どうも、椎名さんです。勤務先から8月の予定表が今になってとどきました。なんか「何をいまさら」な感じがしますが、予定表を見てみたら・・・。ハイ、過労死確定ですかね。
ということで椎名さんの人生もおそらく今月いっぱい。過労死する前に久しぶりの「魚紹介」の記事を。今年の春に小笠原諸島の深海からやってきた魚のご紹介。イットウダイ科・エビスダイ属の深海性種であるカイエビス(たぶん)。
カイエビス(たぶん)という微妙な言い回しの理由は、この個体が本当に「カイエビス」かどうか、確信が持てないため。小笠原諸島からの個体であり、同地にカイエビスが生息しているとは魚類検索第三版にも明確には書かれておらず、どうしても微妙な言い回しを使わざるを得ないのだ。
魚類検索に掲載されているエビスダイ属の4種のうち、小笠原諸島に生息しているのはエビスダイとオキエビスの2種とされている。
カイエビスの側線上の鱗
カイエビスのTRacは2.5。白点列は側線有孔鱗
エビスダイTRacは3.5。白点列は側線有孔鱗
しかしカイエビスとエビスダイでは大きく異なる特徴がある。イットウダイは背鰭棘条部中央下側線横列鱗数(TRac)が3.5であるのに対し、このカイエビスではTRacは2.5である。写真のうち白い点がついているのが側線鱗なので、それより上の鱗を数えればよいのである。
カイエビスによく似た種で、先ほど名前だけが「ちらっ」と出てきたオキエビスについては写真で論じることが難しい。というのも椎名さんはオキエビスの写真を有していないからである。しかし、頭部の形状が大きくことなる。カイエビスの頭部背縁はゆるく突出しているが、オキエビスのそれは直線的である。また体側に見られる白色の縦帯についてはカイエビスのほうが幅が狭くて明瞭、オキエビスは幅が広いが、不明瞭な個体も多いようである(Google検索であきらかにオキエビスといえそうな個体を抽出)。また、この個体は胸鰭軟条数が16である。通常胸鰭軟条数はカイエビスは16、オキエビスは15ということなので、カイエビスでよさそう。ただしカイエビスの胸鰭軟条は15~17で、オキエビスは14~16とのことで、だぶりがあるよう。
長崎県で水揚げされたカイエビス
カイエビスは日本国内では伊豆半島、和歌山県、高知県、長崎県、沖縄舟状海盆、九州-パラオ海嶺に見られ、海外では西太平洋やインドネシア、オーストラリアなどに生息するとされている。ホロタイプはインドネシア バンダ海のカイ諸島で得られたものとされており、「カイエビス」の名前や学名Ostichthys kaiensisというのはここからきているという。
カイエビスの煮つけ。うまし
この属(や同じ亜科のアカマツカサ属やヤセエビス属もだが)は体を覆う、硬い「暴力的」なまでの櫛鱗のためさばくのがなかなか難しい。しかしながらさすがは高級魚エビスダイに近い仲間なだけあって美味な魚であった。ただ今回の小笠原諸島のものは一回冷凍されていたのがちょっと残念である。次回は現地に赴いて新鮮なカイエビスを食べてみたいところだ。今回のカイエビスはTwitterのHN「魚のげぼ」さん、また長崎県産のカイエビスは魚喰民族 石田拓治さんより。みなさんいつもありがとうございます。
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