう指導されたのかさっぱり覚えていないひどい読み手のわたしなのですが。
何と言うか、それでもいいんじゃないかなーと思うのですね。作品はテキストであって、読者としてはその中身よりも「小説」というものがもつ普遍性をつかむべき本だと思うからです。
例えば、自分が投稿するとしたら何級に認定してもらえるんだろうとか。そういうこともつらつら考えはしますが、筆者の抱く「小説」観をつかみ、それを理想に精進していく、まさに「小説道」を書いた本なのです。
ラスト近くになって、やっとたつみや章氏が登場しました。この道場出身で最大のネームバリューはこの人だと思うので、始めの方のやや不満げな様子が意外です。
でも柏枝さんも似たようなタイプで、のちに急成長を見せたところもあるし、確か③では「ぼくの稲荷山戦記」でデビューが決まり、別名義のシリーズが人気を博したのですよね。
ただ、わたしが利用している図書館には③以降が見えなかったので、どうしたものかと思案中です。

「新版・小説道場」① 中島梓

2009-06-09 05:05:12 | 書評・ブックガイド
多分読み返すのは四回めです。中島梓「新版・小説道場」①(光風社出版)。
学生時代、新書館版を友人に貸してもらい、投稿作品が読みにくくて(わたしが読みたいジャンルじゃないのですね。正直言って)でも道場主の講義は滅法おもしろい不思議な本でした。
栗本さん、先日お亡くなりになりましたね……。わたしにとって、栗本薫という作家は「伊集院大介」「真夜中の天使」(先輩にすすめられるも結局挫折)あとは「グイン・サーガ」(ヒロチンスキーさんが読んでいましたよね)のイメージです。あ、うちの夫は「魔界水□伝」を読んでましたが。
わたしの読むジャンルからは、遠い作家なのだと思うです。でも、彼女が「小説を書くこと」について書いたこの本は、ほかの小説の書き方についてレクチャーしたどの本よりもおもしろい。
この本のなかでたくさんの「門弟」たちが育っていきます。江森備は、わたしが高校生のときにはもう先輩のハートをわしづかみにしていました。その先輩から本を借りて、わたしは文通相手に本文を視写してあげましたとも。(でも結局コピーを送ってと言われたんだけど)
現役作家として活躍するあの人この人も、この道場から育っています。
読んでいて、筆者(ペンネーム使い分けるのが面倒でごめんなさい)が、どれだけ小説というものを真摯に捉えているかがわかるのです。
「を原稿用紙の二升目からつけるといっていたことも、なんか覚えているー。
しかし、この企画を始めたときの筆者がまだ三十そこそこというのには驚きます。もう知名度も人気も高かったものね。編集長も三十一歳だってよ! しかも、奥様はささやななえ。もう「おかめはちもく」を描いていたそうです。
この本を読んでいて、いちばん強く感じたのは、「小説を書く」という情熱のほとばしりです。筆者も門弟の皆さんも。
この時代、主流は「手書き」です。本文中でも幾度となく字は丁寧に書かないといけないとかペンで書けとか、この人の字はきれいとか出てきます。
わたし自身も、この時期に青春時代を送ったものですから、文章を書くときの違いはよくわかります。パソコンで打つのと、筆記用具で下書きしてそれから清書するのは、全然違うのです。どっちがいい悪いというよりも、対象との親密性が。それに、パソコンだと推敲は楽ですよね。
でも、きちんと清書して投稿する、それだけの思いがなければできないことです。
①では、江森さんと野村史子さんが高弟として認定されています。あと、滝尾令以子さんというのは、あのかたかなあ? ②も早く読みたいのですが、一体いつ借りて来られるやら……。

「勝てる読書」豊崎由美

2009-04-17 05:39:08 | 書評・ブックガイド
河出書房新社から出ている14歳の世渡り術シリーズ、知ってます?
わたしはK.M.Pの「みえない未来相談室。」とあさのあつこの「復讐プランナー」を読みました。新刊、石原千秋先生の「受験国語が君を救う」も買ってあります。
このシリーズから我らがトヨザキ社長が「勝てる読書」という本を出版されていました。さっそく読んでおります。
この本はブックガイドなんですが、今の中学生というよりは14歳の自分に向けて書いたと社長はおっしゃいます。
現代の省略語が多用されていて、正統派の本読みには多少苦しいかもしれません。わたしも社長の著作でなかったら、やめてしまったかも。
読んでみたい本をリストアップしてみますね。
まずは大塚ひかり「美男の立身、ブ男の逆襲」(文春新書)。日本の古典をひもといて、社会における美醜の変遷を綴ったもののようです。
しかし、新書の棚をいくら探してもみつからないよ!
社長は外国文学がお好きなので、生粋の日本もの好きのわたしの触手はなかなか動かされなかったのですが、あらすじが気になるのでとりあえず二冊。
ダン・ローズ「ティモレオン」(中公文庫)
ラッセル・バンクス「この世を離れて」(早川書房)なんとなくこの辺りなら読めそうな気がします。読めるかな?
あとは「ジェノサイドの丘」ゴーレイヴィッチ (WAVE出版)も気になるのですが、わたしの傾向として虐殺ものは読んだあと気分が悪くなってしまうのでどうかなあ。



読みながら書いてきたのですが、「さっそく」とか言いながら読み通すまで時間がかかりました。この項前半とタイムラグがあるように感じます。すみません。
それはわたしの読みたい本が、社長のお好みとは大分違うからなのでしょう。「めった切り」とか「正直書評」とかはフルスピードで読んだのですが。
わたしが十四歳のときだったら(当時は海外文学も読んだので)、ここに紹介された本を手に取ったでしょうか。
どうかなーというのが正直な気持ちです。わたしには難しい。読書というのは偏りのあるものですが、こんな本をほんとうにその年で読んでいたの?!
まあ、社長ですからね。ご幼少のみぎりから鍛えられてきたのでしょう。逆に言えば書評家たるものそのくらい読めないでどうするという感じ?
うーん、わたしにはこの中の本を中学校の図書室に配架する勇気はないです。
本は読者を選びます。その時期にしか読めない本はある。中学生に限らず、本を読む子と読まない子では量もレベルも違います。ここに紹介される本を読みこなすのは相当レベルの高い子でしょう。いや、大人でも読めないかもよ。
わたしも、できるだけ読んでから本をすすめたいと思うので、中学生向きの本を選ぶことがおのずと多くなるのですが、昔に比べると彼らが「読める」本が増えたと感じるのです。やはりヤングアダルトが強くなってきたんですね。わたしは高校生から大学生に移る頃に、読みたい本のジャンルが変わってきたような気がします。一般文芸の敷居が低くなったというか。それまで学校図書館の名作や少女小説を読んでいたのが、三浦哲郎にはまり、アイリッシュにはまり、古本屋をまわり(新古書店じゃないですよ)、いろいろ読むようになりました。大学の図書館、専門書が多かったので通いにくかったのです。大人の読む本を読めるようになったのかも知れません。
でも、今現在もその延期で読んでいるつもりなのですが、一般書に子供が読んでもよさそうな本の割合は増えていますよね。
この本でいえば、ラストで「ゴールデンスランバー」や「君の友達」が紹介されています。確かに読めそうですねー。
しかし社長! どうして最後に「4TEEN」なの?! わたしはこの話、いろいろ矛盾があって駄目でした。中学生の自分だったらどうだろう。感動、したんでしょうか。(……いや、しない。反語)

「やっぱりだらしな日記」藤田香織

2009-04-16 05:27:25 | 書評・ブックガイド
藤田香織「やっぱりだらしな日記+だらしなマンション購入記」(幻冬舎)を、読んだ……といったら嘘になるかも。この本の「本日の読書」コーナーだけを拾い読みしたのです。
だってー、わたし、藤田さんの生活よりも書評の方が気になるんだものー。
食べたものの写真や作り方も、興味はあるけど、書評の方が気になるんだもの……。
2002年の2月から、2003年1月までに藤田さんが読んだ単行本を主体に取り上げているので、わたしが読んだことのある本も結構混じっていました。「同感!」と思う本もあれば、「そうかぁ?」というのもあるわけです。この本と一緒に図書館から借りてきた「『人を好きになってはいけない』といわれて」もあって、その評価が低かったので、読まずに返却するかもしれません。
読んでみたい本。「人生教典」(高田純次・河出)「魚心なくとも水心」(安西水丸・ぴあ)「劫尽童女」(恩田陸・光文社)「発掘」(浅草キッド・ロッキング・オン)「フラグラーの海上鉄道」(野中ともそ・集英社)「どうぞよろしくお願いします」(桝野浩一・マーブルトロン)「延長戦に入りました」(奧田英朗・幻冬舎)「怪を聞く日々」(福澤徹三・メディアファクトリー)「ボランティア・スピリット」(永井するみ・光文社)「渋谷一夜物語」(山田正紀・集英社)「四月天才」(小泉吉宏・文春)「世界の果ての庭」(西崎憲・新潮)「タンノイのエジンバラ」(長嶋有・文春)……。羅列ですみません。書いておかないと忘れるので。
でもこの中のすべてを読む気になるかどうかは疑問。実際に手にとってみると、やっぱり好みじゃない場合もあるから。
文中に、ナンシー関の急死のことも書かれていて、もうこんなに時が経つのか……と感じました。ナンシー、すばらしい批評家だったよ……。テレビを見ないわたしなのに、「テレビ消灯時間」(文春文庫)はおもしろいのです。あの軽妙な文章が、今のテレビをどう描いたかなあーと考えること、ありません?
藤田さんが本について書かれたものも、もっと読みたいです。
あ、さくらももこがある種のゴールであるという意見も賛成。りぼんで連載していたころの「ちびまる子ちゃん」は本当におもしろくて、腹を抱えて笑ったものなのに……。
今、新聞でやっている4コマはまったくおもしろくない。子供に「よんでー」と言われるので読んでやりますが、「どういうこと?」と聞かれても、説明できないんだもの。説明できたとしても、どこがおもしろいのやらわからないのです。なんのひねりもないし。
それにしても、この本を「2門」(地歴・伝記など)に分類してあるのが不思議なんだけど……。日記だから、ですか?

「本格ミステリフラッシュバック」千街晶之ほか

2009-04-10 05:34:32 | 書評・ブックガイド
千街晶之・市川尚吾・大川正人・戸田和光・葉山響・真中耕平・横井司「本格ミステリ・フラッシュバック」(東京創元社)……ふぅっ、長い!
厚さも充分です。上下二段組339ページ+索引。作家の略歴と代表作が紹介されます。最も多く採られているのは十作で、例えば泡坂妻夫「11枚のとらんぷ」「乱れからくり」「亜愛一郎の狼狽」「湖底のまつり」「喜劇悲奇劇」「天井のとらんぷ」「妖女のねむり」「死者の演舞」「煙の殺意」「しあわせの書」。鮎川哲也や都筑道夫、佐野洋、連城三紀彦も十作品ですね。(ほかにもたくさんいますよー)
紹介作品は、索引だけで5ページもあります。
だから、全部を丹念に読んだわけではありません。今まで読んだところや、気になる題名といったところです。
ガイドブック、好きなんです。「J’s ミステリーズ キング&クイーン」(相川司+青山栄・荒地出版社)は、マーカーで線を引きながら読みました。これは、決して手放さないと分かっているからできることです(笑)。読んだ本、読みたい本、リストを作って持ち歩きたい気持ちになってきます。
「ミステリフラッシュバック」には、その本で目にして読んだ作品が、かなり紹介されていました。わずか数行のコメントが、書影入りで一段分(31字×18行)もに膨らんでいるのも、興味を喚起させます。
あー、「炎に、絵を」(陳瞬臣)読んだなー、と。折原一と北村薫があれだけプッシュしてれば、読みますよー。図書館探しまわって発見しました。
松本清張も二十代のころに大分読みました。で、「砂の器」の解説がおもしろかったですね。ちゃんと真相をぼかして書いているんです。読みながら、現在だったらこの理由では発表できないだろうと思い、同時にこの当時の社会が抱えていた差別の大きさを感じました。あ、千街さんのラストのコメントは笑いましたよ。「映画化の際には何故か大抵省略されるけれども、海野十三ばりの奇抜な機械的トリックにも驚かされる。」それは、あれのことですね。驚かされました、わたしも。
わたしがもう一度読んでみたいのは、仁木悦子「猫は知っていた」(講談社文庫)かな。中学時代に読んだのだと思います。幼なじみが猫好きで、このシリーズを持っていました。「赤い猫」も仁木さんでしたっけ? 火事に関わる隠語だと聞いたインパクトが大きかったことを覚えています。
それから、おもしろそうなので読みたいと思ったものも書いておきますね。まず、戸板康二「浪子のハンカチ」(河出文庫)。文学に関するミステリだそうです。あとは、娘さんがお父さんの書いた作品をリライトしたという藤雪夫・藤桂子「獅子座」も。
青柳友子、<ミスティ・ガール紅子シリーズ>も気になるところ。
なにしろ「フラッシュバック」なものですから、今痛烈に読みたいと思っても、手に入らない作品も多く、そこはちょっと残念です。図書館や古本屋を丹念に探すしかないでしょう。

でも、ですね。なんと小泉喜美子の「弁護側の証人」が文庫復活なんですって! えらいぞ集英社!
自分で持っているはずの山崎洋子「横浜秘色歌留多」(講談社文庫)も読み返したくなりました。