魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ヒトスジモチノウオ

2022年06月25日 22時27分46秒 | 魚紹介

これも2019年に沖縄県那覇の「泊いゆまち」で購入していたがご紹介できていなかったもの。スズキ目・ベラ亜目・ベラ科・ホホスジモチノウオ属のヒトスジモチノウオ。

ヒトスジモチノウオは近縁種のホホスジモチノウオとよく似ているが、眼の後方の模様が異なっている。ホホスジモチノウオでは眼後方の線が目立ち鰓蓋後部にまで達するが、ヒトスジモチノウオでは眼後方の線が不明瞭かあっても短く鰓蓋後部にまで到達しないとい特徴がある。「頬に数本の黒色線があるからホホスジモチノウオ」と思ってしまいやすいが、この頬にある線はヒトスジモチノウオでも出るので注意が必要である。

尾の付け根に白い横帯が入りこれが目立っている。しかしほかの種でも白い横帯が入っているものもおり、見分けの決定打にはなりにくい。しかしホホスジモチノウオは白色部がないか、尾柄が薄ら白い程度であることで見分けられるかもしれない。学名もこの特徴からきているのだろう。もっともヒトスジモチノウオであっても、小型個体ではこの特徴を欠くようである。標準和名はおそらくはこの尾の模様を指すのだろう。英語名Ringtail maori wrasseも同様に、尾の模様を環っかに見立てての命名だろうか。maoriは頭部の模様をマオリ族の入れ墨に見立てたものだと思うのだが、一般にマオリラスといえばOphthalmolepis lineolataのことであり、これはカンムリベラ亜科で、モチノウオ亜科の本種とは縁遠いので一応注意。

分布域は東インド洋から中央太平洋の広範囲に及び、ハワイ諸島にも生息する(ホホスジモチノウオはハワイにはいない)。日本においては和歌山県以南の太平洋岸に分布し、高知県でも見たことはあるが、数が多く安定して見られるのは奄美諸島以南であろう。沖縄のサンゴ礁ではよく見られるベラであり、小型種であるが市場にでる。また五目釣りで釣れることも多い。そして煮つけにして食べると美味しい魚である。観賞魚として飼育されることは少ないが、よく見るときれいな魚ではある。もっとも小魚を飼育している水槽で飼ったらほかの魚が食われてしまうだろうが。なお、この仲間は夜間は岩やサンゴの影などで休息し、砂には潜らないようである。

本種が含まれるホホスジモチノウオ属は7種ほどが知られており、タコベラなどは本州でも少ないが見られる。一部の種は水深100mほどの場所から漁獲されることもある。なお沖縄やアンボイナに生息するとされたモチノウオCheilinus oxyrhynchus Bleeker, 1862はハナナガモチノウオの異名となっているようだ。Kuiterのベラ図鑑では一応有効種となっていて、写真も掲載されているが、あまりハナナガモチノウオと違うようには思えない。

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コクハンアラ

2022年06月24日 01時23分19秒 | 魚紹介

今日も沖縄県那覇・泊「いゆまち」の魚をご紹介。スズキ目・ハタ科・スジアラ属のコクハンアラ。

コクハンアラはスジアラ属の魚で、大きいものではメーターオーバーになる。この個体は体色がご覧のような色、つまりボディは灰色(生きているときは白っぽくもみえる)、各鰭は黄色、体側の背部には鞍状斑があるというカラフルなもの。しかし大型個体は赤紫色~灰色という色彩になり、青っぽい小さな斑点が散らばるようになる。同じように熱帯海域でメーターサイズになるスジアラ属にはオオアオノメアラが知られているが、コクハンアラの尾鰭は若干湾入するのに対し、オオアオノメアラは尾鰭が湾入せず直線状である。オオアオノメアラの英語名(Fishbaseコモンネーム)Squaretail coralgrouperというのはここから来ているようである。一方コクハンアラは英語名(やはりFishbaseのコモンネーム)ではBlacksaddled coralgrouperと呼ばれ、体側の背部にある鞍状斑が名前の由来となっている。またオオアオノメアラのほうが体サイズにくらべ青い点が大きい。

顔はかなりいかつく、サンゴ礁に生息する小魚をその強い歯で捕食してしまう。前鰓蓋に溝のようなものがあるが、これは傷がついているだけと思われる。

胸鰭。コクハンアラの成魚は胸鰭が黒っぽくなり、スジアラと見分けられるというが、このくらいのサイズではそうなっていない。しかし逆に、この独特の色彩からスジアラとの見分けは全く難しくない。

シマキンチャクフグ(石垣島)

コクハンアラのこの色彩は、シマキンチャクフグというフグの一種に色彩を似せて身を守っているもののようだ。シマキンチャクフグは強い毒をもつことで知られており、コクハンアラも幼魚のうちはシマキンチャクフグに似た色彩で、襲われないように自己防衛しているのだと考えられる。やがて茶褐色になるが、その色彩の変化については個体により変異があり、50cmを超えていてもこのような模様をしているものや、同じくらいで褐色になってしまっている個体もいる。

食用魚で市場にもあがる。大型個体はシガテラ毒をもつことがあるとされているが、とくに販売自粛などは幸いにも行われていない。今回の個体はお刺身で食べたが極めて美味であった。幼魚は高知県柏島などでも目撃例があるというが、基本的に成魚が見られるのは大隅諸島以南だろう。海外ではモザンビークからトゥアモトゥ諸島までのインドー太平洋に広く分布している。ただし紅海など一部の海域には生息していない。日本産スジアラ属は3種からなり、本種、スジアラ、オオアオノメアラが見られるが、九州以北ではほとんどがスジアラである。オオアオノメアラは八重山諸島では多少見るが、コクハンアラやスジアラよりもずっと数は少ない稀種である(海外ではそこそこ見られるようだ)。

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ヒレグロコショウダイ

2022年06月23日 21時41分57秒 | 魚紹介

今回も、前回ご紹介したアイゴと同じハコの中に入っていた魚をご紹介。スズキ目・イサキ科・コショウダイ属のヒレグロコショウダイ。

ヒレグロコショウダイはコショウダイ属の中で、体側に明瞭な縦帯があるグループの一種である。この中にはほかにムスジコショウダイやアヤコショウダイ(成魚では斜帯であるが)などが知られているが、このヒレグロコショウダイはムスジコショウダイやアヤコショウダイほど鮮やかな色彩はしていない。灰色っぽい色彩であり、鮮やかな黄色い鰭が特徴的なほかの2種と比べると地味な色彩の魚である。

特徴の一つは腹部の模様。本種は腹部に縦帯がなく、腹部にも縦帯がはいるムスジコショウダイとの区別はさほど難しくはない。一方、アヤコショウダイも腹部に縦帯が入らないが、背鰭・胸鰭・臀鰭・尾鰭が黄色であるためヒレグロコショウダイと見分けることができる。またアヤコショウダイの幼魚は体に縦帯が入っているが、大きくなるとこの模様は斜帯になるので見分けるのには苦労しない。

ヒレグロコショウダイの特徴の二つ目は腹鰭である。この腹鰭は白っぽくて前方が赤黒っぽい。ムスジコショウダイやアヤコショウダイではこの模様はないか、にじんだ赤色の模様がある。ただし個体差が大きく、個体によってはわかりにくい(とくにアヤコショウダイ)。

小さくクマノミ類に間違えそうなサイズの幼魚。このくらいの大きさでは体側に2本の白色縦線があるのがヒレグロコショウダイ、1本だとアヤコショウダイというように見分けられそうではあるが、慣れないと難しい。写真のヒレグロコショウダイの幼魚はクネクネせわしなく泳いでいたもの。胸鰭に黒い線があるように見えるが、これはヒレグロコショウダイだけでなくアヤコショウダイにもあるので、この特徴での同定はできない。一方ムスジコショウダイは茶褐色の地色で、白というか黄色というかの色彩をした大きな斑点が並ぶのでヒレグロコショウダイやアヤコショウダイと見分けやすい。というか、アヤコショウダイやヒレグロコショウダイよりも、成魚の色彩がまるでちがうアジアコショウダイの幼魚に似ている。

ヒレグロコショウダイの学名はPlectorhinchus lessoniiとされているがP. diagrammusという学名が使用されていたこともあり、ややこしい。アヤコショウダイの学名はPlectorhinchus lineatusである。古い図鑑ではP. goldmanniという学名が使用されていたこともあるがP. lineatusのシノニムとされた。ムスジコショウダイの学名はPlectorhinchus vittatusであるが、従来はP. orientalisという学名が使用されたが、P. vittatusのシノニムとされている。なお、ムスジコショウダイのFishbaseにおけるコモンネームはIndian Ocean oriental sweetlipsという名前になっているが、実際はインド‐太平洋(東アフリカ~ミクロネシア)の広い範囲に生息している。

この仲間は3種とも琉球列島ではよく漁獲され市場に出ていてなかなか美味。私も食したが美味しかった。ヒレグロコショウダイはインドー太平洋域にすむ。東はサモア諸島までで、ハワイ諸島には分布しない。というかイサキ科自体がハワイ諸島には一切分布していないらしい。太平洋の東西で大繁栄しているグループだが、ハワイへの進出はできていないようだ。日本では伊豆半島以南に見られるが、九州以北で見られるのはほとんどが幼魚である。

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ハナアイゴ

2022年06月22日 14時59分28秒 | 魚紹介

二日続けてアイゴ科の魚。今日はスズキ目・アイゴ科・アイゴ属のハナアイゴ。

前回のマジリアイゴと同じアイゴ属とはちょっと信じがたいように思えるが、アイゴ科の魚はアイゴ属だけ。前回ご紹介したマジリアイゴも、さらに吻が伸びたヒフキアイゴも、大きくなるゴマアイゴもみなアイゴ属の魚である。ただしヒフキアイゴなどのLo亜属は将来属に昇格するのかもしれない。

ハナアイゴの特徴のひとつは尾鰭である。尾鰭は大きく二叉し、アイゴやアミアイゴなどと見分けられる。またゴマアイゴやマジリアイゴなどとは、背鰭棘と軟条部の間に欠刻があることや体形、体色などで見分けることができるだろう。生時は体に黄色の斑点が散らばり、腹部に黄色の線状模様が入ることがある。それにより東南アジアに生息するSiganus javusと間違えられることもあり、実際にSiganus javusの日本からの記録はハナアイゴの誤りとされた。しかし、この種は台湾からも出ているので日本から記録があってもおかしくないかもしれない。またハナアイゴの近縁種にセダカハナアイゴというのがいるが、この種はハナアイゴよりも体高が高いこと、背鰭軟条部の先端部が3~4つにわかれていること(ハナアイゴは2つにわかれる)ことなどにより見分けられるが、セダカハナアイゴはまだ見たことがない。

ハナアイゴの背鰭

ハナアイゴの背鰭。背鰭の後方に欠刻があるのが特徴。また、ほかのアイゴ同様背鰭・臀鰭・腹鰭の棘には毒があるのでうかつに触ってはいけない。

ハナアイゴは英語でStreamlined spinefootと英語で呼ばれている。「流線型のアイゴ」という意味だ。たしかに頭部が小さく、サバなどのように水の抵抗を受けにくい形だろう。Silver spinefootは銀色のアイゴの意味。確かに陸にあげてしばらくすると体系はシルバーというか、グレーに変貌することがある。もっともこれは学名のSiganus argenteusからきているのだろう。種小名は「銀色の」とかいう意味である。Forktail rabbitfishは尾の形からきている。

今回も前回のマジリアイゴと同様に、沖縄県の泊いゆまちで購入した個体。ちなみにいゆまちではマジリアイゴと、同一のハコに入っていたものである。しかしハナアイゴは分布域が広く、伊豆半島以南に見られ、九州以北でも成魚に近いサイズが多少は漁獲されている。高知県ではサビキ釣りで釣れた経験もある。アイゴに似ているが釣りあげた瞬間はブルーグレーで美しかった。今回は唐揚げにして食したがかなり美味。

高知県産のハナアイゴ

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マジリアイゴ

2022年06月21日 17時11分27秒 | 魚紹介

最近魚関係サイトのファクトチェックを行いたいと思う。というのも、どうしても最近の魚類関係のサイトには目に余るようなものが多数みられるためである。Youtubeの動画もそうである。あまりにもおかしな動画が多数氾濫している。もし「このサイトや動画のファクトチェックをしてほしい」という方がいたら当ぶろぐへのメールやコメントをお願いしたい。もちろん無料である。また「動画アップする前に信憑性のチェックをお願いしたい」というお問い合わせや、一緒に動画を撮影してほしいというお問い合わせも募集中。

さて、上の写真の魚はスズキ目アイゴ科アイゴ属のマジリアイゴ。もっとも、アイゴ科の魚は世界でアイゴ属しか知られていない。ただLo亜属は属として昇格するかもしれない。

マジリアイゴの色彩は黄色っぽい体で、体側には細い青い線が多数入っており、腹部の青い線は網目状になることがある(体側の青い線には変異が多くみられる)。頭部には眼を通る黒い帯が入り、まるでチョウチョウウオ科の魚のようにも見える。また英語名Masked spinefootの由来となっている。Spinefootはアイゴ類の英語名である。棘が生えた魚という意味なのだろう。一方Blue-lined rabbitfishという英語名もあり、これは体側の青い細い線にちなむ。rabbitfishもアイゴの仲間を指す英語名であり、これは顔のイメージである。一方Foxfaceという呼び名もある。これはLo亜属の呼び名で、顔がキツネのように伸びていることからきているのだろう。話を戻すと、ヒメアイゴにもマジリアイゴ同様に頭部に眼を通る帯があるが、ヒメアイゴでは胸鰭上方にも帯があるので見分けることはできる。またシルエットもヒメアイゴは丸みを帯びるのに対し、マジリアイゴはや細長い。

アイゴ科の特徴は背鰭・臀鰭・腹鰭の鰭条数がすべて同じであることがあげられる。背鰭13棘10軟条、臀鰭7棘9軟条、腹鰭が1棘3軟条1棘である。特に腹鰭の棘のならびはアイゴ科独特のものらしい。そしてよく知られているように、この鰭の棘には毒があるので、うかつに触ってはいけない。

マジリアイゴは観賞魚としてよく知られている。分布域は琉球列島、西太平洋、東インド洋(ココスキーリング)であるが、基本的にはフィリピン産のものが多く観賞魚として流通している。そのため購入するときは落ち着いた状態のものを購入するようにしたい。飼育は難しくないが、海藻を好んで食べ、サンゴをつついて食べるようなものもたまにいるためLPS水槽での飼育は避けたほうが賢明である。また、沖縄では食用魚として市場にも出る。この個体もおそらく追い込み網かなにかで漁獲されたもので、泊「いゆまち」で購入したものである。沖縄ではアイゴの仲間は比較的よく食べられている魚で、とくに「カーエー」ことゴマアイゴは釣りの対象魚としても好まれ市場にもよく出る。

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