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会津乗合自動車、経営破たん

2010-12-06 23:22:32 | 鉄道・公共交通/交通政策
会津乗合の再建支援 再生機構、破綻回避へ決定(福島民報)

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 福島県会津地方で路線バス事業を展開する会津乗合自動車(本社・会津若松市、木村正晴社長)などグループ3社は企業再生支援機構に再生支援を申請し、2日に支援が決定した。高速バス事業の競争激化や景気低迷による利用者減などに伴い、資金繰りが悪化していた。機構は地元ファンドなどとともに地域一体型で支援し、3年間での再生を目指す。路線バスやタクシーなどの営業は継続される。

 支援対象は会津乗合自動車、会津バス観光A・T・S、会津バス・オートサービスの3社で、このほか関連会社のあいづスタッフと磐梯観光船の計5社を一体再生する。

 金融機関の債権のみが回収停止となり、資材納入などの一般債権者に影響はない。バス回数券やタクシーチケットなどは従来通り使える。現経営者は退き、機構とメーンバンクの東邦銀行が取締役を派遣する。新社長は外部から招く。

 木村社長ら経営陣が大株主となっている現在の普通株式は100%減資となる。運転資金調達のため、新たに優先株式と普通株式を計1億円を発行し、機構が購入する。

 さらに、社債を1億5千万円発行し、地元金融機関など出資の「うつくしま未来ファンド」が引き受ける。東邦銀行が2億円の融資枠を設け、県信用保証協会も支援する。

 金融機関からの借入金約13億9千万円のうち返済可能とみられる約4億円は残す。残り10億円近くは別会社に移し、遊休資産の売却などで返済するが、5億1千万円程度は返済が困難とみられる。

 会津乗合自動車の経営をめぐっては、路線バスの利用者が減少し、“ドル箱”だった高速バス事業も新規参入業者との競争が激化。路線バス事業の赤字を埋めることが困難になった。平成17年には44路線を廃止しコスト削減をしたが、22年3月期は約3億円の補助金を加えても約2億円の営業赤字を計上した。6月には金融機関に対し元本返済の猶予を要請する事態となっていた。

 会津乗合自動車は1日、東邦銀行とともに機構に再生支援を申請した。路線バス事業などが地域住民の生活維持に欠かせず、会津の主要産業である観光業の一翼を担っていることなどから、機構は支援が妥当と判断した。地方の公共交通機関では初。

 今後は事業再生計画に基づき再建を進める。短期的には不採算路線の統廃合、市町村などが補助する路線の見直しを進めるとともに、人員を削減する。会津全体で供給過剰な状況にあるタクシー事業についても見直す。

 会津若松市の旧会津タクシー本社で記者会見した木村正晴社長は「厳しい財務状況で、このままいけば倒産してしまうことも考えられ、銀行と協議してきた。お客さまや従業員のことなどを考え、この方法でいくしかないと判断した」と語った。機構の河本茂行常務は「会津乗合自動車は地域に根差した企業で、機構の再生支援の考え方とマッチした」と述べた。
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福島県内では、すでに福島交通も経営破たんしており、県内の公共交通は死屍累々の状況だ。ただ、福島交通のように追い込まれての会社更生法適用ではなく、傷が浅いうちに再生機構の支援を仰ぎ、再建を果たそうということのようだ。

地方のバス会社が苦況に追い込まれている背景としては、大きく分けて高速バス事業の自由化と高速道路無料化の2つがある。とりわけ影響が大きいのが前者だ。従来、会津乗合や福島交通のようなバス会社は、ローカル輸送での赤字を、稼ぎ頭の高速バス事業の黒字で補填するという形でなんとか生き長らえてきた。それが、高速バスが儲かるとわかって高速バス専業で参入してきた後発組に市場を食い荒らされ、内部補填ができなくなった結果、経営破たんが多発しているのである。

こうした競争政策がいびつなものであり、間違っていることは言うまでもない。公共交通は、退出の自由を認めても問題のない一般市場とは根本的に異なり、公共性の見地から赤字でも存続が強制されなければならない性格のものである。そうした特性の中、経営努力で高速バス事業を儲かる産業に育て上げ、ローカル輸送の赤字をようやく補填できるようになった頃に、後からおいしいところだけを「つまみ食い」する後発組の参入など容認してはならないのだ。そもそもスタートラインが違う者同士の競争は、公正な競争とは呼ばないのである。

国土交通省は、昨年から今年にかけて、自由化によって増えすぎたタクシー事業を適正化するため、再び規制(台数調整)へと梶を切った。高速バス事業の自由化政策も、そろそろ見直すときである。企業努力ももちろん大切だが、公共交通の維持には政策的配慮が必要なことを、会津乗合の事例は改めて教えてくれている。

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