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くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「お好みの本入荷しました」桜庭一樹

2010-01-20 05:40:11 | 書評・ブックガイド
過日、夫が仙台に行くというので、本を買ってきてもらおうと思いました。
一応本屋にはしょっちゅう行っているのですが、探しても探してもないのですよー。
「お好みの本、入荷しました 桜庭一樹読書日記」 東京創元社です。この本を買ってきてね。
と頼んだところ、昼近くにメールが。
「在庫切れでした」
がーん……。残念。
その後探しまわってようやく入手したものです。よしよし!
この期間に桜庭さんがご結婚されたということを聞き及んでいたので、その前に「用事」だの何だのと出てくると、これは入籍を控えての伏線なのでは? と深読みしてしまいます。
ただ読み続けるうち、桜庭さんの旦那さんがどういう人なのかすごく気になってくる。
ラーメンで餃子を洗ったり、なかなか引越し荷物が片付かないのに、桜庭さんがやろうとすると、「女の子にさせられないよ」なんて言い出す。二人で暮らすことにカルチャーショックを覚えることしきりのようですが、そこにまたのろけのようなものを感じます。
肩までの茶髪で、すごく細い芸人らしい。しかもよしもと興業の東京事務所で挙式ということは、お笑いの人? と思い、検索してみました。友野英俊さんというらしい。桜庭さんのウェディングドレス姿の写真も載ってました。なんか劇的な出会いだったそうだけど、どんな?
本の中身がちょうど結婚パーティーの途中で終わるので、続きも気になりますね。
ラストには三村美衣さんとの対談もあり。(「僕はかぐや姫」、読書部だっけ? 文芸部だと思ってたけど)
この本を読むたび、ものすごく読みたい本がごろごろ出てくるんだけど、それは桜庭さんの紹介がうまいからなんだよね。
「名短篇、ここにあり」を読んだばかりなので、感想を読んで「そうそう!」と膝を打ちました。
あと読んでみたいのは、松浦寿輝「幽」とウィリアム・トレヴァー「聖母の贈り物」、市川慎子「おんな作家読本」でしょうか。話題になっているアンソロジー「人間の情景」、懐かしい! 八冊のうち二三冊持ってました。どこにおいたかなー。実家には間違いないんだけど。こういう話になっていると、読み返したくなるではないですかー。

「あの作家の隠れた名作」石原千秋

2010-01-02 06:24:47 | 書評・ブックガイド
2010年の幕開けは、石原千秋「あの作家の隠れた名作」(PHP新書)でございます。
わたしはこれ、石原先生によるアンソロジーだと思いました。小説がそのまま載っているのではなく、石原先生がその作品をどう読んだかのポイントが示されていて、おそらくこれを読んだあとに原典に当たったら、もうそのようにしか読めないのではないか、とすら思わされます。ちょうど、「猫町」が違う角度から見た町の様子を描く小説であったように。
アンソロジーにも小説の視点にも興味があるので、たいへん楽しく読みました。
でもこれは、自分が学生のときに読みたかったなあ! 論文を書くときにどんな点に注目すればいいのかもわかるようになっていて、たいへん参考になります。
文学の論文というのは、その作品の「見方」を論じるものですから、同じ作品でも「もうひとつの側面(または「もうひとつの物語」)」を探り出すものだといえると思うのです。いわば、物語の発掘。それは作者の意図もあるでしょうし、逆に意識すらしていないことすらある場合もあります。
おそらく、ここにとりあげられた12点の作品のうち、大半は読んだことがあると思うのですが、すみません、遠い記憶の彼方です。川端も梶井もかなり読んだので、多分読んだだろうとは思うのですが。かろうじて、芥川の「蜜柑」は覚えています。
で、この「蜜柑」の項がおもしろいのです。主人公と小娘の位置関係を考えるとき、この汽車はロングシートかボックスシートか、という問いで、場面のイメージが全く変わってくる。わたしも、恥ずかしながらボックスシートだと思っていました。子供のころから利用していた電車がイメージされていたのではないかと思うのですが。
また、この作品に限らず、「語り」の問題が多く取り上げられているのも、考えさせられます。
普段、主人公の語りについて、わたしは余り意識してはいないのでしょうね。でも、作品を教材として見つめ直すときには、もっとじっくり読んでおくべきなのでしょう。さらに、作品の時代背景や社会の気分も、伝えていかなければならないのだな、とも感じました。
男作家による「女語り」、女作家による「男語り」、主人公の視点を超越した共謀関係。そして、一言一句をおろそかにしない、読みのあり方。
表面的な読みから一歩深めた読みへ、すすんで行かなければならないのでしょうね。うー、頑張ります。(できるかな?)

「『王様のブランチ』のブックガイド200」松田哲夫

2009-12-14 05:40:56 | 書評・ブックガイド
あまりテレビを見ないので、この番組を見たことはほとんどありません。はしのえみがお姫様の恰好をしているところくらい。でもよく本の帯についているじゃないですか。「『王様のブランチ』で第一位!!」みたいなのが。
「『王様のブランチ』のブックガイド200」(小学館新書)。
この本は「ブランチ」で読書について担当している松田哲夫さんが、これまでとりあげた本の中から二百冊を厳選して紹介したものなのです。
新書なのに、読書本コーナーに置かれていたんで、ちょっと気になって買ってみました。
巻末に索引がついているので、試しに何冊読んだことがあるかチェックしてみると、六十冊余り。大体三分の一ですね。
本の構成は、松田さんがどういうふうに「ブランチ」に関わってきたか、取り上げた本を項目ごとに分けて、どんなコメントをつけたかの紹介の二部になっています。
例えば「しみじみとした余韻が残る小説ベスト10」では、北村薫「リセット」、江國香織「神様のボート」、瀬尾まいこ「幸福な食卓」、阿川佐和子「婚約のあとで」などが紹介されていますが、この項目の中にさらにほかの本のコメントが加わるわけです。
北村薫:「リセット」「紙魚家崩壊」「玻璃の天」という感じ。
さらに北村さんは「切なくて愛しい小説」部門にもとりあげられていて、「月の砂漠をさばさばと」「語り女たち」「ひとがた流し」が紹介されています。
いちばん作品的に多いのは恩田陸。「いのちのパレード」を読んでみたいなー。
松田さんのコメントをそのまま乗せてあるのですが、これがおもしろい。ブログっぽい、というか。読んだことのある本は内容を思い出し、まだのものは興味を引かれます。地の文とコメントの文体が違うのが、ちょっと読みにくいかも。
重松清「トワイライト」、小川洋子「ミーナの行進」というところを借りてみようと思いました。いちばん気になるのは、西川美和ですかね。
さて、読み終わるころ、朝日新聞の別紙で読書特集のものを見るチャンスがありまして、そこでも松田さんの対談を読ませていただきました。今年話題になった本を振り返るのですが、この本についても取り上げられていましたね。
松田さん、筑摩書房の編集さんなんですね。実は「ちくま文学の森」を地道に古本屋で探していますし、「プリマー新書」に注目しています。
多分これからもテレビは見ないけど、本に関するコメント、見つけていこうと思いました。

「子どもの本ガイドブック」ひこ・田中ほか

2009-10-26 05:47:34 | 書評・ブックガイド
どんな本を選ぶか。これは本に関わる人には大切な課題です。情報が少ないと欲求不満に陥る(笑)。
だから、本についての本が好きです。ブックガイドやある作品をオマージュしたもの。そういう作品を集めて、企画本棚を作りました。「今日はこの本読みたいな」「扉を開けて」(折原みとのブックガイドです。)「この本読んだ? 覚えてる?」(赤木かん子・フェリシモ)などを並べています。
で、こういう本も借りてみました。「子どもの本 ガイドブック」(三省堂)。ひこ・田中を始めとした本読みの方々が、今までとは一味違うガイドを目指して書かれています。自分の好きな本、興味のある本以外はどうしても飛ばし読みにはなってしまいますが、なかなかおもしろそうな本が紹介されていたので、リストアップしておきましょう。
「カッパの生活図鑑」(ヒサクニヒコ・国土社)「ナヌークの贈りもの」(星野道夫・小学館)「おばあちゃんは木になった」(大西暢夫・ポプラ社)「ローザ」(ニッキ・ジョヴァン二、さくまゆみこ訳・光村教育図書)「ふしぎの時間割」(岡田淳・偕成社)
「どこにいるの? シャクトリムシ」(新開孝・ポプラ社)も気になる。こうやってみると、写真集やノンフィクションに興味があるようですね。普段、そういう本を読むかというとそうでもないのですが。
で、結局図書館に行っても物語の棚を覗いて帰ってきてしまうのです……。

「推理日記」Ⅶ 佐野洋

2009-08-26 05:23:48 | 書評・ブックガイド
県図書館で借りてきました。佐野洋「推理日記」文庫Ⅵと、単行本Ⅶ(講談社)。
「六冊めまでは文庫になってたんだー」と読み始めてですね、とあることに気づきました。それは、同じ記事が収録されている、ということ(笑)。
そう、文庫Ⅵは、単行本のⅦとⅧの内容が入っているのです。うおぉー。どうなのこれはお得なの?

今回、気になったのは木谷恭介氏でしょうか……。彼は大衆作家という存在が認められないという不満をもっているようです。それで佐野さんが彼の著作を読んで、シリーズ小説について意見を述べる。このシリーズ探偵・宮之原警部は別にいなくともいいのではないか、と。
「読者あるいはファンのために、宮之原警部を登場させているということのようだ。だが、と私は敢えて言いたい。」
「その宮之原ファンはどういう読者なのだろうか。本当に小説が好きな人たちなのだろうか」
佐野さんの頭に浮かぶのは「水戸黄門」ファンの知人たちです。
「誇張して言えば、私は、小説を書く上で、水戸黄門のドラマは敵だ」
そんな佐野さんの意見を聞いて、木谷氏は言うわけですよ。
「草の根読者」を大切にしたい、と。
彼の主張によると、熊本の人たちは芝居を見るときに加藤清正が出てこないと不満がったため、筋に関係なく加藤清正を通行させたんだとか。
だから、水戸黄門的なドラマは必要だし、自分はそういう「お話」を求める読者のために書く。暇つぶし多いに結構。自分の小説の水戸黄門的存在が宮之原なので、今後も出し続ける、というような要旨。
それって、どうなのですか。じゃあ、批評の意味がないじゃない、とわたしなぞは思うのですが。
「大衆作家」として批評されたいのではなかったっけ? 批評されると「大衆作家」としての側面をあげて、だから自分はこれでいいのだっていうのはどうなのか、と。
で、少し考えたのです。「大衆作家」って、ほかにどんな作家を指すの?
わたしはこの人の本を読んだことはないのですが……。トラベルミステリー系列だと、うーん、吉村達也とか西村京太郎は、そのくくりに入ります?
ワイドドラマ原作者はどうですか。あ、でも夏木静子は違うような……和久峻三とか。
木谷氏は、「ノベルズ作家」とも言っていますね。すると茅田砂胡もそうなの? 岡嶋二人は?
アマゾンのブックレビューを検索してみましたが、発見できません……。
以前に木谷氏が同様の嘆きをしているという記事を何かで見たことがあるような記憶があるのですが。なんだったろう。もしかしてわたし、昔単行本Ⅶを読んだのでしょうか。まったくわかりません。
時間たりなくて、結局文庫版は読み終わりませんでした。
浅黄斑氏の本と、本岡類氏の「9人の仕事人」を読んでみたいな。乃南アサが結構とりあげられますね。「登場人物をどう呼ぶか」というテーマに関してのお手紙文のところで、自分の本名があるロックスターと同じであると明かします。気になったのでもう少し調べてみました。
正解は、「矢沢」です。

「小説道場」③ 中島梓

2009-08-25 05:51:59 | 書評・ブックガイド
ふうぅっ、県図書館で借りてきました。中島梓「小説道場」③④(光風社出版)。地元には①②しかなくて、県図書館には③④しかなかった。でもって、ほかの四冊とともに、三日で読んで返却しなくてはならない。なぜなら、研修が四日間だから……。その後仙台に来るチャンスは当分なし。
しかし、読み切れるのか自分! 二日めで、読み終わったのは「青春相談室」のみ。明日返せるのか本当か、と自分にツッコミつつ……。
がんばりました。③。連載が五十回を越えて、円熟を迎えたことがわかります。毎回、似たようなことを言われているような気がするのに、なぜいちいち読み飛ばさずに読んでしまうのか……。そして、栗本さんの毒気のようなものにあてられているような気もするのに、小休止したあとにまた手をのばすのか。ふーっ。とにかく、すごい吸引力だと思います。
小説に関する基本的な事項は、もう①②でほとんど言ってしまっているのだと思うのですよ。で、この巻で栗本さんが繰り返し言うのは、「JUNE」(的な小説)とはどういうものなのか。
また、随所にあらわれる小説観にうなずかされます。
「すべてのキャラの目で同時に世界を見ることができるようになったら」
「最後の最後まで現実を見つめる勇気か。(略)でもこの二人はそれじゃちっとも成長してないじゃないか!」
「そのあいまいな、もどかしい情感というのがまたこの平安朝の小説のリアリティになっていたのではないかと思うのだ。だが現代に生きている私たちが読むからには、同じ情感はもう持ちえないのは当然である」
うーん、考えさせられます。でも、この巻の後半で、「皆さん、本当のJUNEとは何かなんてことを考えるのはやめませんか」とアジテートしたいと言ったり、そうかと思えばやはりこだわってみたり……。ただ、栗本さんが言う「JUNE」のキーワードは「孤独」なのかな、という印象はもちました。
この巻、たつみや章こと秋月こお氏の大活躍がきわだっていますが、本文によると、「道場はじまって以来のスケベー」なんだそうで、「ぼくの・稲荷山戦記」が講談社児童文学新人賞をとったときは、「なお、たつみやの本領とする超ハードシーンはおそらくカット……して投稿したものと思う、はははは」と書いてあるのですが。
あの話で、ハードシーン……誰と誰との間で?
さらに、彼女が「児童文学」(=童話)であることについての考察もありました。
ごめんなさい、やはり性急に④は読めそうにない。また今度、と思って返却しました。

「謎解き 少年少女世界の名作」長山靖生

2009-08-02 04:55:29 | 書評・ブックガイド
世界名作十五編に、無意識(?)に隠された意図を読み取るという主旨の本です。長山靖生「謎解き 少年少女世界の名作」。語り口が結構おもしろいです。リズムのある文章。本業が歯医者さんとはとても思えないほどです。
わたしがうけたのは、「小公子」に対するこのくだり。

そこにさらに橋田壽賀子ドラマ的状況が重なって、(略)ドリンコート伯爵から「財産目当てに息子と結婚した図々しい女」と見なされ、不当に虐げられるのだ(するとセドリック役を演ずるのは、えなりかずきか……)。

想像させないでー!
ちなみに帯に書かれた「小公子」のキャッチコピーは「子育てに役立たない非教育的天才よい子」。
さらに「西遊記」の主人公は悟空だと思っていた筆者に対して知人の一言。
「主役は三蔵でしょ。だってあれは三蔵の冒険で、悟空はただの付き添いだから」。なーるほどー、と思っていると。

そいつは「えらいですね、三蔵は。女なのに」と言うではないか。
どうやら、テレビで夏目雅子や宮沢りえといった美人女優が三蔵を演じた影響らしい。
(略)大学の授業で「西遊記」に触れると、「男だったのか」という悲嘆(?)のつぶやきが、そここから上がるという。

ははは……。

「名刀中条スパパパパン!!!」中条省平

2009-07-16 05:08:04 | 書評・ブックガイド
無人島に一冊だけ本を持っていくとしたら。
わたしはこれですね。「名刀中条スパパパパン!!!」。筆者は中条省平です。書評集。
書評のわりにあらすじの割合が多いのに加えて、しかもわたしと読書傾向が違うのです。もし、一人で徒然を過ごすとしても、このあらすじの空白を埋める作業をしていれば結構気が紛れるような。
でも、かなりテンションが特殊なので、ずっと読み続けるのは難しいでしょうね。斎藤美奈子とナンシー関が好きって以外の趣味も合わないし。
斎藤女史と同じ本を紹介しているのに、なんかタッチが違いますよね。
例えば中条さんは村上春樹を好評価していますが、「海辺のカフカ」は駄作だと言ってみたり。斎藤さんの「趣味は読者」の「カフカ」の項を読み返しちゃいましたよ。
ちなみに、無人島に持っていく本、ミステリ作家や書評家の皆さんへのアンケートによると、一位は「ドグラ・マグラ」です。なんで? 「瓶詰地獄」のせいかな。「パノラマ島綺談」も多い。
川原泉は「広辞苑」、北上次郎は「持っていかない」と答えていました。
そういえば、わたしもこの本をどこかにしまいこんでしまいました。まあ、無人島に行く予定はないのでいいことにしておきます。

「本棚探偵の冒険」喜国雅彦

2009-07-04 05:33:22 | 書評・ブックガイド
喜国雅彦の「本棚探偵の生還(仮名)」はまだ出ないのでしょうか。以前ダ・ヴィンチで「童心」を連載していたよね?

という訳で、「本棚探偵の冒険」(双葉文庫)です。もう三回は読み直しているわたしの愛読書(笑)。
古本関連の本は結構読んだと思うのですが、目のつけどころや企画の仕方が、エンターテイメントなのですよ。どんな本が高価かとか、どうやって手に入れたかという話題だけではないのです。
角川文庫の横溝作品を全部揃えるために奔走。当然カバーデザインが違っていればそれぞれ入手。友人の本棚を整理するためにわざわざ京都まで赴き、「出版社別」に並べます。(友人とは我孫子武丸氏)
函なしの古本のために手づくりの函を誂えたり、豆本作りに挑戦したり。
中でもわたしがいちばん好きなのは、「一日でポケミス何冊探せるか?」という、「THE鉄腕!DASH!!」に似せた章。ハヤカワ・ポケットミステリ1520冊のうち何冊を見つけ出せるかチャレンジするもの。
「もちろん長瀬のカッコ良さに勝てるワケはない。国分の知恵や山口の体力にも勝てやしない。だが城島には勝てるだろう」とあって、大笑いしてしまった。(ねぇねぇ、松岡は?)

古本屋や新刊書店をまわってチェックした成果は、99冊。タイムアップ後にもう一冊を発見したそうな。電車を乗り越したり、あると思っていた本屋がつぶれていたり、こんなときにほしい本を見つけてしまったり、とハラハラドキドキ(?)です。
やっぱり、一冊めは「冒険」にしないと! と思う人は多いようですね。横溝、法月、あ、茅田砂胡もだ(笑)。

「何だ難だ! 児童文学」さねとうあきら ほか

2009-07-03 05:27:25 | 書評・ブックガイド
灰谷健次郎が好きになれないのです。
一時期結構読んだのですけどね。何となく違和感が残るというか。教育が彼の文学の根底を流れているのはよくわかるのですが、うーん、どこかうさん臭い……。
直接の理由としては、かなり前に読んだものですが、さねとうあきら、長谷川知子、中島信子「超激論 爆笑鼎談 何だ難だ! 児童文学」(編書房)の影響があるかと思います。
わたしは小学生のころさねとうさんの本が大好きで、この本も彼に引かれて買ったのですが、いやー、かなり話が暴走しています。いろいろとあるらしいです、恨みつらみが(笑)。
様々な児童文学を俎上に載せて評価しているのですが、中でも気になったのが、灰谷文学の代表作「兎の目」。
長谷川さんはこの本の挿し絵を担当しました。おそらく、たくさんのかたが「兎の目」と聞いて彼女の絵をイメージするのではないかと思うのです。
作品はベストセラーとなり、それから四年も経っているというのに、ある絵に関して「違ってる」と言われたそうです。ゲラ刷りの段階ならともかく、今更どうしようもないですよね。
「どうしてそのとき言ってくださらなかったのですか」と言う長谷川さんに、
「あんたは絵描きでしょ。そんなことは自分で気がつかないとね」。
わたしが灰谷を好きになれないのは、やっぱりこの底意地の悪さでしょうか。なんというか……信用仕切れないものがあるのです。

あとは、新美南吉が宮澤賢治に比べて評価されていないのではないかという説も頷かされます。わたしは南吉が好きなのですが、どこか暗さを伴っているせいか、「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」以外埋もれていますよね。「花の木村と盗人たち」とか「おじいさんのランプ」とかおもしろいですよ。
宮澤賢治は、中学生のわたしには理解不能の作家でした……。あ、「よだかの星」は好き。

トットちゃんについての中島信子のコトバ。
「もしクラス中がトットちゃんだらけだったら、即、学級崩壊です」には大ウケしました。いまだに読んだことないや、トットちゃん。