花の四日市スワマエ商店街

表参道スワマエ商店街会長のひとり愚痴

“張込み”シークエンス ①

2021年07月19日 | レモン色の町

暑い夏が来た。夏といえば、松竹作品、松本清張原作、野村芳太郎監督、脚本 橋本忍、助監督に山田洋次が起用された『張込み』だ。何度観たかもしれない。幾度このブログに書いたかもしれない。西村雄一郎氏が“清張映画にかけた男たち”で紹介している。

松竹のマークが終わると、そこは横浜駅だ。

プラットホームに止まった列車の壁面に掲げられた行先の表示板には「鹿児島行」と書かれている。

そこに場内アナウンサが流れる。「横浜、横浜、横浜でございます。六番線に到着の列車は、二三時六分発、鹿児島行き、急行列車『さつま号』でございます」

大きく写される二三時六分を示す時計。そこに、柚木刑事(大木実)と下岡刑事(宮口清二)の二人が、脱兎のごとく階段を駆け下り、発車する列車にすんでの所で乗り込む。

嘗ては、本当に列車は混んでいた。特に一番安い、庶民の三等車。二人の刑事は席がないので、通路にすわる。昭和三〇年代は、彼らのように、列車の廊下に新聞紙を敷いて座ったものである。

木曽川を渡るあたりから空は明るくなる。「降りますか?」「次の京都で降ります」「下岡さん、ここが空くそうです」「そうか・・・そりゃ有難いな」下岡刑事が席に座ろうとする時、片手に持っていた週刊誌がチラリと写る。昭和三一年創刊の「週刊新潮」なのだ。

東京~神戸間は、撮影の前年に電化されたばかりだった。だから東海道線はディーゼル機関車だが、山陽本線にはまだ蒸気機関車が走っていた。   つづく