人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

公共交通と原発を中心に社会を幅広く考える。連帯を求めて孤立を恐れず、理想に近づくため毎日をより良く生きる。

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●管理人の著作(いずれも共著)
次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する(緑風出版)
地域における鉄道の復権─持続可能な社会への展望(緑風出版)
原発を止める55の方法(宝島社)

●管理人の寄稿
規制緩和が生んだJR事故(国鉄闘争共闘会議パンフレット「国鉄分割民営化20年の検証」掲載)
ローカル鉄道に国・自治体・住民はどう向き合うべきか(月刊『住民と自治』 2022年8月号掲載)
核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

〔週刊 本の発見〕『次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する』

2023-11-03 20:57:35 | 書評・本の紹介
(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」の書評コーナー「週刊 本の発見」に寄稿した内容をそのまま転載したものです。)

国鉄解体から「公共交通新法」まで~示される課題と展望~『次世代へつなぐ地域の鉄道——国交省検討会提言を批判する』(安藤陽・桜井徹・宮田和保 編著、緑風出版、2500円+税、2023年10月)評者:黒鉄好

 コロナ禍で緊急事態宣言が出され、誰も乗っていない東海道新幹線の列車が誰もいないホームを静かに滑り出すニュースは衝撃的だった。この世の終わりさえ感じさせるニュースの陰で、JR各社が長年にわたって温めてきた「静かな野望」が動き出していた。それが明らかになるのは2022年。「儲かる路線で儲からない路線を支えることがコロナ禍によってできなくなった」ことを理由とする全国ローカル線の大整理である。

 この野望を事実上後押ししたのが、国民の足を守るべき国交省だった。2022年、国交省は地域モビリティ刷新に関する検討会を設置。「頑張る地域と鉄道だけに存続への細道を用意する」という立場の「有識者」で固めた検討会は、わずか半年足らずの審議で提言を公表した。国交省が、提言の内容をさらに切り縮め国会に提出した改定「地域公共交通活性化再生法」案が成立したのは今年4月。検討会設置からわずか1年の早業である。

 改定法は、鉄道への支出が許されていなかったまちづくり予算「社会資本整備総合交付金」のわずかな支給と引き替えに、輸送密度の低いローカル線について、地域と鉄道会社との間で存廃を話し合う「特定線区再構築協議会」を国が設置するとの内容である。鉄道が再構築されるのならいいではないか、と思う人がもしいたら、国鉄「再建」法を名乗る法律が実際には国鉄解体への露払い役となった40年前の出来事を思い出してほしい。

 目下、東京都の人口は1300万人を超える。日本の人口の1割以上が東京都に住んでいることになる。国鉄とその網の目のような鉄道路線が維持されていたら、ここまで極端な過密と過疎という事態は果たしてあり得ただろうか。

 北海道でも、今や札幌だけで全道人口の4割に達しようとしている。その一方で農産物を全国に輸送する手段はおろか、札幌市民の市内移動の手段さえ失われる寸前に来ている。新幹線開通後の「並行在来線」における貨物列車の費用を誰が負担するか10年以上議論しても決まらず、路線バスは相次いで減便・廃止となっているからである。北海道と本州を結ぶ貨物列車が全廃されれば、北海道産のタマネギは首都圏で2割値上がりするとの試算もある。ローカル線危機は対岸の火事ではなく全国民的課題なのだ。

 こうした事態にいかに対処すべきか。展望をどう示すのか。いても立ってもいられず、公共交通、そして社会のあるべき姿を『地域における鉄道の復権~持続可能な社会への展望』(緑風出版、2021年)で示した共著陣が再び結集して著したのが本書である。

 今回は、前作と異なり3部構成とした。メインの第2部は、市民が抱きそうな49の質問を共著陣みずから立て、答えるQ&A形式を採り入れるなど読みやすくした。

 モビリティ検討会提言が触れていない点までQ&Aで取り上げるかは共著陣で議論となった。だが、そもそも検討会提言が触れていないからといって、すべての元凶である国鉄分割民営化に言及しないのでは出版する意味がない。取り上げる方向で程なく意見がまとまった。私も再び共著陣に加わり、Q&Aのうち9問を担当している。

 私が担当する「本の発見」はこれで3回連続、公共交通関係となった。2024年問題を契機に今後この分野が大きく動く予感がある。その意味でもぜひ読んでいただきたいと思う。

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