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東海道新幹線トラブルの影に「架線老朽化」

2010-01-30 22:37:37 | 鉄道・公共交通/安全問題
<東海道新幹線>架線切れ3時間20分不通…影響15万人(毎日新聞)

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 29日午後1時50分ごろ、横浜市神奈川区羽沢町の東海道新幹線下り線の架線が切れ、品川-小田原駅間で送電できなくなり、運行がストップした。3時間20分後に運転を再開したが、両駅間で5本が立ち往生し約3100人が閉じ込められ、新大阪-東京間など上下線の広い範囲で不通となった。56本が運休し、190本が最大4時間20分遅れるなど終電までダイヤが乱れ、約15万人に影響が出た。JR東海は架線が切れた原因を調べている。

 JR東海によると、新幹線には「トロリー線」と呼ばれる架線からパンタグラフを通じ電力が供給されている。切断したのは、トロリー線を支える役割を持つ銅製の「補助吊架(ちょうか)線」(直径約1.6センチ)。

 構造上、パンタグラフと接触しないが、停電直前に現場を通過した東京発名古屋行き「こだま659号」の12両目のパンタグラフが大破しており、切れた架線にパンタグラフが接触したか、何らかの原因でパンタグラフが架線を切断した可能性もある。切れて垂れ下がった架線が地面に接触して火花が散り、線路脇の斜面で火災が発生、雑草約150平方メートルを焼いた。鎮火後にJR東海が架線を復旧させた。

 東海道新幹線では、04年6月に台風6号の強風で飛ばされた屋根が架線を切断して東京-新大阪間が7時間ストップした。

 国土交通省関東運輸局は29日、JR東海に対し、原因究明と再発防止策を講じるよう求める警告文書を出した。【斎藤正利、杉本修作】
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新幹線事故 切れた吊架線、85年以降交換せず 老朽化か(毎日新聞)

 東海道新幹線の架線が切れて3時間以上運転がストップした事故で、切断された補助吊架(ちょうか)線は85年の張り替え以降、交換されていないことが分かった。JR東海によると、点検で異常があった個所を部分的に交換することはあるが、定期的な張り替えはしていないという。同社は、切断面の状況からショートして切れた可能性は低く、何かがぶつかったか、腐食などによる老朽化で切れたとみて詳しく調べている。

 補助吊架線は数本の硬銅製の銅線をよりあわせた構造で直径約16ミリ。パンタグラフが接するトロリー線をつり、たわみをなくして高速走行を可能にする。

 JR東海によると、現場付近では85年、高速化に対応するため高性能な補助吊架線に張り替えた。耐用年数などの決まりはなく、年1回の目視点検をしているが、前回09年11月の点検では問題なかった。異常を調べる試験列車「ドクターイエロー」も10日に1回走らせており、27日の走行では異常は見つからなかったという。

 また、補助吊架線ではこれまで、台風で吹き飛ばされた看板に切断されたケースはあった。だが、今回の現場付近では飛来物などは見つかっていない。

 一方、送電停止直前に通過した「こだま659号」12号車のパンタグラフについて、電力を取り込む金属部品「集電舟」がパンタグラフを覆うカバーの中で、集電舟を支える部品(長さ約1メートル)が現場から約50メートル大阪よりの線路わきで見つかった。パンタグラフで破損したのはこの2部品だった。パンタグラフは2日に1回点検しており、27日の点検では異常はなかった。

 事故の影響で、乗り継ぎ列車のなくなった乗客計約125人が東京、名古屋、新大阪の3駅で列車内で宿泊するなどした。国土交通省関東運輸局は29日、JR東海に原因究明を指示し、警告文を出した。【石原聖】
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29日夕方、大動脈の東海道新幹線が停電によって長時間ストップした問題で、破損した架線が1985年以来、25年間も取り替えられていなかったという事実が判明した。これは、多少なりとも鉄道の運転実態を知っている鉄道ファンから見て、信じがたいというほかない。

補助吊架線というのは、ここの「5.コンパウンドカテナリ」の写真を参照していただきたいが、通常の架線が吊架線とトロリー線で構成されているのに対し、補助吊架線を間に入れた3層構造となっている架線で、トロリー線のすぐ上に位置している。「高速運転に向いた方式」とされているが、それは3層構造のほうがパンタグラフに与える抵抗力が少なくなるからだろう。

ところで、この補助吊架線はトロリー線と異なり、直接パンタグラフからの摩擦を受けるわけではない。しかし、補助吊架線もまた風雨の影響を受け劣化していく。その上、交流25000Vで運転されている新幹線では、電圧が高いため放電による影響も大きいと考えられる。そのような影響を受ける補助吊架線を四半世紀近くも取り替えないというのはいかがなものだろうか。目視による点検をもっと増やす必要があるように思われる。

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