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スカイマークの経営破綻は安全・労働者軽視の帰結だ~公共交通事業者は安全・労働者重視の原点に返れ

2015-01-31 22:13:12 | 鉄道・公共交通/交通政策
<安全問題研究会コメント>
スカイマークの経営破綻は安全・労働者軽視の帰結だ~公共交通事業者は安全・労働者重視の原点に返れ~

1.昨年以来、経営危機が続いていたスカイマークは、2015年1月28日、裁判所に民事再生手続きの開始を申し立て、事実上経営破綻した。航空業界における価格破壊の草分けとなり、メインバンク(主要取引銀行)を持たない無借金経営を誇るなど、異色の存在として知られた公共交通の「風雲児」は、公共性の強い企業としてあってはならない前近代的ワンマン経営の末、無残な最後を迎えた。

2.スカイマークは、IT業界出身の西久保慎一社長によるワンマンかつ奇想天外な経営方針で世間の話題を集める一方、常に論議を呼び続けた。格安運賃の設定により、従来、航空機に無縁だった層に航空サービスへの道を開いたが、一方で、安全と労働者を軽視する姿勢は最後まで一貫していた。

3.とりわけ、日本社会に衝撃を与えたのは、2010年、上空を飛行中に機長らが運航と無関係な客室乗務員を操縦席に立ち入らせた上、前方注視を怠り、全乗務員が後ろを向いて記念撮影をした事実が発覚したことである。風邪のため声の出なくなった客室乗務員の交代要員を会社に要求するパイロットを乗務から外した上に即日解雇する許しがたい暴挙も行った(このとき解雇された機長からはその後、訴訟を起こされ、スカイマークは全面敗訴した)。2006年には、亀裂が発見された機体をそのまま運航し続けるなど、信じがたい安全軽視の経営体制だった。
<サムネイル写真=運行中に前方注視を怠り、後ろを向いて記念撮影する乗務員(国交省提供)>

4.2008年6月、スカイマークはわずか2名の機長が体調不良で欠勤しただけで168便が運休する事態を引き起こした。ぎりぎりの人員で綱渡りの運航を続ける現場への想像力も配慮もなく、スカイマーク労働者から、乗客の命を守る公共交通従事者としての誇りを奪った。最近では、女性客室乗務員の制服をミニスカートに変更するなど、女性労働者を蔑視し、その尊厳を傷つける経営方針を何ら恥じることなく打ち出した。労働者を機械の部品かショーの見せ物のように扱う西久保ワンマン体制にとって破綻は必然の帰結である。

5.とはいえ、このような安全・労働者軽視の運航体制はスカイマーク特有のものではなく、他の航空会社、ひいては鉄道・陸上交通も含めた公共交通全体に共通する課題である。高速バスの相次ぐ事故は社会問題となり、タクシー労働者を巡っては、先日、歩合制による不当な残業手当カットを違法と認める判決が言い渡された。規制緩和と競争政策の下で、今日、すべての公共交通は事故の危機に瀕している。格安な公共交通は命の犠牲なくして成り立たないことを、私たち利用者も知らなければならない。

6.安全問題研究会は、一昨年から昨年にかけ、JR北海道の安全問題を巡って北海道運輸局への要請や相次ぐ事故の原因分析、山本太郎参議院議員を通じた質問主意書の提出、国土交通省との二度にわたる交渉などを行ってきた。そこから見えてきたのは、規制緩和、際限なき競争と首切りがはびこる公共交通の実態がありながら、格安ツアーバス制度の廃止を除いて何ら手を打つことなく放置している安全無視の交通行政の姿だった。国土交通省は、二度の交渉と二度の質問主意書、計4回にわたって提起した当研究会の質問にまともに回答できなかった。国鉄「改革」の成果について「駅ビルがきれいになったこと」「駅員の言葉遣いが良くなったこと」としか答えられないなど、監督官庁としてきわめて無責任な恥ずべき姿をさらけ出した。

7.今年は、御巣鷹への日航ジャンボ機墜落から30年、JR福知山線脱線事故と羽越線事故から10年の節目の年である。来る3月27日には、検察審査会による強制起訴を受けた井手正敬氏らJR西日本歴代3社長に対する控訴審判決が大阪高裁で言い渡されるなど、公共交通の安全問題が再び大きくクローズアップされる年になる。JR福知山線事故遺族が提起した組織罰法制の整備に対しては、福島原発事故被害者や、韓国・セウォル号事故遺族の一部も強い関心を抱いており、国際連帯も重要である。

8.一方、安倍政権の下で、成長戦略に位置づけられたリニア新幹線の建設強行や、2015年度政府予算案で整備新幹線に4500億円もの関連費が措置されるなど、再び昭和の時代に戻ったかのような公共事業ばらまき体制が強まっている。年金・介護報酬を引き下げてまで時代錯誤の公共事業に狂奔し、国民生活を破壊する安倍政権と対決し、真に国民が求める分野へ予算を振り向けさせるための闘いを強化しなければならない。

9.当研究会は、質問主意書・要請書の連続提出、JR元社長の裁判傍聴、御巣鷹への慰霊登山など例年にも増して活発な活動を通じ、世論喚起に努めていく。スカイマーク問題を契機に、再び公共交通の安全向上を目指して闘う決意である。

2015年1月31日
安全問題研究会

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