花粉症には小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、風邪には葛根湯(かっこんとう)と漢方は身近な薬です。漢方は古くは中国からの伝来でしたが、今の漢方は日本独自で発達を遂げたもので世界的にも水準は高い。ちなみに中国では中医学という。
採長補短で漢方育成
江戸後期の蘭医、大槻玄沢(1757-1827)は東西医学のそれぞれの長所を取り入れ合う「採長補短」の考え方をしていた。新しい楽器ヴィオリラが和洋双方の良さを取り入れて不思議な音色を醸し出すように。西洋医学と東洋医学(漢方)を併用して治療にあたるというのは日本医学のお家芸です。一つの医師免許で西洋、漢方の両方を診ることができる日本では、2001年から全国80余の大学医学部で漢方の教育が行われています。
漢方もシルバー人材活用も医療費削減
ところが、2009年の蓮舫議員を「仕分け人」と印象付けたあの事業仕訳けでは、とんちんかんにも漢方が保険適用から排除され大騒ぎになった。漢方で治療中の患者たちを中心にすぐに反対運動が起こり3週間で100万人近い署名を集めた。漢方の保険適用は金額的にも決して高くはない。感冒薬の葛根湯とタミフルを単純に比較しても漢方の葛根湯の価格の方が安い。漢方薬には抗がん剤の副作用を防きまた併用効果もある。長い目で見ると安価な漢方の服用はむしろ医療費の軽減に貢献する。これはまるで同時期、全国シルバー人材センターも仕分け対象になりましたが「シルバー人材センターは高齢者の生きがいの場、健康増進として医療費の削減に大きく寄与している。年間で医療費6万円の差」(大泉町シルバー人材センター小川豊彦理事長談)と、まことによく似た事例です。漢方もシルバー人材活用も医療費の軽減につながっていることは見落とせません。
生薬の自給率高め国際市場に
漢方の資源となる生薬(しょうやく)は8割以上が中国から輸入している。中国の生薬の市場規模は2兆円ともいわれ同国は国策として生薬を戦略物資と位置づけている。中国自身の高齢化もあり生薬の資源は枯渇し価格の高騰も著しい。今、日本の生薬の自給率は10%程度。だがここは日本の知恵のを絞りどころ。例えば日本では葉たばこ農家が、たばこの消費激減で曲がり角に来ています。もし生薬に転作してして成功すれば生薬の自給率がアップし日本の良質な生薬の国際競争力が期待できるというものです。
(参聴=TBSラジオ:麻木久仁子ニッポン政策研究所「資源としての漢方薬」ゲスト:慶大医学部准教授漢方医学センター渡辺賢治副センター長)
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