魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

アオブダイ

2022年07月20日 10時29分51秒 | 魚紹介

今回は2019年に購入した魚をご紹介。スズキ目・ベラ亜目・ブダイ科のアオブダイ。

アオブダイはアオブダイ属の中では珍しく、分布域が温帯に偏っている。本州~九州までの太平洋岸、山口県沿岸、九州北岸、伊豆諸島、屋久島、トカラ列島に生息しているが、琉球列島ではほとんど見られない。海外での分布も朝鮮半島沿岸、済州島、台湾、香港、中国南部沿岸などで温帯の種といえるだろう。

写真の個体には大きなコブがあるが、コブがあっても雄とは限らない。とされていたが、書籍によってはコブは雄相の特徴、との記述も見られる。また雄は頭部などに緑色の不定形な斑紋が出るので雌と見分けやすい。大きいオウムのような歯をもつため、ブダイ類は英語で「Parrotfish」と呼ばれる。なお標準和名で「オウムブダイ」というのも知られている。私はオウムブダイを釣ったことはないのだが、喜界島ではふつうに見られるブダイだという。

マリンワールド海の中道のアオブダイ

雌や若魚は鰭が青白く縁どられていたり、白い点があることなどが特徴だ。コツさえつかめば決して難しくはないかもしれないが、最初のうちは難しいかも。写真の個体はやせているので当時はナガブダイだと思っていたが、詳しく調べるとアオブダイであるとわかった。

アオブダイの幼魚と思われたが違うかもしれない

幼魚の同定は非常に難しい。夏の終わりから秋にかけて千葉県以南の太平洋岸でブダイ類が見られるが、このアオブダイは体側に白い縦線があることと胸部の黄色の模様で見分けることができる、とされている。しかし見分けは困難だ。分子分類を用いてブダイの幼魚と成魚の一致ができればわかりやすいかもしれないが。写真の個体はアオブダイの幼魚と思い採集したのだが、どうも違うように思われる。同定できるステージまで育つ前にほかの魚につつかれて死んでしまった。この科の幼魚はほかの種との混泳には向いていないところがある。ブダイやヒブダイなども採集したことがあるが、これらもほかの魚との混泳に弱いように思われた。ブダイ類は夜は完全に眠ってしまうので、その際にほかの生き物に襲われてしまう、なんてこともあるのかもしれない。

パックに入っていたアオブダイの若い個体

アオブダイは食用とされることもあるが、長崎などで内臓、特に肝臓を食べたことにより中毒死した例もいくつか報告されている。パリトキシンによるものとされ、長崎県ではアオブダイだけでなくハコフグ科のウミスズメによる中毒例もある。パリトキシンはスナギンチャク類のある群の学名である。アオブダイもウミスズメもこのような生き物を摂取することで毒化するのだろう。ということはほかのブダイ類でも毒化するかもしれない。宇和海ではアオブダイの幼魚はたまに漁獲され、パックに入って売っていたこともある。ちなみに宇和島ではブダイ類は本種、ヒブダイ、ブダイの3種が見られる。ただし全国的には販売が自粛されていることも多く、購入することは難しい。なお琉球列島産のナンヨウブダイやハゲブダイなどはそのような自粛の対象にはなっていないのだが、肝臓が毒化するおそれがあるので肝臓は食べないほうがよいかもしれない。

今回の個体は石田拓治さんにお願いして送っていただいたもの。ありがとうございました。なお、この個体は食べてはいない。

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