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JR北海道の安全問題に関し、北海道運輸局に要請行動を実施/安全問題研究会

2013-06-10 23:57:32 | 鉄道・公共交通/安全問題
6月10日、当研究会は、JR北海道の安全問題に関し、北海道運輸局鉄道部に要請書の提出を行いました。JR北海道では、最近再び車両からの発火等のトラブルが続いています。

また、2011年5月に起きた石勝線での列車脱線火災事故を巡り、去る5月31日、運輸安全委員会による事故調査報告書が公表されました。

事前アポを取っておらず、当日になってから運輸局に連絡したため、今回はさすがに要請書の受け取り拒否があるかもしれないと思っていましたが、要請書を受け取るかどうか「部内で調整中」とする運輸局側に対し、建物の入口まで行き、「せっかく来たのにこのまま帰れない。結論が出ないなら要請書を担当者が預かり、受け取ることが決まったら正式に受理する形でもよい」と電話口で10分ほど粘ったところ、受け取るとの回答がありました。

当研究会の国土交通省要請では、受け取り拒否に遭ったことはこれまで1度もありません。過去の国土交通省鉄道局要請でも、必ず受け取ってもらっています。

以下、要請書の内容をご紹介します。(今回提出した要請書を含め、当研究会が過去に提出した要請書は、安全問題研究会サイトに掲載しています。)

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北海道運輸局鉄道部長 様

              安全問題研究会

 JR北海道の安全問題に関する要請書

 当会は、各鉄道の安全や地域公共交通の存続及び利便性向上のための活動を行う鉄道ファンの任意団体です。これまで、国内各地の鉄道を初めとする公共交通に乗車して点検を行う活動、鉄道事故の原因調査や学習会などを通じて安全問題や地方ローカル線問題の検討を行ってきました。本年4月から、活動拠点を北海道に移しています。

 現在、北海道の公共交通を巡る最大の課題はJR北海道の安全問題です。とりわけ、2011年5月、石勝線で起きた特急列車の火災事故に関しては、5月31日、運輸安全委員会の事故調査報告書が出されたところであり、再び社会的関心も高まることが予想されます。

 これを機会に、当会は、貴局に対し、以下の通り要請することとしましたので、本要請の趣旨をご理解の上、ぜひ実現していただくとともに、国土交通省鉄道局に対しても上申いただくようお願いします。

 なお、本要請書に対して、2013年6月30日までに文書による回答を行われるよう要求いたします。



1.鉄道部門における要員不足・教育体制の改善について
 最近、重大事故・インシデントが連続して発生しているJR北海道について、安全対策の重点的点検を行うとともに、JR北海道に必要な措置をとらせること。

【説明】
 JR北海道では、2009年1月に江差駅で下請け業者の信号配線ミスにより、赤が表示されるべきところに黄が表示されたことにより、後続列車が先行列車に追突寸前になるトラブルがあった。2009年3月には特急列車からのブレーキ部品脱落と江差線でのレール破断が起きている。2009年12月には富良野駅で快速列車と除雪車が衝突、2011年にはついに石勝線トンネル内での列車脱線火災事故が発生した。今年に入ってからも、列車からの発火等の事象が相次いでおり、気動車のみならず電車にもトラブルが及んでいる現状である。

 これらの事故はいずれも、通常のようなフェイルセーフ(事故の際、最も安全な措置がとられること)の作動による事故ではなく、フェイルセーフ欠落が招いた事故であるという点できわめて重大かつ深刻なものであり、福知山線脱線事故直前のJR西日本と酷似している。

 このような重大な事故・トラブル続発の背景として、JR北海道における人員削減及び強引な列車増発を指摘する必要がある。JR北海道は、会社発足時点と比較して、社員数を半分(民営化時14000人を現在、7100人)に削減したにもかかわらず、特急列車の運転本数は2倍(民営化時78本から現在、140本)に増やした上、スピードアップ(札幌~釧路間で45分短縮)も行っている。民営化前後の極端な採用抑制と人員削減の結果、会社の中核を担うべき40歳代の社員が全体の1割しかいないという、歪な年齢構成も明らかになっている。こうした採用抑制と人員削減、職員の年齢構成の著しい偏りは、政府が国策として強力に推進した国鉄分割民営化の結果でもある。

 JR北海道に対し、鉄道部門における早急な増員、教育体制の充実を含む安全対策について、監督官庁として実効ある対策を実施させるとともに、職員の大量削減につながった国鉄分割民営化について検証を行うよう求める。

2.会計検査院から指摘を受けた車両検査体制の改善について
  会計検査院から指摘を受けたJR北海道の車両検査体制の不備について、同社に必要な対策をとらせること。

【説明】
 2012年11月2日に会計検査院が内閣に送付した平成23年度決算検査報告において、JR北海道の車両検査・修繕に不備が指摘され、「是正改善の処置」を行うよう意見表示が行われた。

 具体的には、(1)自動列車停止装置(ATS)車上子の作用範囲を確認する応動範囲試験について、整備標準では交番検査の都度、装置が動作する距離を測定することとされているのに、実際には、3回に1回しか測定しておらず、残りの2回は目視による動作確認を実施しただけであった、(2)整備標準に基づく交番検査の検査項目のうち、測定を行うこととされている項目(測定項目)について、記録状況を5運転所等で共通して配置されている気動車1車種についての測定項目を確認したところ、測定を行うこととされている27項目のうち6項目において、運転所等により検査記録に測定結果が記録されていたり、記録されていなかったりしていて、検査記録が運転所等により異なるものとなっていた、(3)電車の交番検査を実施している2運転所等の検査記録を比較したところ、1運転所等では、測定項目以外の装置の作用及び機能を検査する項目についても記録しているのに、他の1運転所等では、測定項目以外の項目は自動列車停止装置に関するものを除き記録しておらず、検査記録が運転所等により異なるものとなっていた――等である。

 こうした事態は、JR北海道が自社の制定した検査マニュアルさえ遵守せず、日常的、全社的に「手抜き検査・修繕」がまかり通っていたことを示している。また、外部から指摘を受けるまで社内で自浄作用も働かなかったことを意味しており、同社のコンプライアンス意識を根本から問い直さなければならない深刻な事態である。

 JR北海道は、今後、是正改善の処置を執ったうえで、会計検査院に報告を行う義務が生じるが、監督官庁としても鉄道事業者が日常的に行う車両の検査修繕に対し、不断に検証・指導を行うことは当然である。貴局として今後、どのような対策を考えているのか明らかにされたい。

3.石勝線での列車脱線火災事故に伴う安全基準の見直しについて
  JR北海道・石勝線での列車脱線火災事故を踏まえ、特に車両火災に関する安全基準を強化すること。

【説明】
 当会が、2008年に情報公開制度に基づいて国土交通省鉄道局から公開を受けた「鉄道に関する技術上の基準を定める省令の解釈基準」(平成14年3月8日付け国鉄技第157号)を、JR北海道・石勝線での列車脱線火災事故を踏まえて再確認したところ、新幹線と地下鉄以外の車両では座席の表地に難燃性の材料の使用を義務づけているものの、詰め物にはその義務が課せられていなかった。

 新幹線や地下鉄以外の路線でも最近は長大トンネルが増える傾向にあり、新幹線や地下鉄と同様の安全基準が必要であると考える。全ての鉄道車両で座席の表地も詰め物も難燃性の材料使用を義務づける方向で上記解釈基準の改正を行うよう求める。

4.気動車の検査周期に関する規制緩和について
 国土交通省が2001年に実施した気動車の検査周期の緩和を見直し、元の基準に戻すこと。

【説明】
 国土交通省では、2001年9月、気動車の検査周期について大幅に規制を緩和し、従来「3年(新車は使用開始から4年)または走行距離25万キロメートルを超えない期間」としていたものを「4年または走行距離50万キロメートルを超えない期間」とした。

 一方、この間の新聞報道によれば、今年4月に発火トラブルを起こした特急「北斗」用車両(キハ183系)は前回の検査からの走行距離は21万キロメートルであったほか、昨年9月にも同様に直前の検査からの走行距離が21万キロメートルでトラブルを起こした例がある。

 長距離列車が多く運行1回あたり走行距離が長いこと、力行運転の時間が多いこと、寒冷地であることなど北海道特有の事情があるにせよ、このようなトラブルの事例から、2001年に行われた検査周期の緩和は全く不適切であったものと当会は考える。この規制緩和を見直し、少なくとも緩和前の基準に戻すよう求める。

(以  上)

<参考資料>

会計検査院「平成23年度決算検査報告」の概要
●鉄道車両の定期検査及び検査修繕について(北海道旅客鉄道株式会社代表取締役社長宛て)

「平成23年度決算検査報告」の本文
●北海道旅客鉄道株式会社―意見を表示し又は処置を要求した事項
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要請してみて驚いたのは、運輸局鉄道部担当者が、会計検査院によるJR北海道への指摘について、知らない様子だったことです。当研究会から指摘内容を伝えるとともに、会計検査院ホームページに掲載されているので確認するよう依頼し、要請を終えました。

余談ですが、要請を終えて帰る途中、立ち寄った札幌駅の大丸7階催事場で、「男の趣味市」というイベントが行われており、よく見ると鉄道関係グッズの展示即売会でした。

一部の鉄道ファンが見ると泣いて喜びそうな鉄道部品など数多く展示されていましたが、転勤族の私は、引っ越し荷物が増えると大変なので、最近はよほどのもの(ここで買わなければ一生入手できない、というレベルのもの)でない限り、買っていません。

今回もグッズを眺めるだけ眺め、買わずに通り過ぎようとしましたが、安全問題研究会にとって願ってもない貴重な文献があるのを見つけ、気付いたら購入していました。

入手したのは、「運転取扱基準規程逐条解説」という図書で、旧国鉄が職員(運転士)向けに編集した運転マニュアルの解説書。条文ごとに、その意味や作業の実施手順を解説したものです。

発行は1965年で、それまで国鉄で「運転取扱心得」と呼ばれていた規則が、内容を大幅に改正され、題名も「運転取扱基準規程」に改められた際に、その内容を職員に周知するため、国鉄が編集したものです。日本鉄道図書(株)から出版されており、国鉄関係者でなくても購入できるものですが、これだけ古いものは現在では珍しく、大変貴重なものだと思います。

2005年に起きた羽越線事故の際、問題となった風速規制など、これまで断片的にしかわからなかった国鉄の安全規制の内容が詳述されており、今後の調査などに大いに生かすことができます。

「運転取扱基準規程」の序文に、このような一節があるので、今回の運輸局要請行動の報告の締めくくりとしてご紹介します。安全意識の低下したJR関係者の皆さんには、ぜひとも噛みしめてもらいたい内容です。

『この規則は現代の鉄道の発達と社会思想の要請によって生まれたもので、人命の尊重が何ものよりも優先するように、運転保安を確立したことが、特徴である。(新幹線開通により)東京―大阪間4時間を標ぼうしても、それは迅速の充足であって安全、正確の充足とはならない。迅速の基盤として安全、正確がきずかれなければならないのである』

『安全の欲求は人間の本能である。いついかなる時代にあっても、いついかなる場所においても、安全は絶対的なものである。列車が高速になったからといって安全が割引されるものではなく、むしろ安全の強化が図られなければならないのはいうまでもない』

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