ポポロ通信舎

(旧・ポポロの広場)姿勢は低く、理想は高く。真理は常に少数から・・

『幕末史』の見方も様々

2016年02月09日 | 研究・書籍

司馬遼太郎、没後20年

司馬遼太郎の『峠』を読み終えた余韻がまだ残っています。司馬遼太郎没後20年に当たり若手俳優の東出昌大が「文藝春秋2月号」誌上で司馬文学について、なかなか詳しく寄稿しています。『峠』は幕府側からの視点による作品で、『竜馬が行く』は倒幕派から見たもの。女性には『燃えよ剣』、子供たちには『21世紀に生きる君たち』がお薦めとありました。

新しい幕末史観を提起

新刊の広告欄でしか見ていませんが、昨年、原田伊織という作家が『明治維新という過ち』という驚くようなタイトルの本を出しました。「明治維新そのものを丸ごと否定!」(立花隆)と評されたこの新刊は発売され早、20刷を超えたといいます。
続く2作目は『官賊と幕臣たち』。副題は「列強の日本侵略を防いだ徳川テクノクラート」米英による日本植民地化を命懸けで阻止したのは薩長ではなく徳川の直参たちだった!・・といった内容らしい。
著者の原田伊織という人の情報が少ないのですが、ネットをかき集めた限りでは、1946年京都生まれ。司馬遼太郎と同じ大阪外国語大の卒業。思想的にはアンチ・リベラル、つまり保守派作家からの見直しという点が興味深い。性別は分かりません。

進歩的だった河井継之助

『峠』では、長岡藩の家老・河井継之助の行動と思想はきわめて革新的だったことが読み取れました。彼は当時、幕府官学だった朱子学ではなく陽明学をあえて学び、反英国の外国人商人たちと活発に交流し最新兵器を調達、藩主牧野備前守をフランスに亡命させようとまで計画していた。実にスケールの大きなサムライでした。いわゆる幕府側が単純に頭の固い守旧派の集まりだったとはいえないことが良く分かります。

「明治維新」をどう捉えるか。翻っては近現代史をどう学び直すかは今、多くの日本国民に問われていると思います。

 
【木工さんの写真】矢嶋秀一作 フォト 田口大輔

 

文藝春秋2016年2月号[雑誌]
司馬良太郎未発表原稿
文藝春秋
賊軍の昭和史
保阪正康 半藤一利
東洋経済新報社
コメント (2)
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