三木清の『人生論ノート』しっかり読みました。高校の国語の教科書にも一部が引用されていたようにも思う。良い本だからぜひ読みなさいと誰かに言われ学校の図書館で借りた記憶がわずかにあります。薦めてくれたのが友人だったか先生だったかは忘れてしまった。その時の読後の印象がまったくありません。おそらくロクに読んでいなかっただろうと思う。
第一章の「死について」から始まり「幸福」「懐疑」「習慣」「虚栄」・・さいご「個性」まで、人生においてカギとなる二十余個のキーワードをもとに著者が思うところを解説しています。
「娯楽について」の項では本タイトルの「希望に生きる者はつねに若い」や「人生問題の解決の鍵は新しい基準を発見するためにある」があります。この辺は分かりやすく革新的です。
「人生は仮説を証明する実験である」
「孤独は山でなく街にある。大勢の人間の間にある」
「懐疑は知性の徳として人間精神を浄化する」
「感傷はマンネリズムに陥っている。青年が感傷的なのはこの時代が主観的な時代であるためである」
「人生は遠い。しかもあわただしい。人生の行路は遠くて、しかも近い。死は刻々と我々の足元にあるのであるから。想像に従って人生を生きる。人はユートピアン。旅は人生の姿である」
いくつか選ばせていただきましたが、含蓄のある格言ばかりです。しかし高校生の私には理解できなかったのは無理ないことかなと思う。「人生論ノート」は戦前、開戦直前の1941年6月迄、三木清44歳の作品集。この若さでこれだけの人生論を著わしたことには驚きです。厳しい思想統制下の時代、かく言う著者自らの“人生論ノート”の終章が非情な獄死であったことは気の毒でなりません。
この本、電子書籍端末で読みました。三木清先生のご尊顔も初めてウィキペディアで知りました=写真。ネットの利便性をあらためて感じた次第です。
人生論ノート | |
三木清(1897-1945) | |
青空文庫 |
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